七人八人目
いらっしゃいませ。
熱い中、ようこそ。さあ、お入りください。
今、冷たい飲み物を出させましょう。
隆元、冷たいお茶を二つ。
「かしこまりました」
どのような御用事でいらっしゃったのでしょう?
ご結婚ですか、おめでとうございます。とても幸せそうですね。私まで嬉しくなりますよ。
新居に引っ越すとは、羨ましいですよ。
それで、箪笥を購入に来たのですか。それは大変名誉なことでありますが、いいのですか? 私の店は新しい物がほとんどありませんよ。
私がこの子達をどう思っているのか、ですか。私にとってこの子達は大事な物です。人より長い歴史を積み重ね、何よりも誇らしく生きているのですから。そんな子達に出会えるのが本当に好きなんです。
そうですか。同じように考えて下さっていることとても嬉しいです。先ほどの質問は失礼でした。
では、箪笥があるのは奥の部屋でございます、行きましょうか。
ここでございます。大きさも作られた年代もバラバラですが皆いい子ですよ。
それは、日本と西洋の文化が混ざったものです。綺麗に装飾されているでしょう? 下は引き出しが三段、上は扉式になっていて、開けると着物入れとなっております。そして、左にある、大きな扉を開けると洋服が駆けられるようになっているのです。
二人共、この子が気に入ったのですか。一目でこの子しかない、と。
それはきっと、この子もあなたたちを待っていたのでしょう。ずっと心待ちにしていたのでしょう。
いえ、お代は結構です。私からの結婚祝いだと思って下さい。どうか、この子を頼みますよ。
はい、お幸せに。またのご来店お待ちしております。
「お手紙が届いておりますよ」
おや、誰からだい?
「この間、箪笥を購入したお二人からです」
どれ。ああ、結婚しましたって報告だね。箪笥の前で写真も撮ったみたいだよ。二人共素敵な笑顔だ。
こんな時、この仕事をしていて本当に良かったって思えるよ。
「そうですな」
この話はいつも作品を呼んで下さってコメントを下さっている寝坊助さんのリクエストで「ほっこり」するようなお話と言うことで書かせていただきました!
どうでしょう?
ほっこりしましたか……?
少し不安ですが楽しんで頂ければ嬉しいです。