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2本の尾  作者: ジャニス・ミカ・ビートフェルト
第一部 ”みけ”
16/100

ただの技術

  ベスさんのマッサージは恐ろしい音を立てながら続いていく。

 鼻…なんかムシリ取られる勢いで引っ張られ、唇は平手でゴリゴリ…

 アゴなんかヒジで何度も打ち下ろし…

 私の知ってるようなマッサージじゃないし…ってか拷問てっか破壊?

 頭が変形して見えたり、ゆっくり顔が変わっていくのも

 衝撃の大きなマッサージの性だと思う。


 首なんか90度に上下左右にボキボキ、メキメキ

 あまり大きくない九鬼さんの胸や、ちょっと緩めのお腹が

 ベスさんが麺棒のようでそうでない真黒な棒で麺の様にグニャグニャ

 んで、足元に回って両足首掴んで凄い勢いで開脚させたり、

 そのまま頭まで引き上げて…下着をつけていないお尻が露わになって


 そこで初めて”キャッ”って九鬼さんの声が聞こえた。

 なんかその声は若いお姉さんのように聞こえる…けど

 横から見ている私から見る感じはちょっとエロイ

 プリンとしたお尻…プリン?って垂れてない…

 お風呂場で見たときはもうちょっと柔らかく垂れていたような気がしたんだけど…

 ああ、九鬼さんの顔が真っ赤になって…でもちょっと変わった気がする。

 恥ずかしい仕草が若々しい…


「 んじゃあ、今度は裏返し… 」


 ベスさんは怪力なのか、両足首を持ったまま捻ると九鬼さんの体が宙に浮いて一回転

 うつぶせにされる。

 そこで、ふわっとベスさんが九鬼さん悪背中に乗って、

 そのまま足を開かせて逆エビ固め…グエエエと流石に苦しそうな声がする。

 ベスさんはその後も、背中の方から首を引っ張ったり

 関節という関節に私でもテレビで見たことのあるプロレスの関節技をかけていく。

 

 ひええええ…なによこれ!

 クライン社の他の人がマッサージしてるの見たことあるけど、こんなんじゃあ無かったんですけど!




  マッサージという名の九鬼さんの体の破壊作業は1時間続いた。

 

「 ハアハア…終わったわよ。これで一応終わりだわ 」


 ベスさんは、ピクリとも動かなくなった九鬼さんの背中からゆっくりと降りると

 その場でしゃがみこんで荒い息をしながら、額から流れる汗を床に染み込ませていった。


 そりゃあ疲れるでしょう…怖くて止めることが出来なかったけど

 一時間たっぷりと、凄い音を立てながら関節技したりあちこちを締め上げたり…

 九鬼さん体大丈夫かなぁ…


「 ええ…と…ベスさん…か、体大丈夫なんですか? 」


「 大丈夫だ大丈夫…私は平気だわ ちょっと疲れただけ 」


「 いや…ベスさんじゃなく九鬼さんの方ですよ…骨でも折れたりしたんじゃないんですか?

  途中で鶏が絞められてる時の様な断末魔みたいな声聞いたし… 」


「 あら、それはね体から悪魔が抜ける合図なの…それで正常なのよこのマッサージ 」


 あくまがぬける?何その電波みたいな言葉。

 私は、怖くなってなって少し後ずさりしたけど、九鬼さんが心配なので逃げられなかった。


「 大丈夫よ…ほら、イチ、ニのサン! 」


 ベスさんが汗をかいた顔を上げてニコッと笑って指をパチンと鳴らした。


 すると、ベスさんに痛めつけられた九鬼さんの体がゆっくりとゾンビの様に体を起こした。


「 う~ん、気持ちいい~体中の疲れが吹っ飛んだみたい…爽快爽快!若い時みたいだわ 」


 私は、その声にびっくりした。

 確かに九鬼さんの声に違いなかったが、少しトーンが高く瑞々しい声の響き…若い声だったからだ。


 九鬼さんは、片手を天井に向けてもう片方の手でその肘を掴んで大きく伸びをした。

 見た目は若い事は若いけど…それは九鬼さんの元々の姿で変わりはない。

 ただ…感じる印象は…バイトのお姉さんの大学生の南さんの様に若い感じがする。

 説明するのは難しい…

 頭が残念な私が頑張って表現すると、そうだなあぁ

 見た目が老けて見えるけど、20代のお姉さん?なんじゃそれ…って言われそうだけど。


「 えっと、若返ってるわ九鬼さん… 」


「 え、嬉しいわね~ 」

 九鬼さんはそのまま立ち上がると…笑顔でマッサージ室の大きな鏡まで走って行く。

 下ろした髪を撫で上げながら鏡を見つめて、体中を隈なく鏡に向けてくゆらせる…


「 そう?あまり変わらない見た目だと思うんだけど…体は凄く調子いいけどね 

  ああ、それと声がちょっと変わった気がする…

  そういえば、耳もなんかよく聞こえるし…

  目が良く見える…老眼…あわわわ、私の肌ってこんな感じだったかしら? 」


 そこまで言うと、急に何かに気が付いた様に胸を弄って、脇腹に手をやって

 

「 はああ? 」

 と驚いて、薄いバスローブの裾を跳ね上げてお尻を鷲掴みした…

 

 私たちは同性だからいいものの…恥ずかしい格好だった。

 で、そのまま彫刻の様に鏡の前で九鬼さんは固まった。


「 何よこれ…この弾力に肌の張り… 」



  私は、奇跡としか見えない九鬼さんの変化に驚いてベスさんに質問する。


「 若返ってます九鬼さん…まさか、ベスさんて神様?魔女? 」


 馬鹿の我ながら、小学生でも言わない様な質問をしてしまう。

 その私を見て、おかしくてたまらない顔で私を見ながら答えを返してくれた。


「 若返りなんてある訳ないでしょ!もしできれば不老不死だってできちゃうでしょ?

  そんな馬鹿な能力をただの人間の私が出来るわけないじゃないの。


  これは、ただの技術よ…骨格を矯正し、体液の流れを正常に戻しただけよ。

  ま、勿論秘術って感じの秘密もありますけど魔法でも奇跡でもないのよ 」


「 あれがですか? 」


 プロレス技の連続にしか見えなかったんですけど…


「 いやあ、みけちゃん!気分いいわね。ベスさん最高だわやっぱり ははは! 」


 誰が見ても奇跡としか思えないけど、

 当の本人はただのマッサージの効果にしか感じていないようだ。

 九鬼さんは有頂天になりながら鏡の前で踊りながら自分にうっとりしていた。

 私は鏡に映る満足そうな九鬼さんの顔を見て

 自分事ではないけど…同じように嬉しくなった。


 ただ、鏡にはベスさんが笑いながら舌を出しているのが見えた。


 その後は、唇が動くのが見えたけど鼻と耳は物凄くいいけど、

 目はあまり良く見えない私には全部は分からかった。


 な・ん・ちゃ・って…という言葉が挟まっているのだけは分かったけど。






 



 

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