第9節
まず、ウェイド・ビーツに与えられたのは住処だった。街の東側を意味する「レフタイ」という地区にイクスビー基金の所有するアパートがあり、そこの空き部屋の一つが当てがわれた。家具などは既に備え付けられており、夕暮れの薄明かりに浮かぶ、木製のシンプルで素朴なシルエットは穏やかな生活をもたらしてくれそうだった。川に面したバルコニーからは涼しい風がたっぷりと吹き込んできて、夏を迎えるカルナバルで過ごすにはもってこいだ。
部屋に通され、少しばかりの見舞い金をイクスビー基金の職員から渡されたウェイドは手始めに、周囲を散策してみることにした。ヴォイス曰く、郷に入れば郷に従え。であれば、ここがいかなる郷かは自分で見て確かめなくてはならない。とはいえ、日が沈み切ってしまえば人間の活動は急激に少なくなる。ウェイドは初めて見るガス灯の街並みに想いを馳せつつ、シャワーを浴び、ナイトガウンに着替えて眠りに就いた。
翌朝、窓からいっぱいに差し込む朝日でウェイドは目を覚ました。ゲダンの布団とも、レーズの病床とも違う、優しく包み込むマットレスにもう少し埋もれていたかった気もするが、それ以上に清々しく目覚めた彼の身体と心は好奇心からくる活力に満ちていて、タオルケットをするりと退けて寝床を出た。
陶器製のボウルを備えた洗面所で顔を洗ってから、着替えようとクローゼットを見て驚いた。それぞれサイズのぴったりなシャツとズボンが3、4セットほど吊ってあったのだ。気配りと言うにはちょっと行き過ぎな感も無くはなかったし、「いろんな人にこれ程の施しをしてるんだろうか?」と疑問に思ったが、それ以上に貴重な見舞金を、着の身着のままなボロ切れの更新に費やさなくて良かったという利点が勝ったので何も言わなかった。着替えが終わると、まずは朝食を摂るために部屋を出た。
レフタイは、カルナバルの住人たちに言わせれば「朝日の街」であり、人々は「月と親しき者」で、気質は「気取り屋」なんだそうだ。あまり色の多い飾りを好まず、だからといって質素では無い。アパートから石段を降りて道に出るとすぐに、薄手の黒いジャケットに、一揃えの短パンを身につけた男性とすれ違った。インナーも、服から露出した素肌も何もかもが白い。元の肌の色を加味しても、西側の住人と比べると全体的に日焼けをしていないように思われる。
数分も歩かぬうちに、辺りはたちまち香ばしい香りに包まれる。この辺りでは白パンや、クロワッサンなど柔らかいパンが朝食の主役となっているのだ。山奥にあるカルナバルでは小麦は大変貴重で、かつては儀式用の硬いパンくらいしか無かったが、近年の流通の発達で、レフタイの富裕層を中心にパン食が活発になっていた。一方、それまでカルナバル全体で流通していたトウモロコシ粉は、現在でも安価に手に入る庶民の食であり、ライタイではトルティーヤ状の生地に練り上げて、様々に具を載せて食べるのが一般的だ。
ウェイドは各々主張し客を呼び込む香りの中から1つを辿り、とあるカフェに入った。黒松のカウンターの前に並ぶ華奢で足長の椅子はどれもが人を載せており、ちょうどウェイドが座って満席という賑わいぶりだ。間も無くカウンターの中に立つ、ベスト姿の肩幅の広い男性が注文を取りに来た。「何にするかい?」と気さくに聞いてくる彼に、おずおずと「…モーニング・プレートを」と自信なさげに注文する。そんな態度でも、男性は「あいよ」とにこやかに返し、大きめの白い皿へ盛り付けを始めた。おたまに"ひとすくい"のコールスローに、上品に畳まれたベーコンの上の小ぶりなサニー・サイドアップ、そしてこのカフェの空気を支配する焼き立てのクロワッサンがふたつ。見る人が見ればケチな量かも知れなかったが、これがレフタイの大勢にとっては必要十分であり、ウェイドにとってもまたそうであるように思えた。
間も無くプレートは彼の眼前に差し出された。盛り付けから提供までを文字通り一手に担ってくれたたくましい腕の先を追いかけると、男性の笑顔は山間から差す朝日のように煌めいていた。フライヤの笑顔と比べると、いささか紫外線が強いようにも感じられるが。
「朝は、生命ある誰にでも平等に訪れる。でも今日のお前さんは特別だ、新顔さん。半額の250ノーツにマケといてやるよ」
突然の親切に、プレートへ伸ばしていたウェイドの手が少し跳ねた。
「そんな、悪いですよ……」
「はは、気にすることは無いって。割引きサービスは最初の一回だけだからよ。今日を逃したら2度と無いチャンスだ。どうする?」
「ん…そういうことなら。ありがとうございます」
そう言ってポケットから銅貨をいくらか取り出して、男性に手渡した。「まいどあり」とそれを受け取ると、カウンターの奥に仕舞いに行こうとするが、途中で足を止めた。
「んあ? アイツ、まーた財布忘れて行きやがったのか」
男性は小走りでカウンターのスイングドアから飛び出し、客の忘れ物らしき麻布の包みを手に取った。そして背後に「おい」と声をかけると、ホールにいたウェイターが顔を上げた。
「俺は駐在所に行って、楽士にコイツを届けてくる。店番頼んだぞ」
ウェイターが頷くのを確認して男性は出口へと向かうが、外へ出る前にウェイドに声をかけてきた。
「さっきはああ言ったが、毎月5の付く日は割引デーだ。今後ともよろしくな?」
ニッコリ笑って、駆け出していった。それをフォークを咥えたまま見送ったウェイドは、かつてとは種類の違う忙しなさのある朝に圧倒されていた。それをかえって心地よく感じたウェイドは、やりたいことの候補にカフェの店員を加えようと思った。
*
朝食を摂り終え、再び街へ出たウェイドは、今度は大通りを見ものに向かった。「ロングタン通り」と呼ばれるこの道は、ウェイドがこの街に来たときにも通った、ナイア大聖堂へと続く真っ直ぐな一本道である。レフタイは、午前から昼過ぎにかけてが1番賑やかになる時間帯だ。
中でもライタイとレフタイを結ぶ「サーヴィング大橋」の、すぐ傍にある噴水広場は市民の憩いの場として大きな賑わいを見せる。「1人なら絵描き、2人ならカップル、それより多けりゃアンサンブル」という言葉で伝わる広場の様子は、実態としてそれ以上の多様さを見せる。大道芸人に吟遊詩人、ギターの独奏、パフォーマンスを伴うドローイング、それらを楽しむ観衆と、合間を縫って駆ける子供達。さらにさらに、その全てをターゲットにした軽食・デザートの屋台まである。特にジェラートの屋台はレフタイの名物であり、ウェイドもこれを一つ買ってみることにした。数ある屋台の中から、ちょうど人の居ない一つを選んだ。
小さな手押し車にパラソルの挿さった店構えは、ジェラートというよりは日本の田舎のアイス売りを連想させた。店主の装いといえば、ハンチングに口髭、オーバオールという日本的なのかイタリア的なのかどっち付かずな様子だ。もしかして地球人(フィフストラベラー)なのかと思うほどに。
やぁ、と話しかけると目線だけこっちに寄越してきた。クーラーケースの縁に体重を預け、左手をポケットに突っ込んだまま、「シングルは500ノーツ、ダブルなら700ノーツだ」と言ってきた。
「シングルでいいよ。フレーバーは何があるの?」
「ピスタチオ、ヘーゼルナッツ、ジャンドゥーヤ」
「じゃあ、ヘーゼルナッツで」
ウェイドが数枚の硬貨を差し出し、店主はそれを受け取るとロクに確かめもせずにオーバーオールのポケットに放り込んだ。クーラーケースの蓋を開けると狭いスペースに身を寄せ合って3つのフレーバーが格納されていた。紙包から不格好に大口を開けたコーンを取り出すと、ピスタチオのケースに刺さっていたディッシャーをヘーゼルナッツジェラートに突き立てた。どうやら全部これ一本で掬い取っているらしい。しっかりと密度と粘り気のあるジェラートを、スープでも"よそう"かのように掬ってはコーンに叩き込んでいく。その手つきだけは間違いなく熟練らしい。やがてそびえ立つ立派なヘーゼルナッツ・フレーバーのジェラートがウェイドに手渡され、「どうも」と礼を述べると店主は今までの無愛想が嘘のようにニッコリ笑って、ハンチングを少し持ち上げた。少し得をしたような気分で、ウェイドはタスキー川のよく見える公園の端へと向かった。
落下防止の柵に手をかけて、お目当てにかじりつく。夏の強かな日差しに熱った体を一口目の清涼感が駆け巡るようだった。チョコレート菓子のごとく濃厚な甘みに、しっかりとナッツの香り。しかし、不思議としつこくなく、喉をスルリと通っていく。重量からしてコーンの奥までしっかりとジェラートが詰まっているらしかったが、これなら胸焼けを覚える間も無く、すぐに食べ終えてしまいそうだ。表皮を隔てて行われる熱交換は心地よい刺激となって、河を眺めるウェイドの目は微睡んでいるかも知れなかった。だが、そんなトリップ感覚は、不意にシャツの裾を引かれる感触によって阻害された。ふと下を見ると、3、4歳頃のように見受けられる女の子が、彼のシャツをぎゅっと握っていた。
「わたしの、ママしらない?」
「…はぐれちゃったの?」
「ううん。ママがいなくなった」
どうやら、迷子らしい。
恐らく初めてのことではないのだろう。母親の真似なのか、勝手に居なくなったことに対する「まったく、もう」の態度を繕おうとしてはいるものの、9割9分9厘、年相応の不安が勝ってしまっている。
「弱ったな…」
辺りを見回すが、人集りに次ぐ人集りで、分かりやすく迷子を探していそうな婦人の姿は見当たらない。なんと言ってもここは、レフタイの噴水広場なのだから。
(そうか、こんだけ人でごった返すんだから、迷子だって相当出る筈じゃないか。それなら手っ取り早く、先人に対処を聞いちまえ!)
思い立ったウェイドは、しゃがんで少女に目線を合わせた。
「わかったよ、ママを探すの手伝うから。知ってそうな人に話を聞いてみよう?」
彼の提案に、女の子はコクリと頷いた。人差し指に掴まってもらい、彼女の手を引いて先ほどジェラートを買った屋台へと戻る。
「すみません。さっきと同じの、この子にも」
言われて、店主はまたしても、よく動く瞳だけでウェイドの足元を確認し、もう一度彼の顔に目線を戻す。
「これはこれは、大人しそうな顔してナンパ上手かい?」
「まさか。迷子らしいんだけど、どうすればいいか分かんなくって」
「まぁ、そんなこったろうな」と言いながら、店主は再びクーラーケースを開けて、コーンへ盛り付けを始める。
「そういうときはな兄ちゃん、どこの国だって変わんねぇ。お巡りさんに相談すんだ」
盛り付けを終え、ディッシャーをアイスの塊に突き立てると、店主は屈んで女の子に商品を手渡した。その瞬間の彼はやはりニッコリ顔で、「はい、どうぞ」なんてきちんと接客の態度だった。それが立ち上がった途端に元の無表情に戻って、公園の一角を指差した。ウェイドはそれを目で追いかける。
「あっちに白い日除けみたいな屋根が見えるだろう?あれが楽士様の駐在所さ」
成る程、まばらに植わっている木々の間に、レフタイらしい純白の建築物が見え隠れしている。それを確かめながらウェイドは、ポケットからまたノーツ硬貨を探り出していた。
「ありがとう、あっちを頼ってみるよ」
差し出したお代を受け取ると、店主はまた少しだけハンチングを上げる。ほとんど一瞬でこめかみを掻くのと変わらないようなものだったが、何をしようとしたのかが伝わればウェイドには十分だった。
「他にも分かんないことがあったら聞いてくれよ。俺も、外国からこっちへ来てまだ三年目だがね」
そして、また例の笑顔になった。表情にいささか癖はあるようだが、この男性は間違いなく親切だ。恐らく、ウェイドがこれから目指すべき方向の。
「助かるよ、これからもよろしく」
ウェイドも笑顔で返した。両手が塞がっているので、顔の横でジェラートをちょいちょいと振って、駐在所へと向かう。女の子は、ジェラートに夢中でおとなしいものだった。
なんてことはない、ものの数十秒歩いただけで駐在所には辿り着く。木陰からその姿が見えると、そこには1人の楽士と、慌てた雰囲気の女性が立っていた。想像したより話は早く済みそうだ。
すみません、と駐在に向かって声をかけると、2人ともこちらへ振り向いた。女性はウェイドの膝まで見ると、目を丸くして口を手で覆った。
「おちびちゃん!」
「ママ!」
ああ、なんてベタなやり取りだろう。だが、これが求めていたハッピーエンドだ。
ジェラートのコーンをしっかり握りしめて、女の子は母親に駆け寄っていく。ママとジェラートが彼女の興味の2トップであるうちは、もう迷子になんてならないだろう。
駐在の楽士が一歩前へ出て、肩の音符の刺繍に手をあてて一礼してきた。ウェイドも頭を下げて返す。親子も、揃って頭を下げて、彼と楽士に礼を述べた。ウェイドはジェラート代を返すとまで言われたが、これを丁重に断った。元よりそんなつもりは無かったし、きっと、朝食代をまけて貰った分が、誰かへの親切へと巡っていったのだと思うと、ウェイドにはこの思いやりの連鎖が興味深く、愛おしいものに感じられたからだった。
*
カルナバルへ来て、一週間ほどが過ぎた。
フライヤが「たまには夕食でも」と言うので、ウェイドは住まいのあるレフタイから橋を渡った西側、ライタイに来ていた。
ライタイは、「夕陽の街」である。人々は「太陽と親しき者」にして「陽気な日焼け者」とされるが、とても一言には押し込められない多様性がこの区域の特色である。初めてウェイドがこの街に来たときに圧倒された、ポップなグラフィティが建物の壁という壁を埋め尽くしていおり、それらは描かれている場所によってデザインの流行の変遷が見て取れ、時の流れすらアートの一部に織り込まれているようだ。
人々のファッションは色彩感覚豊かで、デザインもとっ散らかっている。七色のパンツ一丁で通りをうろついたって、このライタイでは許される。
そしてなんといっても、この街の本番は夜である。ガス灯やランタンで細い路地は昼間のように明るく照らされ、そこら中の酒場では飲んで食っての大騒ぎが始まる。正直、彼らの方がよっぽど月と親しいのでは?と思うほどに、ライタイの人々は夜通しはしゃぐことを楽しむ。
そんな喧騒に溢れる路地の一角、小さい居酒屋のような店の奥のテーブルでフライヤは待っていた。対面の椅子に着いて、お互いに注文を済ませると、木製のジョッキに注がれたドリンクを先に渡された。カルナバルでよく飲まれる果実のジュースだという。ジョッキを手に取ってフライヤのものと軽く打ち合わせると、一口あおった。ココナッツのような、甘すぎない、すっきりとした味だった。
「どうだい、ここでの生活は?」
「とってもいいよ。君には本当に感謝してる。ありがとう」
「ふふ、なら良かった」
テンプレート地味たやりとのあと、店のおかみさんが注文の品を持ってやってきた。平皿に何枚も重ねられた、トウモロコシ粉を練って焼き上げた生地と、それに包むための具がボウルに盛られている。フライヤは生地を一枚手に取ると、ボウルに入った大きなスプーンで中の具をすくい取り、生地の真ん中に盛り付けると、小皿の上で丁寧に巻いた。それを眺めていたウェイドに、「やってみなよ。おいしいんだよ」とフライヤが微笑みかける。言われる通り慣れない手つきで生地を取り、具を盛り付けるが、少しばかり量が多かったのか、折った生地の隙間からはみ出した。
お互い一口目を齧って、しばし目の前のトルティーヤ的なものに集中する。細かく切られた野菜と豚肉にソースを混ぜたそれは、様々な食感に甘酸っぱさが混ざっていて、ウェイドにとっては急に身近に地球を感じるような味だった。そして、彼の口に合ったらしいことが分かると、フライヤ一層は目尻を下げた。
「ところで、自分探しの方は順調?」
それはそれとして、フライヤは自分の仕事を忘れない男だ。ウェイドは今口に入っているものを急ぎ咀嚼してジュースで流し込んだ。
「とりあえず一週間過ごしてみて、一つ分かったんだ。この街の"良いこと"の先には、いつも楽士がいる気がする」
「と、言うと?」
「君が自慢するだけあって、この街の人達はみんな親切だ。その親切な人たちの誰もが、楽士を信頼してる。何かあれば、みんな楽士に相談しにくる」
ウェイドが見てきた風景には、常に楽士がいた。彼らは街の警察機構であることを超えて、文化に、生活に溶け込んでいた。相談とも言えないような愚痴やお喋りに付き合う者もいたし、共に楽器を演奏したり、修理をしてやる者もいた。楽士団はヴォイスを敬う者であれば、誰にでも参加の機会を与えているという。己の芸術性を高めることを目的にカルナバルに住み着きながらも、次第に楽士を志ざす人間は少なくない。
「ボクは、住う人から一歩進んで、楽士になってみたいと思う。他人に信頼されるのは良い人で、良い人たらしめるのは善行だ。なら、ボクはそこを目指すべきなんだ…と、思うんだけど」
どうかな?と首を傾げるウェイド。フライヤがテーブルの上で組んだ指に顎を乗せたので、少しだけ顔の距離が近づいた。そのまま、上目遣いで彼を見る。
「僕、君のスピーチが好きだよ」
声量は細いが、音の芯がしっかりとしていて、もともと高めの声色であるフライヤの言葉は耳に入りやすいし、残りやすい。なんとなく、心臓を人差し指の先で撫ぜられるような、こそばゆい感覚をウェイドは覚えた。
「今のスピーチも、とっても良かった。だから君の思ったことは、今の君にとって間違いじゃないと信じれる」
「はは、なんだよそれぇ」
ウェイドは気恥ずかしさを隠すように、笑いつつこめかみを掻いた。
「君が本当にすべきことは何か、考えるべきことは何か。そんな難しいことは僕にも分からない。それに、仮に正しいことを言えたとしても、ウェイドがそれに納得できなきゃ、君が幸せになれないだろう?
だから僕には、"ウェイドの出した結論"を信じて、それに力を貸すことしか出来ないんだ。今の君の言葉は、それを信じさせてくれるのに十分だった、という話さ」
フライヤはショートマントの中に手を入れると、胸のポケットから封筒を取り出した。ウェイドに差し出されたそれには、「カルナバル・フィルハーモニー楽士団 入団試験 受験願書」と書かれていた。
「やってみよう、ウェイド?」
ウェイドは封筒を受け取ると、フライヤの目を真っ直ぐ見据えた。
「…本当に、ありがとう。今は何でもして貰うばかりだけれど、この恩は必ず返す」
「気にしないで、と言うところだけれど、今の君はきっと、目標があった方が燃えるよね? …楽しみにしてるよ」
一拍置いて、笑い合う。
「さぁ、食べよう食べよう」とフライヤに促され、ライタイの片隅でのディナーは和やかに進んでいった。
だが、ウェイドはまだ知らない。
この受験が、ちょっとした試練を彼にもたらす事を。
そして、新しい出会いを運んでくる事を。




