エリックの苦悩
公爵家に戻ると侍従が話しかけようとするのを遮って、本邸のローズの部屋に直行した。
今思えば侍従は姉上が来ていると言おうとしたのだろう。
そんな事より俺はすべてを話すことで頭がいっぱいだった。
部屋をノックしても人の気配がしない。
確かに先に帰ったはずだがどこで追い越したのか。
この部屋に来る前に図書室にでも寄っているのか?そう思いながら中に入り寝室のベッドに座った。
ローズがこの部屋に移動してからは2人の部屋のように使っていた。
ずっとここで本を読んだりたわいのない話をしたり2人の時間を過ごしていた。
いい思い出しかないこの部屋でなんて切り出そうか……と考えていると、このままでまいいんじゃないかという甘い考えが何度も襲う。
(ああ、早く話さないと決心が揺らぎそうだ。)
そんな事を考えている時だった。
続きの部屋がバタバタと騒々しい。
(ローズが帰ってきた?)
そんな事を考えていると聞き慣れた声が入ってきた。
(姉上?)
来てたのか?
なんてタイミングの悪い……
しかも今からは出づらい。
寝室の扉から一旦外に出るか……
そう思い動き出したが、少し漏れ聞こえる声に違和感を感じ動きを止めてしまう。
ローズが怪我をしてからの事の経緯を姉上に説明している?
が……どうもおかしい……
ゆっくりと扉に近付いていく。
「簡単よ。私は記憶など飛んでいません。23歳のローズのままです。と言えば解決よ!」
なんだって?
体に衝撃が走った。
思わず扉に手をついてしまう。
ギイと扉が開く。
2人の驚いた顔。
前には23歳のローズ。
そう思った瞬間羞恥で体が熱くなる。
「騙すとはいい趣味だな!みっともなくはしゃいでる俺の姿はお気に召したかよ!」
自分の嘘は棚に上げて、悪態をつくつもりなどなかったのに口が勝手に動き出す。
ローズの弟よりも年下の男の子。
あっという間に俺は前の自分に戻ってしまっていた。




