冒険者とは3
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理由はあとがきで
レイスはスヒールが魔法の詠唱を行うのを見てから、彼の目前に、いや彼を包囲するようにアンデッドを既に召還していた。
魔力が捕らえた数は十二。ガナウスの周りには既に三十を越える数がいるのにも関わらずだ。
死霊を使役する魔法は難しい物では無いにしても、それを専門とする魔術師であっても同時に数体、それも魔石などの魔力に呼応して独自に力を生み出す媒体を用いてその程度。
化け物め。スヒールは決して言葉や表情で表さず、心の内でのみ悪態を付く。
視線の至る所から瓦礫を押しのけて土が盛り上がる。まるで植物が生えるかのように突き出された肉の剥がれ落ちている腕や黄土色に変色した骨はそれらが全てアンデッドの物だということを示していた。
時間の猶予はそれほどない。いくら動きが緩慢なアンデッドだとしても、土から這い出すのにはそれほど時間は掛からないだろう。
詠唱を行っている魔術師は基本的には無力である。魔力を扱うということは薬の調合にも例えられるほどに繊細な作業であり、操る魔力の量と質を間違えれば術者を蝕む毒とも成り得てしまう。
だからこそ、魔術師は慎重に成らざるを得ないのだ。彼らの間に保身こそが生き残る最大の術といった言葉があるように、安全が確保できない状況や場所で魔法を扱う事は本来好ましいことではない。
しかし、スヒールは魔法の詠唱を辞めることはしなかった。周囲が呻き声で埋め尽くされる中、彼は魔法の詠唱を完成させるが、その時には既にアンデッドは地中から姿を現してスヒールへと刃の掛けた剣や黒土に塗れた爪で襲い掛かろうとしている。
普通ならば自分を護るように魔法を発現させるのであろう。レイスもそう考えていたからこそ、顎骨をカタカタと震わせて鳴らし、あたかも笑っているかのように振舞って呼び出したアンデッドがガナウスによって駆逐される様子を見物していたはずだ。
あの魔術師が魔法を放っても、自身の周りのアンデッドをなぎ払うのが精一杯だ。次の詠唱までに新たなアンデッドを召還して嗾けておけば何の危険も生じない。ならば我を不届きにも倒そうとしているこいつ等を嬲り、絶望を植えつけてやるためにも永遠とアンデッドをぶつけてその様を眺めさせて貰おう。
奴の考えを代弁するならば、こんな感じだろうか。
「残念ながら貴様の思惑通りに動くことは無い。せいぜいその油断や慢心に溺れていろ。闇の世界へと逝ね屍共め!」
《聖柱》
サークルによって増幅された魔力は彼が魔法の名を口にすることにより、その形態を変化させた。同時に身体から力が抜けていく感覚は精霊が魔力を取り込んだ事を意味している。力の奔流、いや威圧感と例えた方が相応しいだろう。スヒールの魔力は精霊の動きを活発化させ、大気がざわめく。その様子は与えられたオモチャに喜ぶ子供のような無邪気さを孕んでいた。
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