File : Project G.O.D. 06
——傍観者機構 活動開始
——接続……成功
対象サナの生体反応を確認。隔離フロア室内。室内扉開閉音。対象サナを視認。
タオルで濡れた髪を押さえながら歩くサナ。服装変化を確認。前回着用の簡易服。
サナからの視線を感知。笑顔をこちらに向けている。
「良かった。居てくれてたんですね。ありがとうございます。どうも落ち着かなくて、今日は直ぐに出てきてしまいました」
サナ、笑顔のまま寝具に腰かける。髪にタオルを乗せたまま、顔をこちらに向ける対象。
「なんだか嬉しい。いつもこの時間は一人で居て、どうしても嫌なことばかり考えてしまってましたから。本当に、ありがとうございます……ふふっ、なんだかお礼言ってばかりですね、私。でも感謝しているのは本当なんです。私なんかと、こうして居てくれるのですから」
天井に顔を向け、目を細める対象。両手を寝具に添え、そのまま体重を両手にかける。
「みんな薄情です。学校では仲が良かったのに、共感病になったとたん友達とは一切連絡がつかなくなりました。面会が出来る時期も、誰一人来ませんでした」
サナは天井に片手を伸ばし、手を広げた。小さく震えながら。
「みんな、今は空の上です。星間船であの星空の中……私達から逃げて、あんな遠く」
伸ばした手を戻し、震える手をもう片方の手で押さえるサナ。
「お願い。あなただけは私から逃げないで、私を一人にしないで……もう、これ以上は……」
サナはそのまま俯き、頭を振った。頭に乗っていたタオルが対象の膝の上に落ちる。
「無理言ってごめんなさい。今のは、忘れてください」
対象サナ、俯いたまま膝の上に落ちたタオルを握りしめる。完全に灰色に変色した手。
「どうしたんだろ、こんなん筈じゃなかったのに……強くなるって、決めたのに」
頭を振り、顔をこちらに向け、小さく口元だけ微笑むサナ。
「もう寝ますね。最近は眠る時間が多くなって、起きているのがつらいんです」
手首の小型端末を操作するサナ。室内照明が消灯、壁から小さな光が微点灯を続ける。
サナは寝具の毛布を被り横になった。
「あの、もし良ければ私が寝るまでここに居てくれませんか? 寝入りは良いので時間は取らせませんから。一人じゃない、そう思えると安心して落ち着けます……おやすみなさい」
対象サナ、瞳を閉じる。対象の呼吸のみが響く室内。対象サナの睡眠を確認。
周囲に対象以外の動作反応及び生体反応無し。
——傍観者機構 接続停止
管理番号_20160805 管理者名_若葉代理