いやだわ、この小母さん…照れてるの?
白い肌に栗色の髪、目元涼しく茶色い瞳、鼻筋が通って小鼻が小さく、苺の様な赤い唇…
物凄く若い…”三谷澤”の制服着てるから高校生かなぁ…一年生ぐらい?
しかし凄く色素が薄くて上品そうで線が細い…男って感じがしない。
少なくともうちが高校生まで暮らしていた故郷の島じゃあ、
男なんてのは、色素が息苦しいほど強くて
体は化け物並みで、年中ギラギラした目で女を物色するような頭は空っぽの獣だったからなあ。
初めて見るタイプだと思った。
「 初めまして、熊田 剛一郎です。
姉から様子を見てくるように言われまして…もう起きても大丈夫なんですか? 」
ドカーンガンガン、ですかですかぁぁ…
「 ううう 」
男の子の声が頭の中で半鐘のように響いて割れそうに痛い。
流石、私の肝臓…分解速度が半端ない。
もう酔いが醒め始めてるみたい…くえええ、喉が喉がぁ乾いて死にそう。
「 あ、頭が痛いんですか? お水とかそうだ…コーヒーとか持ってきましょうか? 」
心配そうに何気にあたいの肩を優しく触って尋ねて来た。
変いやらしさは無く、その触り方だけでこの子が優しいっていうのが分かる。
でも、今はそれどころじゃないわ。
「 ふぇええ…お… 」
喉がしわがれて声が出ないのでしきりにコップで水を飲む仕草をする。
そういや、体が異様に寒い
「 ご…も…もう 」
必死に身振りで寒そうにしながらそう言うと、
「 ああ、毛布ですね。ちょっと待ってください… 」
剛一郎君は直ぐに押し入れのふすまを開けて暖かそうな毛布を取り出してくれた。
「 でわ失礼しますよ… 」
あたいの布団に毛布を優しく被せてくれた…滑る様に毛布を下からかけてくれたので
剛一郎君の顔があたいの鼻先まで近づいた。
やだ、凄くいい匂いがする。
汗臭さとかじゃなくて若い子特有の瑞々しい香り…気が少し遠くなる気がした。
結婚もしてたんで経験はあるあたいだったけど、
優しそうな顔が、大丈夫ですか?って一瞬止まって見下ろしたら
急に心臓が…射貫かれたように痛くなった。
「 え、急に顔が…赤くな… 」
小さな声がしたかと思うと剛一郎君が慌ててあたいから離れた。
「 ご…ごめんなさい。直ぐにお水持ってきますから 」
剛一郎君の顔が真っ赤になるのが見えた。
そして、急に踵を返すと部屋の襖を開けて急いで出て行った…
え、赤いってうちが?
あたいは、ハッとして顔を触ると…頬が熱かった。
いやだわ、この小母さん…照れてるの?
三十路に足を突っ込みそうなあたいが、高校生のあの子にぃ?
あたいはそんなはずは無いって、かけてもらった毛布をかぶった。
心臓の激しい音と鼓動が、体中を駆け巡っているのが分かる…
いや、きっと…あいつが出て行って数か月…
きっと、男日照りで欲求不満なんだろうと思った。
私は台所でお姉ちゃんに水を貰った。
「 大丈夫だった? まあ、水が欲しいって言えるぐらいだから少しは回復した様ね 」
「 ほんとは私が面倒見たほうがいいんだけど… 」
お姉ちゃんの隣で”みけ”ちゃんがすまなさそうに頭を下げた。
いやいや、
夕食の手伝いをしてくれてるのにそれは無いでしょ…
それに、今はあそこで愛さんとかいう人の世話をしていた方が逆に助かる。
「 いいよいいよ…あそこにいたら私が持たないもん 」
居間で浴衣の型紙を切り出している中村さん達がしつこくいろいろ聞いて来るのが怖い…
そりゃあ、同じ学科で私も”みけ”ちゃんと同じで課題は終わってるから、
しょうがないかもしれないけど、寄りかかったり甘い声出されるのは嫌だなぁ…
私は”みけ”ちゃんが好きだからさ。
「 それより…夕飯ってどんなの作るの? 」
私は”みけ”ちゃんの手元を見ようとする。
「 いいからいいから、それよりお水上げてきなさい 」
お姉ちゃんがニヤニヤ笑いながら手を振った。




