プロローグ
すきとおるような青空に祝福の鐘が鳴り響く。
ラムスター公爵家嫡男エリック
グリーンバート侯爵家長女ローズ
由緒正しい家柄の2人の結婚式はつつがなく終了し
ここに一組の夫婦が新しく誕生した。
誓いのキスを花嫁のベールでうまく隠して、フリで済ませたことは誰も気づく事のないまま……
「お前みたいな年増に迫られても気持ち悪いだけなんだよ!」
そう言って初夜にベッドで思い切り突き飛ばされた。
突き飛ばしたのは今日夫となったばかりのエリックである。
ふらついた体をかろうじて手をつき支える。
ちなみにベッドに座っていただけで迫ってはいない。
「吐き気がする!」
そう言いながら自室の扉を音を立てて開けて出ていった。
止める暇などなかった。
予測していたとはいえ……
さてどうしましょうか。
彼は勢いよく出て行ってしまった。
これでは私たちが初夜を共にしなかったのは明日には公爵家中のものが知ることとなるだろう。
「明日なったら公爵夫妻にお話ししたほうがいいわね」
支えていた手をゆるめるとバフンとベッドに体が沈む。
想定内だったとはいえ気が重くなる。
年増か……仕方がない……。
なぜなら彼は私よりも5才年下。
なおかつ付き合いの長い年下の恋人がいるのだから。
まんじりともせず夜が明ける。
公爵夫妻になんて言おうかしら。
こういう可能性も考えてはいたのだけど、本当にそうなるとはね。
本来ならこんな事は説明なんてしなくていいのだろうけれど……
エリック様は勢いよく部屋の外に出ていってしまった。
せめて夫婦の寝室から続きの自室に戻ってくれていたら、なんとか誤魔化せただろう。
彼も次期公爵、体裁は守るだろうと思っていた。
まあ、仕方がない。
夫妻は今日、本邸にいるだろう。
初夜が行われなかったことは知った上で少し揉めたくらいにしか思っていないかもしれない。
とりあえず公爵夫妻に面談の約束の取り付けるため使いをやる。
(気が重いわねえ……)
大きなため息がでた。