期待して大丈夫ですよ
「 へえ、…でも、こう言って何だけど”狂乱”って… 」
省吾は、隣の翔子にしか聞こえないように気を付けながら話を続ける。
顔が近くなるので、翔子は恥ずかし気に顔を上に向けてフッと息を吐いた。
「 手に負えない不良だったんだろ? どうしてあんな感じに? 」
虐めや劣等感などに苛まれるのを軽減する場合は、本人に寄り添うというのもまだ分かる。
頭の出来云々はみんな同じ程度なら和らぐっていうのも分かるが、
一度タガが外れて道を踏み外している輩はどうなのかな…
いつの間にか妹の事より”三谷澤実業高校”そのものに省吾の関心が移った。
「 はは、あの子の場合は単純に退学したくないだけってとこです。
ヘマして退学したら剛ちゃんと会えなくなっちゃいますからね 」
省吾はそう言われてもう一度珠美たちをよく見る。
珠美が剛一郎と話すときは、頬も赤いし口角も上がって楽しそうだが、
妹と楽しそうに剛一郎が話すと、面白くない顔でキョロキョロと辺りを見回している。
で、妹のみけが青い顔をして必死に剛一郎の話を切り上げようとしているのが分かる。
「 なるほどね… 」
( 妹があれだけ気を使ってるならそうだろう…多分圧が凄いんだろうなぁ。
しかし剛一郎君、”みけ”は君みたいなナヨナヨした二枚目は興味ないと思うんだけど。
おっと、何見つめてるんだよ人に妹の顔を!はは、お前、ちょっと馴れ馴れしいぞ! )
「 まあ、それだけじゃないですけどね 」
「 お、ああ…御免 」
慌てて翔子を振り返る省吾に、翔子はニヤニヤした。
「 妹さんってのは気になるんですか?お兄さんとしては 」
「 ま、まあ普通じゃないの?ってかうちではあいつが家の事全部してくれてるから
他の所よりはその…仲がいいから気にはなるよ 」
少し詰まったが、本心がポロっと出た。
「 へえ、兄妹ってなんか憧れるなあ…でも、”みけ”が美人で可愛いのもあるんのかな? 」
「 それは漫画かなんかの読み過ぎだよ。妹は妹…別に不細工でも気にはなるさ 」
「 へえ、んじゃあ妹が私だったとしても? 」
何気に自己アピールを挟んでくるが、省吾は特に考えも無く返事をする。
「 当たり前だろ?血が繋がってれば普通に心配するさ。
まあ”みけ”の場合は彼氏ができて家を留守になりがちになると生活が辛くなるのはあるけどね 」
そう言えば炊事洗濯に掃除に、
休みはバイトで自分の小遣い以外は生活費にまわしてくれている出来た妹なんていないだろうけど。
「 あ、私”みけ”と同じ家政科だから…そう言うのは期待して大丈夫ですよ 」
「 は? 」
流石にアピールが過ぎたと感じて翔子は話を強引に戻す。
「 でも、好きとか嫌い以前にうちの学校が腐ってちゃあいけませんけどね。
中村さん以外にも手に負えない元不良なんてうちの学校には掃いて捨てるほどいますもの 」
強引に話を戻されて、省吾は苦笑いしたが、妹の話を続けるのは何故か危険な感じがしたので
内心はほっとした。
「 頭悪いんでなんで皆まともになっていくのかってのは、
上手く説明出来るか分かんないですけど、そこら辺は察してくださいね 」
いや、そこまでちゃんと話せたら頭が悪いとか言えないんだけど…
と省吾は思った。
「 まずですね…妹さん(いつの間にか、ちゃんと妹さんと言っている)と同じで
徒歩通学以外は全員自宅までの送り迎えですよね。」
「 ああ、そうだね。先生が強引にひきづっていくの見たって妹が言うぐらいだから
出席率は高いそうだね…でも、中学での問題児相手に通用するのかね 」
「 ええ、通用しますよ。だって先生たちの方が絶対的に強いですから殴ってでも連行します 」
「 強い? 」
「 どうやって集めたかは知りませんけど、元警察官、自衛官、格闘技選手、果ては元暴力団員とか
凄く強い人達ですから 」
おいおい…




