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春花秋月  作者: きさらぎ
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11/26

彼と彼女 ~好きになったのは俺2~

 声をかけた俺は、陽菜の目の前に立った。


「一緒に帰ろ」


「えっ」


 って、びっくりしたように、二、三度目を瞬かせて、俺を見た。


「一人じゃ危ないよ。家まで送る。帰り道、同じ方向なんだ」


 うそは言っていない。自宅は反対方向だけどね。


「そうなの?」


 俺の言葉に安心したのか、彼女は一緒に帰ってくれた。

 俺たちは並んで歩き出す。



 歩き出したは、いいけれど、沈黙の時間が続く。


 何を話したらいいのか、うまく言葉が出てこない。

 いつもならすらすらと話題も出てくるのに、二人きりは初めてで、柄にもなく、緊張しているみたいだ。

 好きな女の子と二人きりって、こんなに緊張するものなのか。


 彼女もそうだ。

 陽菜も俺に対してポンポンと軽口を言うほうだから、こんなに黙っているのも珍しい。

 少しは意識してくれているんだろうか。



 しばらくして、お互いの沈黙を破るように、


「ホントはちょっと心細かったの」


 陽菜がポツリとつぶやくように言った。


 意外な言葉に俺は、びっくりして彼女を見る。

 恥ずかしそうに微笑む陽菜の顏。


 かわいすぎる。

 これはちょっと反則だろう。


 いきなり弱みを見せんな。

 抱きしめたくなってしまう。


「いつも航太と一緒だったから、一人で帰ることってあんまりなかったから」


 ここで、航太かよ。


 浮かれそうになった気分が一気に萎んだ。



 でも、確かにそうだった。


 陽菜と航太は、登下校も一緒だったし、部活も同じで、航太は一日に一回は必ず陽菜の教室に行っていたから。

 俺もそれに便乗していたけどね。

 そんなんだから、仲がいいことは割と生徒たちに知られていて、二人は半ば公認の仲だった。

 陽菜は否定していたけれど。


 だから、航太が西野とつきあい始めて、いろいろなうわさが飛び交った。

 三角関係だとか、親友に彼氏を取られたとか、他にも聞くに堪えないような下世話なうわさもあった。

 まったく、人って無責任だよな。なんとでも言えるんだから。



「陽菜ちゃんと航太って、家は近所だって言ってたけど」


 前々から気になっていたことを口にした。


 毎日登下校が一緒って、よっぽど近くじゃなきゃできないよな。航太が陽菜を好きってこともあったんだろうけど。



「あれ、白河くん知らなかった? あっ、見えてきた。あそこだよ。わたしの家」


 彼女が指さしたのは、二十階ほどありそうな分譲マンション。


「それから、航太もね」


「!」



 なんだよ、それ。



 近所どころか、ほとんど同じ屋根の下じゃん。

 こんな近くにいたのか。




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