9.初依頼
「ではアレン様、初めての依頼としてこちらはいかがでしょうか」
マリーナが差し出した依頼票には、こう書かれていた。
――依頼内容:ゴブリン討伐(推定生息数3~5匹)
――依頼場所:王都南方の森・小規模集落周辺
――報酬:銅貨12枚/匹
俺は依頼票を受け取り、軽く頷いた。
依頼を受けた俺は、王都の門を出て依頼票に書かれていたゴブリンの生息地に向かった。
俺は木々の間を歩きながら気配を探る。
(ゴブリン程度なら問題ない……が、まずは慎重に行くか)
やがて茂みの向こうに、緑色の小鬼の姿を見つけた。三匹。
粗末な棍棒を手にし、俺の存在に気づいてギャアギャアと喚きながら飛びかかってくる。
「――ファイアボール」
俺が唱えると、掌に浮かんだ火球が唸りを上げて飛び、先頭の一匹を吹き飛ばした。
続けざまに身体強化を纏い、剣を抜いて二匹を斬り伏せる。
(ふむ……弱いな。だが匂いが強い)
ゴブリン特有の腐臭が漂う。巣が近い証拠だ。
(……巣ごと潰しておくべきだな)
気配を探りながら森を進むと、岩陰の洞窟に辿り着いた。内部からは複数の声が響いている。
俺は深く息を吸い込み、鑑定を発動する。
⸻
【ゴブリン・ウォーリア】
魔力量:14/14
攻撃力:22
防御力:16
俊敏:15
【ゴブリン・アーチャー】
魔力量:11/11
攻撃力:17
防御力:10
俊敏:18
【ゴブリン・チーフ】
魔力量:33/33
攻撃力:41
防御力:28
俊敏:25
⸻
(……なるほど、上位種が混じっているか。これを残しておくと村に被害が出るな)
俺は一歩踏み出し、洞窟に飛び込んだ。
「――ライト」
眩い光球が宙を漂い、暗い洞窟を照らし出す。
怯んだゴブリンたちの目が眩んだ瞬間、俺は動いた。
「ファイアボール!」
火球がアーチャーを焼き尽くす。
すぐさま身体強化を極限まで高め、チーフへ突撃。
ガキィンッ!
チーフの手斧を剣で弾き、懐に潜り込む。
「はあっ!」
全力の突きが胸を貫き、チーフは断末魔を上げて崩れ落ちた。
残るウォーリアも、俺の一撃に耐えることなく斬り倒される。
洞窟の中は静寂に包まれた。
(これで全滅だな……素材も状態がいい。納品には十分だ)
俺は創造魔法で得た収納スキルを使う。
「――収納」
次の瞬間、死体や素材が光に包まれ、次々と俺のストレージへと収まっていく。
(腐敗も進まない、血も滴らない……これならそのまま納品できる……便利!!)
⸻
◆
冒険者ギルド。
受付で待つマリーナさんに、俺は素材を差し出した。
「こ、これ……討伐したゴブリンです。 ぜんぶ、ちゃんと持ってきました!」
俺の言葉に、マリーナさんの目が大きく見開かれる。
「えっ……上位種まで……? しかも、素材の状態がとても良いですね……!」
「えへへ……収納魔法、使えますから! それで、綺麗に持ってこれたんです」
少し胸を張ると、マリーナさんは感心したように俺を見つめる。
「まさか初めての依頼で、ここまでの成果を出すとは……。アレンくん、すごいですよ」
「そんなことにゃいです! ……ちゃんと勉強もしてるから……!」
(あ、母親以外の美人に褒められてちょっと噛んだ……! うぅ、子供っぽく思われてないかな……?)
顔を赤くしながら俯く俺に、マリーナさんは優しく笑みを向けた。
「これからが楽しみですね。必ず大冒険者になれますよ」
その瞬間、視界に文字が浮かぶ。
【創造ポイント:+1】
(……っ! マリーナさんの言葉で、また増えた……!)
俺は小さく息をのむと、笑顔を作り直した。
「ありがとうございます! もっとがんばります!」
俺は拳をぎゅっと握った。
今回は、マリーナさんがどさくさに紛れてアレン様からアレンくんに呼び方をかえるエピソードでした!




