2.閻魔大王?
――真っ暗な空間に、俺はいた。
(……死んだんだ。あの猫を助けようとして……)
自分の身体がトラックに吹き飛ばされる感触を思い出す。
そこへ、場違いに明るい声が響いた。
「はぁい☆ 私は閻魔大王でーす!」
目の前に現れたのは、派手な衣装を着た女。胸元は大きく開き、豊満な谷間が目に飛び込んでくる。
「……閻魔大王?」
「そうそう! おっさん顔の審判者期待した? 残念〜、私がその最新版モデルでーす♪」
自称閻魔大王は胸元を強調するように腰に手を当てて笑った。
その拍子に、豊かな谷間が揺れる。
(……でか……)
つい目を奪われてしまった。
「うわ、見た。ガン見した。死んで一番にやることが谷間見るってどうなの?」
「ち、ちが……!」
「はいはい、言い訳は聞きませーん☆ 弱者男性の性欲、わかりやすっ」
俺は真っ赤になってそっぽを向いた。
「さて本題。かわいいねこちゃんを助けて死んだあんたには、特別に次の人生を選ばせてあげまーす」
「次の人生……?」
「うん! ①全部の記憶をリセットして新しい人生。②今までの記憶を持ったまま転生。さぁどっち?」
(全部忘れられたら楽かもしれない。でも……悔しさも、俺の中の知識も、消したくない)
「……記憶を持ったまま転生する」
「やっぱそっち選ぶと思った☆」
閻魔大王はぱんっと手を叩き、光のパネルを無数に浮かび上がらせた。
「次のサービスはコレ! ユニークスキル、二つだけ選べまーす! 他の人は絶対持てない、チート確定のレアもんよ♪」
スキル名が次々と流れていく。剣の極意、治癒の手、神速の身体……。
俺は迷った。どれも魅力的だ。
だが――。
「……【鑑定】と【創造魔法】にする」
閻魔大王は一瞬目を丸くした後、腹を抱えて笑った。
「っぶははっ! 出た〜! 鑑定&創造! テンプレ主人公のド定番セット! やっば、ベタ中のベタ選んじゃったよこの人!」
「なっ……! 俺は真剣に考えたんだ!」
「はいはい、“真剣に考えた結果テンプレ”。ある意味才能だわ〜」
なろうの異世界転生作品を読んで異世界転生のシミュレーションをすることが唯一の趣味だった俺の選択がテンプレだと言われ、ちょっと傷ついた。
そんなことお構いなしに、閻魔大王はにやりと笑い、指を鳴らした。
「じゃ、あんたは鑑定チートと創造チート持ちで転生確定。どうせハーレムでも作って、俺TUEEEしたいんでしょ?」
「……うるさい」
「ふふん。ま、楽しんできなよ。世界の秩序を担ってもらうんだから」
「世界の秩序?」
「あーそれはこっちの話たがか気にしないで! じゃ、いってらっしゃーい!」
閻魔大王がパチンと指を鳴らすと、光が俺を包み込む。
「次は谷間を見る以外のこともできる男になれよ〜♪」
最後まで人をバカにした笑顔を見せる閻魔大王の姿がどんどん薄くなっていき、俺は意識を手放した。




