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File : Project G.O.D. 01

——接続可能端末発見

——固有番号……不明 端末に重度の損傷

——現在地……不明 座標の取得に失敗

——現地の固有名称を取得中……一部取得に成功

——端末への接続……成功



 接触対象を検索中……終了。

 主対象に接近、接触を開始。

 対象を視認。対象に対して警告表示が点滅。警告の種類の判別……不明。傍観者機構に破損を確認。警告を消去し対象との接触を優先。

 現在地、未確認建造物屋上。座標、現在時刻等不明。比較情報無し。

 対象、体全体を覆う簡易的な服を着用している。対象を骨格と人体構造から女性と判断。年齢の詳細、一部に異常が見られるため検証不能、外見から十二から十四と推測。

 対象は目を鋭く細め、空を見上げている。視線の先の空、対象の髪と同じ灰色の曇り空。

 対象からの視線を感知。対象は顔をこちらに向けている。ひそめる眉。鋭利な黒い瞳。

「初めまして、ですか?」

 対象、風になびく長い灰色の髪を手で押さえる。

「どうでもいい事でしたね、あなたにとっては……何しに来たんですか。今時、私のような存在なんて珍しくもないでしょうに」

 対象は自身の長い灰色の髪を摘みながら視線を逸らし、ため息をついて再び空に顔を向けた。

「私も馬鹿ね、答えられるわけないのに。本当、馬鹿みたい」

 対象、視線のみこちらに向け、目を細めた。

「こんな所に居るってことは暇なんですよね。だったら、少し愚痴に付き合ってください」

 口を閉ざして見つめ続ける対象。

 対象の重なる両手の指が微かに動いている。

「えっと……ありがとうございます」

 対象は視線をこちらから逸らし、頬を掻いた。

「それなら、ほら見てください。もう表面化が始まってるんです」

 対象の手が差し出される。指先は髪と同じ灰色に変色。

「共感病ってやつですよ。世界を巡っているあなたなら知ってるでしょう? おかげでこの有様です。昨日、この建物以外の出入りを禁じられました。明日からは区画も制限されて屋上にも出られません。だから見納めにって思ったんだけど……」

 対象は再び顔を空へ向け、口元だけ小さく笑みを浮かべた。

「よりによってなんで曇ってるかな。とうとう人間だけじゃなくて、太陽にも嫌われたんですかね、私。ま、いいか。あなたに会えたって事は、それなりに幸運な事なのかもしれませんし」

 対象、笑顔をこちらに。微笑んだままの口元。ひそめる眉。

「自己紹介が遅れました。私はキジマサナと言います。サナでいいです。みんな、そう呼んでますから。私はこの建物で……一応、患者みたいなのをしてます」

 対象の固有名称を取得。呼称をサナに変更、登録。

「それで、もし良ければなんですけど。また来てくれませんか? もう会える友達も居ないし……それに、私は後一週間位しか居ませんから」

 サナの手首に付けられた情報端末から電子音。サナの笑顔が消える。強く握られる手。こわばる身体。

「もう行かないと……あの、本当に良ければでいいです。私はこの建物の隔離フロアに居ます……それじゃ行きますね。ありがとうございました。愚痴に付き合ってくれて」

 扉の方角に歩き出すサナ。

 サナは扉横の情報端末の前で止まり、端末に手をかざしながら振り向いた。

「また会えるといいですね、傍観者さん」

 屋上扉開放。手をこちらに小さく振るサナ。対象サナを視界から消失。

 周囲に生体反応及び動作反応無し。



——傍観者機構 接続停止





管理番号_20160805 管理者名_若葉代理

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