彼と彼女 ~好きになったのは俺2~
声をかけた俺は、陽菜の目の前に立った。
「一緒に帰ろ」
「えっ」
って、びっくりしたように、二、三度目を瞬かせて、俺を見た。
「一人じゃ危ないよ。家まで送る。帰り道、同じ方向なんだ」
うそは言っていない。自宅は反対方向だけどね。
「そうなの?」
俺の言葉に安心したのか、彼女は一緒に帰ってくれた。
俺たちは並んで歩き出す。
歩き出したは、いいけれど、沈黙の時間が続く。
何を話したらいいのか、うまく言葉が出てこない。
いつもならすらすらと話題も出てくるのに、二人きりは初めてで、柄にもなく、緊張しているみたいだ。
好きな女の子と二人きりって、こんなに緊張するものなのか。
彼女もそうだ。
陽菜も俺に対してポンポンと軽口を言うほうだから、こんなに黙っているのも珍しい。
少しは意識してくれているんだろうか。
しばらくして、お互いの沈黙を破るように、
「ホントはちょっと心細かったの」
陽菜がポツリとつぶやくように言った。
意外な言葉に俺は、びっくりして彼女を見る。
恥ずかしそうに微笑む陽菜の顏。
かわいすぎる。
これはちょっと反則だろう。
いきなり弱みを見せんな。
抱きしめたくなってしまう。
「いつも航太と一緒だったから、一人で帰ることってあんまりなかったから」
ここで、航太かよ。
浮かれそうになった気分が一気に萎んだ。
でも、確かにそうだった。
陽菜と航太は、登下校も一緒だったし、部活も同じで、航太は一日に一回は必ず陽菜の教室に行っていたから。
俺もそれに便乗していたけどね。
そんなんだから、仲がいいことは割と生徒たちに知られていて、二人は半ば公認の仲だった。
陽菜は否定していたけれど。
だから、航太が西野とつきあい始めて、いろいろなうわさが飛び交った。
三角関係だとか、親友に彼氏を取られたとか、他にも聞くに堪えないような下世話なうわさもあった。
まったく、人って無責任だよな。なんとでも言えるんだから。
「陽菜ちゃんと航太って、家は近所だって言ってたけど」
前々から気になっていたことを口にした。
毎日登下校が一緒って、よっぽど近くじゃなきゃできないよな。航太が陽菜を好きってこともあったんだろうけど。
「あれ、白河くん知らなかった? あっ、見えてきた。あそこだよ。わたしの家」
彼女が指さしたのは、二十階ほどありそうな分譲マンション。
「それから、航太もね」
「!」
なんだよ、それ。
近所どころか、ほとんど同じ屋根の下じゃん。
こんな近くにいたのか。




