クラシック・ミニと一緒-03
峠道を下りきり、コンビニの駐車場へ。血液中にアドレナリンが走り回っているのを自覚した。黒色ミニも駐車場に入ってきた。
「こんにちは」
黒色ミニのドライバーが話しかけてきた。僕よりかなり年上の髭面のオジサンだ。
「こんにちは」
ニッコリ笑ってあげた。楽しい時間をありがとう。オジサンは笑いながらこう言った。
「楽しい時間のお礼に、コーヒーでもおごりますよ」
僕たちは店の奥のイートインコーナーにいた。
「同型車同士のタンデムなんて、始めてですからねー。いい経験になりましたよ」
タンデムってバイク用語じゃなかった? 意味は伝わってきたので、僕は微笑んだ。
「しかし、あれですな……」
オジサンは苦笑しつつ言葉をつむいだ。
「同型車なのに、あんなに差がつくとは。エンジンにかなり手を入れているんですか?」
「いいえ」
僕はコーヒーをすすった。
「エンジンはノーマルのままです」
「えっ?! ノーマル?」
あんぐり。
「脚を少しいじってますけどね」
「脚?」
オジサンは少し思案した。
「キャンパーですか?」
僕は小さくうなずいた。ミニのキャンパー角は純正では逆ハの字の“ポジィティブ”になっており、曲がりにくいセッティングに設定されている。僕のミニはハの字の“ネガティブ”に改造してあるのだ。
「ネガキャンにしてます」
「ネガキャンか。延長ロワアームと延長テンションロッド、それとラジアスアームの角度可変ブラケット……でしたよね?」
僕はうなずいた。
「角度って、何度に設定してます? ピロボールとか使ってるんですか?」
オジサンの質問は止まらない。僕もポンポン答えていく。
「ロワアームは1.5°の固定式。ピロボールじゃなくて、ブッシュ式の安物です」
「1.5°であれだけ曲がるんですね。3.0°とかだと、どうなるんだろ?」
「さあ……」
僕はノーマルの脚周りと現在の脚周りしか知らないんで、答えられませんよー。
「ところで、ラル大尉?」
「え? 僕のことですか?」
オジサンはニヤリと笑った。
「ええ。貴方のことです。地元では有名ですよ。小さなジオンの紋章をリアウインドーに貼った県外ナンバーの青いミニが、月に2回ぐらいこの峠道に出没するってね」
↑ジオン紋章
2010/7/13 イラストへのリンクを追加