クラシック・ミニと一緒-02
有料道路を下り、峠道に向かった。峠道手前のコンビニの駐車場から、黒色のクラシック・ミニが出てこようとしていた。黒色ミニ、屋根だけは白色になっている。クーパーモデルらしい。後ろに他のクルマがいなかったので、僕の前に入れてあげた。黒色ミニ、どうやらフルノーマルらしい。後ろから見るとタイヤの角度が逆ハの字になっている。2台のクラシック・ミニが並んで峠道に突入していく。地元ナンバーの黒色ミニは……遅かった。道には慣れているんだろうけど、ノーマルの脚じゃね……。
僕は軽くパッシングをした。黒色ミニは僕の意図を理解し、すぐに左側の車線に飛び込んだ。僕は黒色ミニをパスする。後ろに黒色ミニが戻ってきた。さ、行こうか。アクセルを踏み込み、加速を開始する。
「ついてこれるかな?」
コーナーの手前でアクセルを抜く。ブレーキペダルを瞬間的に蹴り飛ばし、フロントに荷重を掛ける。右手をハンドルのトップに持ち替え、一気にハンドルを切る。クルマがスウーっと向きを変えた。アクセルを開けるタイミングを待つ。
「うりゃっ!!」
コーナーのトップを超え、鼻先が出口を向いた。ハンドルを戻しながら、ジワジワと力をこめていた右足に一気に力を入れる。短いストレート。タコメーターの針が真上を示し、黄色のLEDが点灯した。クラッチを切りシフトアップし、3速で加速。フルブレーキしつつ、シフトダウン。
「ほっ!」
コーナーに立っているカーブ名の看板。僕はカーブの名前を叫びつつ、一気に駆け上がっていく。ちらっとバックミラーを覗くと、黒色ミニとの差が開いていた。黒色ミニのドライバーは必死についてこようとしていた。
「曲がってくれぇーって叫んでるな、あれ」
僕はニヤリと笑った。ノーマルミニの脚周りは、安全のために曲がりにくいセッティングになっている。コーナー手前で十分に減速し、フロント荷重をしっかり掛けないと曲がれないのだ。
「グリルとテールランプでMK-ⅠのクーパーS気取っても、脚がタコだとカッコワルイよー」
ミニ・MK-Ⅰ。1959年のデビュー時から、1967年までのモデルの呼称。最後期型とはグリルとテールランプの形状が異なる。ミニはボディーがデビュー当時からほとんど変わっていないので、パーツを変更するだけで、往年の姿をほぼ再現することが出来るのだ。
クーパーについては……説明すると長くなるが、一言で言えばメーカーチューンドモデルである。ランサーのエボリューションモデルや、シビック&インテグラのタイプRと同等と考えていただいて間違いは無い。
「くるりんぱっ!」
僕のミニは脚周りをいじっているので、クルクル曲がるのだ。いじった当初は曲がりすぎて怖いぐらいだったが、もう慣れた。僕は後ろのミニが壁に刺さらない程度のスピードに抑え、峠道を駆け上った。
峠道を登りきり、信号を右折。こんどは下りだ。下りは恐怖感が先に来るため、きっちりと減速する。僕が必要以上に減速しているので、黒色ミニはぴったりついてくる。
「無茶してると、ささるよー」
黒色ミニ、タックインにサイドブレーキまで使用しているらしい。よくあれだけ曲げるよなぁ。
↑ミニMK-Ⅰ(ガイア氏ミニのイメージ)
↑ミニMK-?(くらまミニのイメージ)
2010/7/13 イラストへのリンクを追加