年下の旦那様
「あれは本当に根も葉もない噂だったんだ。」
「まあそうだったんですね。」
「俺はローズ以外と結婚なんて考えたこともない!」
「もちろん信じていますよ。」
「でも俺とリリーをくっつけようとしていただろッ!」
「あの時はお付き合いなさっていると思っていましたが、今は違います。エリック様の愛を疑ってはおりません。」
まだ何か言おうと口を開けたけれど息を呑むように口を閉じるとムスッとして横を向いた。
本当に可愛らしい人ね。
私の口元が緩みそうになるけれどグッと堪える。
そっぽ向いたところで私を膝にのせている時点で台無しだというのに。
「クッキーはいりませんか。」
「いらない。」
どんなにそっぽ向いていても返事は必ずしてくれる。
これも昔から変わらない。
今日もいつものようにガゼボで昼のお茶を楽しんでいる。
暖かい日も増え庭に出るのが気持ちがいい。
記憶喪失などではないとわかった日から数日が経った。
嘘から始まった膝の上のお茶会だけれども当たり前のように続いていて、エリック様も当然のようにクッキーは自分で食べない。
だから私が餌付けのように口にクッキーを放り込むのが当たり前の風景になっている。
そうして今日、エリック様は意を決したように婚約時代の誤解を解きだした。
本当は誕生日の贈り物は全部俺が選んでた。
ローズがくれた物は全部金庫に大事に保管している。
本当は嬉しかったのに喜ぶのは格好悪いと思っていた。
つらつらと、ともすれば私が覚えてもいないことまで話し出す。
このまま婚約時代の事は結婚前のことと割り切ってもらってよかったのだけれど、エリック様はそれでは納得がいかなかったらしい。
実直な彼らしいのだけれども、どれも怒るほどの事ではない。
こんなに心の中に罪悪感を溜めていたのか驚くほどだった。
私は何も思っておらずわだかまりもないというのが正直なところ……なのだけれど……。
リリー嬢の話に及んだ途端、私が何を言っても不正解になるらしくどう言えば正解なのかわからないなぞなぞが続いている。
学園時代は高位貴族の最後の自由時間。
同年代の友達や恋もこの時にしか得られないかけがえのないものだ。
本当にそう思っているというのに……
困った人ねえ




