後悔
『判決。地獄行き』
淡々と、告げられた。
私は、少し考えてから言った。
『あの、価値観が人に寄りすぎてる気がするんですけど』
『どういう意味だ』
『いや、その…人の法律で、人を裁くのは分かるんですけど』
『ここ、人の世界じゃないですよね』
『それに。最初から罪を犯さないと生きていけなかった人は、どうなるんですか』
『………』
『それも、同じように裁くんですか』
『…環境がどうであれ、罪は罪だ』
『どんな状況でも、同じ裁量で裁いているということですか?』
『というか、僕が地獄行きなのおかしいでしょ。仮病ぐらい誰でもしますって』
『えぇ…。閻魔様、流石にそれはかわいそうですよ…』
秘書だろうか。
閻魔様の隣に立ってた人が、喋った。
『私も昨日仮病だったし…』
『え?!仮病だったの?!』
『…だって、ずっと立ってるだけで、最近暇ですし』
『…秘書~。なんで今言うのぉ?めんどくさいことになったじゃん』
雰囲気が変わった。
『適当にあしらって、さっさと終わらせたかったのに~』
『それで地獄に行く人は、たまったもんじゃないですよ』
『地獄って言ってもね?ただちょっとだけ労働するだけなの。お願いだから地獄行ってくれない?』
地獄行ってくれない?なんて言葉初めて聞いた。
『君頭良さそうだしさ、数字の管理とかしてくんないかな』
『えぇ…』
いつの間にか面接みたいになってきたぞ。
どうなってんだ。
『残業はないですよ』
秘書さんが言った。
残業ってなに?給料とか出るってこと?
『あー、えっと、見学とか出来ます?』
いろんな質問が湧いたけど、口から出た言葉はこれだった。
なにか、期待していたのかもしれない。
『…案内頼んだ』
閻魔様が、目線を秘書さんの方へ向けながら言った。
『分かりました~』
ということで、案内されることになった。
んだけど、なんというか、めちゃくちゃ普通の仕事場って感じだった。
見た目が鬼っぽい人がいただけだった。
『あの、ここって本当に地獄なんですかね』
『あー…なんというかですね。もう一つの世界みたいなもんです』
『はい?』
『ここは万年人手不足でして。よさげな人材を死んだ人から見繕って、完全に消滅するまで働いてもらってるんです』
『…えっと、騙して働かせてるってことですか?』
気になったのは、そこだった。
『まぁ、場合によりますね。あなたが消滅するまではそうですね…二年ぐらいでしょうか』
二年。それで、僕は消えるらしい。
なんだか、それぐらいがちょうどいいと思った。
『通貨は同じようなものですし、街あるので、お金を使う場所もあります。休みについては…そうですね。希望によりますかね。なるべく叶えますけど』
『働かないと、どうなるんです?』
『今、消えます』
『え』
『そういうものなんですよ。まぁ、途中で辞めたかったらやめれますし、とりあえずやってみればいいんじゃないですかね』
『死んだあとまで働きたくないんですけど』
『まぁまぁ、とりあえずやってみましょうよ』
『あー…そう…ですか?』
『はい!てことで、戻りましょ!』
『どうだった』
閻魔様が聞く。
あれ?閻魔様なのか?
『とりあえず、やってみることにしました』
『おお!じゃあ、契約内容を決めよう。…秘書~』
『…はいはい』
契約内容を決めた。
トントン拍子だった。
『週休三日、残業なし、一日七時間労働。これでいいですか?』
『え。逆にいいんですか』
『はい。ここで納得されずに消えちゃう方が、私たちにとって損害なので』
『あー。確かに』
すごく、納得がいった。
『住む場所については、後で案内しますから』
『わかりました』
『それじゃ、契約成立ということで』
秘書さんが紙を出した。
『別の契約の仕方もあるんですけど、こっちのが分かりやすいと思うので』
名前を書けばいいみたいだ。
一応、読む。
そうした方がいい気がした。
『はい。ありがとうございます』
『これで正式に、こちらの住人ですね』
『…実感ないですね』
『そんなもんですよ』
『さて、今日はもう休みましょう。家、案内しますよ』
久しぶりに休める気がした。
『終わりましたー』
『お疲れ様』
『はい。最後の願いがホワイト企業で働きたい。だなんて、変な人ですね』
『彼らしいんじゃないかな。…願いってのは、創造力で決まる。彼の世界には、それが眩しく見えたんだよ』
『…もっと、こう、ありません?』
『私たちが、彼の決めたことをとやかく言っちゃいけないさ。君は、最後の願いと言われたら、なにがいい?』
『そうですね…私の最後の願いは、家族で過ごすことでしょうか』
『素敵だね。私は…たくさん感謝されたいかな』
地獄なんてあってたまるかってんだ。
私は、最後に何を願うかな。
…何も思い浮かばないかも。
最近喋ると全部倒置法になっちゃうんだけど。
助けて。




