クラシック・ミニと一緒-01
土曜日、6:00AM。お茶とお菓子を持ち、僕はアパートを出た。
「良い天気だなー」
天気は快晴だ。眩しい光が眼球を焼いた。眼を細めながらそのまま駐車場へ。青色のクラシック・ミニ-イギリス製-が止まっている。このクルマは給料の殆どをつぎ込んできた気の置けない相棒だ。今日は2週間に一度の遠出の日。目指すはいつもの峠道だ。
僕がこれから目指す峠道はちと特殊であるため、説明せねばなるまい。元々は片側一車線の対面通行だったのだが、多発する事故と渋滞により並行してもう一本道路が作られたのだ。つまり、峠道には珍しく、上りと下りそれぞれが片側二車線となっているのだ。対向車が来ないので、腕を磨くにはもってこいである。もう少し近ければ、毎晩走りに行くのになー。
荷物を左手に持ち、右手のキーホルダーからドアの鍵を選び出す。上下を確かめ、助手席の鍵穴へ。進行方向と反対側に90°回し、90°戻して鍵を抜く。このクルマ、ドアとエンジンの鍵が別なのだ。ちなみに、ガソリンタンクにも専用の鍵が必要である。
荷物を右手に持ち替え、ドアハンドルを握る。プッシュボタンを押しドアを開けた。助手席に荷物を放り込み、ドアを閉めた。
左フェンダーのアンテナを手で伸ばし、運転席へ。ドアを開け、車内に上半身をねじ込む。右手を伸ばしてボンネットリリースレバーを引いた。ボンネットの前に移動しボンネットを開ける。水とオイルとブレーキフールドの量をチェックし、ボンネットを閉めた。
再度助手席のドアを開け、車内に上半身をねじ込む。左側のグローブボックスを開け、中から小さな巾着袋を取り出す。巾着袋を開き、エアゲージを取り出す。ドアを閉め、タイヤのエア圧を確認。前:2.2、後ろ:2.0。問題なし。エアゲージを巾着に仕舞い、グローブボックスに入れた。
運転席のバケットシートに潜り込み、エンジンキーを鍵穴へ。一段階捻って赤色のチャージランプが点灯したのを確認し、更に二段階捻る。ブオン。インジェクション車故、始動は一発である。灯火類を全点灯し、一度車外にでた。玉切れは……無し。
「問題なしだね」
始業前点検など、普段はしない。でも今日は特別。久しぶりの遠出だから。途中で何かあったら僕が不愉快だし、相棒である青い彼も間違いなく不愉快な気持ちになるだろう。
身体の正面にある右側のグローブボックスのフタを開け、ビニール袋に包まれたFMトランスミッター付MP3プレーヤーを取り出す。プレーヤーの電源を入れ、ステアリングポストに後から取り付けたシガーライターソケットに差し込んだ。ETCのカードを車載器にセット。レース用4点式シートベルトで身体を固定し、走り出す。