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夢話堂  作者: 若葉 美咲
3/10

二人目 女性


 いらっしゃいませ、お客様。ここは招かれた者だけが来ることのできるお店、夢話堂にございます。

 貴方のような若い女性がいらっしゃるとは、大変珍しいことです。

 こんな店を見るのは初めてですか? しかし、この店は最初からここにありましたよ。皆様のすぐ近くにありながら、遠いところに。分かりにくいかもしれません。口で説明できるようなものでもございません。


 ここに呼ばれたということは道具や想いに引き寄せられたのかもしれませんね。

 様々な物がありますよ。どうぞ見て行って下さい。飾り物から、実用的なものまで。多くが骨董品でかなり古い物ではありますが、どれも一級品です。

 そうしたものの中には心を宿す物が多いのですよ。人に大事に作られ、大事に使われてきたもの達ですから。優しさと温かさがものに魂を与えるのです。


 中には人を選ぶ物もいるんです。可愛らしいとは思いませんか?

 おや、作り話とお思いですか?

 さあ、分かりませんよ。

 何が起こってもおかしくないですから、この世界は。


 それに昔から、道具は人を守って来たのです。衣服となり、家となり、飾りとなり。形は様々ですが、全部、人を守って来たのです。道具がなければ人とは本当に弱い。

 人は道具を生み出し、何千年という歴史の中を生きてきたのです。道具と人とはすごく密接な関係があると言えるんですよ。

 すいません、例えが悪かったですね。


 そうですね……、例えばこのかんざし。綺麗な花飾りがついている素敵な品です。

 しかし、どの簪もそうであるように、髪を束ねる方の先は尖っていますよね。これは、先が尖っている物を付けていれば魔が近寄って来ないと考えられているからです。退魔の力がある、と信じられていたのですよ。

 だから、昔、男は女の方に簪を贈ったのです。悪い物から守るという意味を込めて。

 まあ、最も多くの人は忘れてしまいましたが。

 とてもロマンティックな話でしょう?


 さあ、この簪をつけてみて下さい。やはり、とてもよくお似合いになる。

 いえ、返さなくて結構です。それは、あなたに素晴らしく映えますから。それに、どうやらこの簪はあなたに必要なもののようです。

 お代、ですか……?

 要りません。その子が貴方のところへと行きたがっているので。

 どうしても、ですか。

 では、その簪を大事にしてやって下さい。それが私へのお題と思ってくださって構いません。それにその簪もあなたの所に居たいようですから。


 ご利用ありがとうございました。

 またのお越しをお待ちしております。





 え?

 それでこの話は嘘か本当か、と言われましても……。

 その判断は貴方様にお任せいたします。

 もし、興味が湧いたのならまたお越しください。


 この夢話堂。いつでも、開店しております。

 道具の想いに呼ばれたら、のお話ですが。

 どうぞ、道具は大事にして下さい。

 あなたが使っている道具にも魂が宿るかもしれませんよ?

 それでは、これにて。


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