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2本の尾  作者: ジャニス・ミカ・ビートフェルト
第一部 ”みけ”
33/100

中村珠美

  中村 珠美はウキウキしていた。


 隣にカワウソみたいな顔をして恋敵だけど注意不要の馬鹿と、

 彼氏がいるだろうけど美人なんで要注意の邪魔者がいるけど、

 憧れている男の子の家に上がっているのだから当然だ。


 しかも初恋であればそれも無理からぬ事である。




 珠美は、中学時代は殆ど学校に行ってなかった。

 勉強は分からないし、差別も激しいんで学生生活なんて糞だと思っていた。

 金も稼がんと酒飲んでゴロゴロ寝転がってる親父に、

 そんな親父を水商売でボロボロになってでも世話をしている母親を見ていたので

 自分を顧みない家族など糞だと思っていた。

 当然、

 居場所など無く、仕方なく近所の祖母の家で寝泊まりしていた。


 学校にも行かずブラブラ田舎の町中で時間を潰す毎日…

 下手をしたら良くない大人たちにいいようにされる危険もあったけど、

 珠美には不幸な運命とバランスを取るように神様が一つの才能を与えた。


 先天的な喧嘩の強さである。


 鍛えたわけでも、格闘技を習ったわけでも無くただ単純に喧嘩が強く、

 女だろうが男だろうが、やくざ者だろうが全て叩き伏せ

 あまりの強さに地元の暴力団からスカウトに来るほどだった。


 そこまでになると子分は勝手についてくるし、

 面倒を見る妹分も出来てそれなりに小さな社会を作ってよろしくやっていたが

 高校の進学は完全に諦めていた。


 実家は貧乏だし家族も自分から捨てていたし、祖母は生活保護。

 その上、通知表はオール1じゃあ諦めるしかないと思っていた。


 そんな時、この町の旅館の女将が祖母を訪ねてきた。

 女将は古くからの祖母の知り合いということだった。

 どういう経緯かは忘れたけど、その時に女将から高校進学の事を振られた。



「 俺っちは馬鹿だし、勉強嫌いだし興味ねえなぁ…

  それに、家は貧乏だし俺っちが働いてばあちゃん楽にしないといけないし無理だね 」


 その時に言った言葉だけは珠美はよく覚えている。




  

「 まさか…こんな風になるって思わなかったなぁ。 」


 珠美は机で難しい顔をして型紙を書いているカワウソみたいな女と、

 中学時代に出会っていたら、まず間違いなく喧嘩したくなるような強い女と

 仲良く同じ机で話しているし、狂乱って異名があって少しは距離があるけど、

 家が貧乏とか頭が悪いとかは気にしなくてもいい高校で穏やかな学生生活を送っているのが

 夢のように感じている。





「 お金のことは心配しないで、高校にはいきなさい。

  貴方たちの生活の方も援助しますし、なんなら制服も鞄もうちで用意しますから 」


 初めてあった人に、年間で100万近い金がかかる高校へって言われて驚いた。

 


 中学では何もしてくれなくて、入試の手続きもしてくれなかったけど

 手続きから何でも女将さんが用意してくれて、

 入試は名前書いて適当に記号入れただけだったけど合格した。


 多分、名前書いただけで良かったかもしれない。


 初登校の日


 家の前までバスが来たけど、あたいはあまり乗り気じゃなかった。

 学校なんて行ってないと本当に異世界に行くほど怖い感じがしてた。


 でも、カマキリ(バスに乗り込んでた先生)が玄関先まで来て声をかけてくれて

 渋々ドアを開けたら

 剛一郎君がさわやかな笑顔で立っていて、

「 私も同じ家政科です。仲良くしてね 」と白くて繊細な手を差し出してきた。

 一目惚れだった。

 



「 ごめ~ん、待った? 」


 酔っぱらった女の人を見に行ってた剛一郎君が襖を開けて頭を掻いて入ってきた。 


「 全然、それよりどうだったの小山内さんは 」


 何度か旅館には女将さんに誘われて、

 おばあちゃんと一緒に遊びに行ってるから小山内さんの顔を知っていた。


 それほど親しいわけでもないけど心配そうな顔をしてみる。


「 大丈夫ですよ…優しいんですね中村さんは 」


 その声を聴いて、ヨシ!って思った。






 

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