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人と精霊と

 この世界において食糧は貴重な物だ。いかに無駄なく食糧を必要分分配するかも冒険者には必須の技である。

 ナダルは荷物を確認し、笑顔で言い放った。


「うん、ユイレの分を入れたら足りない」


(人間は食べなきゃ生きていけないのか、不便だね)


 モンスターの活動エネルギーは魔力。

 魔法発動、運動、思考によって魔力は消費されるが、体内で常に生産され続けるためモンスターが寿命や飢えて死ぬことは無い。と200年ほど前に解明された。

 この事からモンスターが他生物を襲う理由はただ殺害するためだけだと言われている。


「私、我慢できる。ご飯は3日に一回でもいい」


「まだ小さいんだしちゃんと食べなきゃダメだぞ、とりあえず1食を2つに分けるか、あとはモンスターでも狩って足しにしよう」


 薪をくべ鍋を吊るし、料理の支度をする。あとは火だけだ。


「アレスさん、火お願い・・・あ、そうか」


 火起こしはアレスの火魔法で起こしていたため、今のナダルに火起こしの方法は無い。

 火打石でもあれば良かったのだが、そんな物は持っていなかった。


「シルフ、火魔法は使え・・・ないよな、うん」


(ぼかぁ火精霊じゃないよ。ま、火起こしならできるよ)


「それは本当か?教えてくれ」


(熱風を集中砲火すれば熱風の着火エネルギーで薪が酸化反応を起こしてー)


「あー?さ、酸化反応?とりあえず熱風だな」


 シルフに指示されながら火を起こし、いよいよ料理に取り掛かる。

 今日はトマトスープだ。


「人参、玉ねぎ、ニンニクを小さく切り分け鍋に入れる」


 ユイレが興味津々で見つめているのを見ながら続ける。

 ユイレの顔は初めて料理姿を見ているようだった。


「オリーブオイルで炒めて、水、塩を投入。煮るぞ〜」


「ねえナダル。知ってる?オリーブオイルができたのってね、魔王が産まれるもっと前なんだって」


「そうなのか。なんかここ数十年でできたモンみたいなイメージあったけどだいぶ昔からあったんだな」


 ユイレのどこから仕入れたのか分からない知識を聞いた所で、トマトを切り刻む。

 10分ほど煮詰めた後、そのトマトを投入しさらに煮込み続ける。トマトがやや溶けてスープが赤くなってきた所で完成だ。


「予備の皿があって良かったぜ。さ、食べよう」


「いただきます!」


 ナダルがユイレの分をよそり、自分の分をよそるとシルフがボクにも寄越せと騒ぎ出した。

 モンスターに食事はいらないだろと反論すると、要求する血の量を増やすなどという強硬手段に出始めたため、大人しく譲る事にした。


「って待てよ。シルフお前体あるのか、てか精霊の姿なんて見た事ないぞ」


「ナダルの精霊さん、よく喋るね」


 ユイレにシルフの声は聞こえていない。精霊と喋っているという知識はあるが、精霊は見えないためユイレにはナダルは1人で喋っているように見えるのだ。


「ああ、めっちゃうるさいやつだな。で、シルフはどうやって飯食うんだ?」


(むむむむむむむ!!えいやっ!)


 掛け声と共に、2人の目の前に光の玉が発生し、だんだんと人の形を帯びていく。やがて光の玉が弾け飛ぶと、白い髪をした10cmほどの女の子が出撃し、その場にふよふよと浮遊していた。

 背中にはよく分からない模様の羽が生えており、服装は見た事ない布のような物をふんわりと纏っていた。


「おま、女だったのかよ、ボクボク言ってるし声から判断つかないから男かと思ってたわ」


「いや?見た目は人間の女の子だけど性別は無いよ。精霊は有性生殖しないし〜」


 シルフの声が頭に直接響かず耳から聞こえてくる。テレパシーはやめたようだった。


「これがナダルの精霊さん?かわいい!」


「照れるなぁ。ボクはシルフ。キミの事はもう知ってるよ。よろしくねユイレ」


 シルフは自己紹介を済ませると、ナダルの膝の上に座り込み、再びトマトスープを寄越せと要求してくる。

 スプーンですくいとり、シルフに近づけると、湯気の立つスープを一気に飲み干した。


「あぢ!あっあ・・・おいしい!やっぱ嗜好品は楽しまなくちゃねぇ」


「飯は嗜好品か、そういや、血はなにに使ってるんだ?まさか嗜好品か?」


「大当たり〜。人間の血は精霊を楽しませる最高のドリンク!どんどん魔法を使ってジャンジャン精霊に捧げちゃってよ!あ、ナダルの血はボクが認めるレベル最高級品だからね、大切にしてね」


 なんだかグロい話だなあと思いながら、ナダルも食事を開始する。

 知り合ったばかりの者たちとの食餌はなんだか新鮮なものだった。



 片付けや身支度を済ませた所で、ナダル達に1つ問題が浮かんでくる。

 野営において夜の警備は身を守る大切な手段だ、ナダルが勇者パーティにいた時は単独戦闘に向いていないリアンを除いた3人で回していたが、今戦えるのはナダルのみ、1人で警備は厳しい物がある。


「しょーがないなぁ、ボクは寝る必要ないし警備しとくよ。ナダルに死なれたら困るしね」


「なんていうか、食欲も睡眠欲も性欲も無いともはや便利屋だな。いや、飯は食ったのか」


「モンスターの三大欲求は強化!殺戮!殲滅!だからね。まあ精霊と1部モンスター以外は睡眠欲と性欲もある程度欲求としてあるけど」


 シルフの物騒な話を聞きながら寝袋に入る。

 ナダルにしてみれば久しぶりのゆっくりした睡眠である。リゼリアにボコボコにされた後にも寝ていたが、あんなものノーカンだ。

 久しぶりにゆっくり眠れるのはナダルだけではなく、ユイレも同じだ。2人はゆっくり眠れる幸せを噛み締めながら、明日を思い描き目を閉じた。

ご読了ありがとうございます。

もし宜しければ、評価や感想などいただければ励みになります。

今後ともよろしくお願いします。

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