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2本の尾  作者: ジャニス・ミカ・ビートフェルト
第一部 ”みけ”
24/100

消臭剤

  ウエウエ…ウエエエ…

 鼻をすすりながら顎をガクガクさせている剛ちゃんを

 瞳は脇を抱えて頭を撫でながら前を歩いている。

 抱えているというか…引きずっているって言うか…軽いもんね剛ちゃんの体って。

 それに、瞳は164センチで55キロもある( 胸もお尻もいい具合に出てるからね! )し

 さっきの様に石を割る怪力だからそうなっちゃんうんだよね。


 剛ちゃんの48キロって凄いよねぇ…背は低いけど158あるから痩せすぎ。

 …ちなみに私は46キロ勝った…身長は同じなんだけどね。

 骨格や筋肉が重い男子と比較したはどうかと思うけど…


  教室に入る前には、心配そうに同じ校舎の園芸科の女子に心配そうに声を掛けられた。

 園芸科の男は基本、

 不細工で頭は悪くて体が丈夫で若い性欲を持て余しているような感じなんで

 美形でギラギラしてない剛ちゃんは彼女たちの青春のエ・モ・ノってとこだからって事だけど、

 それを言ったら一人しかいない男を守ろうと

 直ぐに家政科の頭を打ったような不良たちが直ぐに教室から飛んできて

 間に入って追い払ってくれた。



  教室に入ったら…私たちは自分の席に着く。

 泣いてる剛ちゃんは放っておいても教室中がフォローするから邪魔なんだよね私たち。

 ある生徒はここぞとばかりにとっておきのハンカチで涙を拭くし、

 心配そうにいろいろ聞いて頭なでる生徒もいる…まるでマスコットだね。


  暫くして担任の南先生が入って来る。

 53歳の小母さんなんだけど、結構短いスカートを穿いて来る現役やめませんって感じの人だ。

 奇跡の様に胸もお尻も垂れてないけど、寄る年波には勝てず厚化粧が…ちょっと怖い。

 

 朝の挨拶を軽くした後、先生が机に突っ伏している剛ちゃんを指さした。


「 どうなってるの? まさかまた…馬鹿な園芸科の女の子が… 」


「 違います。今日は畜産の先輩です…男です 」

 先生のすぐ前に座っているメガネをかけた委員長が、メガネ軽く上げながら報告する。

 言っておくけど、

 委員長って言ったって頭は大したことないぞ、底辺校なんだから…

 メガネかけて三つ編みだからって見た目だけで推薦された委員長ですから。


「 そう…可愛いもんね剛一郎君って。」


 先生は教壇をゆっくり降りて剛ちゃんの机にまで歩いて行く。

 そして突っ伏している剛ちゃんの顎を軽く掴んで顔をあげさせた。


「 怖くなかった?後で職員室来る?お話ぐらい聞きますけどぉ… 」

  

 先生はとても生徒にかける言葉とは思えない言葉を妙に色っぽい声で話しかけたので、

 剛ちゃんの周りの生徒が途端にブーイングしだす。


「 先生、気持ち悪いって! 」

 

 だけど、その言葉がいけなかったみたい…先生は笑いながら剛ちゃんを

 大きな胸に抱き寄せて


「 何が気持ち悪いの? 」って挑発的に生徒たちに返した。


 可哀想に…剛ちゃんが今度は恥ずかしくて顔が真っ赤…


「 だって、先生と生徒だし…歳だって親子以上に離れているじゃないですか? 」

 さっき助けに入ってくれた不良の子が正論を振りかざした。

  

「 それを言ったら、校則違反のそのスカートの方が悪いわよ…決まりなんだから。

  わたしのは規範と少しはずれてるだけで悪いことはしていないわよ。


  別に体罰してるわけでもないし、年が離れているのはあなた達には関係ないでしょ? 」


 う~ん、頭が痛くなって来た。

 中村さん(不良の名前)のスカートは確かに短すぎてパンツ見えそうなほどの校則違反だけど、

 今時の高校生だし…多少は良いんじゃない?って思える…決まりだけどね。


 しかし、それって体罰みたいに見えるよ(剛ちゃん息が苦しそうだし… )

 最後の言葉はそれは反則でしょう?


「 せ…先生…く、苦しい 」

 90センチって言われる先生の胸の圧力に耐えかねた剛ちゃんが声を上げた。

 先生はそれを聞いてパッと手を離した。 


「 あら、ごめんなさい…ちょっと遊びが過ぎたみたいね。

  気持ち悪いって言われてカチンときちゃて…でも、後で職員室には来なさいよ。

  背中が破れてますから…縫ってあげますからね 」

 そう言う意味で言ったのか…


「 先生~、服ぐらい私たちでも直せるんですけど 」


「 あら、服飾の先生の私より上手いのかしら? 」


 その言葉にみんな黙ってしまうしかなかった。


 先生は、軽く剛ちゃんの頭を撫でると教壇に戻っていく。

 お尻が左右に揺れるのが色っぽ過ぎる…53なのに…


「 ホームルームを始めますけど、その前に一言だけ言っておきますわね 」


 先生が周りを見渡して笑顔になった。


「 流石に男子がいると掃除が行き届いてますねェ…服装もパリッとしてるし

  ああそれと、中村さんはスカートを10センチは下げてくださいね…

  剛一郎君はきっちりしている人が好みですから… 」


「 え~本当? 」

 

「 ええ、面談で聞いていますから間違いないですよ 」


 すると、スカートを巻き上げて止めていたクリップを外して丈を調整しだす人が…沢山。

 特に中村さんは必死にね…それを見て先生の頬が緩んだ。


「 中村さんは違うクラスの時は煙草の匂いもしてましたけど…今は全くしてません。

  他の子も似たり寄ったりの所があって

  少しぐらい臭い服着てた生徒もいましたけど、今は石鹸の匂いしかしませんね。


  消臭剤より効きますわ。 」


 南先生が剛ちゃんの顔を見てウインクする…意味は無いんだろうけど。


「  女性だらけが当たり前の家政科に、

  剛一郎君がいるなんてことはあなた達にとって奇跡みたいなもんですから大事にね。

  それから…別に私は剛一郎君を狙ってるわけじゃないので誤解しない様に 」


 疎らな笑いが漏れた。少し意味深な気がする。


「 では、出席を取ってからホームルームを始めますね 」


 そして、今日の授業が始まったのでした。



  


 


 

 

 



 

 

 

 


 

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