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勇者パーティー

毒霧に対しリゼリアが風魔法で対処するがそれでもやや押され気味だ。その時リルが完治し、戦闘に加わった。


「ナダル!今治してあげるからね!」


「助かる・・・」


リアンとユイレの回復魔法を受けナダルも完治する。あまりの回復速度にリアンは驚いていた。


「ユイレちゃん、だっけ?すごい力ね」


「ありがとうございます。これは産まれた時から使えてたんです」


二人はサナの治癒にとりかかる。やはりリアンの魔法の効き具合が悪いようで、リルは何か考えていた。


「この毒、魔法耐性があるのか?いや、それではリゼリアやユイレの魔法が通じる理由が無いか、うぅーむ・・・」


考えても分からない。その間にも毒霧は一行に近づいてくる。


「ありがとう、恩に着るよ。さあ、後は僕達に任せて君は安全な所に隠れていてくれ」


「わ、私も・・・」


「ユイレ、大丈夫だ。また俺が何とかしてやるから。アレスさんの言う通り隠れてな」


ユイレは納得いかないような顔を浮かべながら、瓦礫の裏に隠れた。


「さて、毒霧をなんとかしなきゃな・・・」


「風清弊絶!もう限界よ!」


「お待たせしました!着火ぁ!」


どこかからラザリエの声が響く。その瞬間、目の前の床が崩壊し巨大な鉄の塊が勢いよく飛び出した。鉄の塊は周囲を吹き飛ばしながらアンフェスバエナに直撃し、大ダメージを与えた。


「ラザリエ式巨大砲です!さあ!今のうちに!」


弾によって毒霧が晴れる。全員がその一瞬でアンフェスバエナを仕留めるため全力を振り絞った。

アレスの斬撃が、サナの打撃が、ナダルの爆撃が、リルの挟撃が、ラザリエの銃撃がアンフェスバエナを襲う。リアンとリゼリアによって二重に強化が成され、攻撃力はさらに上昇していた。


「ドレインライフゥ!」


リルがついにアンフェスバエナの片首を切断する。アンフェスバエナはとてつもない咆哮を上げ、毒霧を吐き出した。


「させません!巨大砲、発射!」


「リアンさん前衛に防御を!補助します!疾風怒濤!」


「防壁!」


巨大砲が再びアンフェスバエナを襲い毒霧が不発に終わる。ハーバーは怒り狂い、アンフェスバエナのリミッターを外してしまった。


「私にも操れるよう制限をしていたが、もういらぬ!!アンフェスバエナよ!魔王城ごと全て破壊せよ!」


「ギャアアアアアア!!」


アンフェスバエナの首が再生し、毒霧が再び吹き出される。量も濃度も莫大に増え、その場にいる全員が毒に犯された。


「ふははははは!!調子に乗るからそうなるのだ!さあ!全てだ!全て破壊せよ!」


「ぐぁぁ・・・!クソぉ・・・」


ハーバーは既に半分正気を失い、アンフェスバエナの凶暴性に犯されていた。このままではリルの想定していたように別世界線に侵略していくだろう。


(不味い、死ぬ・・・意識が・・・)


「ナダル!立って!」


ユイレが毒霧の中を走ってナダルの元に近づく。両手がナダルに触れた瞬間、ナダルは何事も無かったかのように軽くなった。毒が完治したのだ。


「か、回復!はやく皆も治さなきゃ・・・」


ナダル、ユイレ、リゼリアだけがその場に立っていた。リルは苦痛の中、その三人を見てついに魔法の法則を見つける。


(効きにくい魔法はこちら世界由来の魔法!あの二人が使うのはこの世界由来の魔法か!)


「調子に乗るなよ愚民共がぁ!」


「調子に乗ってるのはあんたでしょうがぁ!」


そう叫んだのはリゼリアでもナダルでもない、ユイレだった。その場が一瞬静かになる、皆目を丸くしユイレを見ていた。ユイレは半泣きになりながら言葉を続ける。


「ナダル達がここまでどれだけ頑張ってきたたと思ってるのよ!ネルロハの人達を助けて!四天王も皆倒して!地道に頑張って最後は平和的に解決できる手段を見つけたじゃないの!なのに、なのに全部ぽっと出のあんたが壊そうとしてる!その上で調子に乗るななんて勘違いも甚だしいわ!さっさと王城にでも引っ込んでなさいよ!」


「なんだとぉ・・・!小娘が、言わせておけば!」


ハーバーはアンフェスバエナを操りユイレに手を上げる。しかしその一撃はナダルとリゼリアに妨害された。


「余をどこまで苛立たせれば気が済むのだ貴様らはあああ!!」


「ナダル!逢魔の首飾りを使うのじゃ!」


リルが力を振り絞って叫ぶ。訳は分からないがナダルはリゼリアに首飾りを貰い首に掛ける。重さを感じないソレは、首に掛けた瞬間何か力が体に溢れてくるように感じた。


「攻撃来る!全員移動させろ!」


「転移!」


「置き土産だ!疾風怒濤!」


転移の瞬間に疾風怒濤を放つ。その風は今までと違い、しっかり毒霧を払いアンフェスバエナに対して明確なダメージを与えた。


「何ィ!?ナゼだ!何故魔法が通じル!?」


「クックック・・・まさか余の命を奪った道具に救われるとはのう・・・」


逢魔の首飾りの装備で魔法の性質がリル世界の魔法からナダル世界の魔法に変化し、アンフェスバエナの魔法耐性を貫通したのだ。それをリルが伝えると、ナダルは微笑してアンフェスバエナに向き直った。


「ありがとな。攻撃が通じるなら俺は負けねえ」


ナダルは自分とユイレにできる限りのバフをかけ魔法威力と回復量を引き上げた。一撃で決着をつけるため、極限まで魔法に精神を集中させる。


「リゼリア、1分欲しい。稼げるか」


「いいわ、やってやるわよ。これオマケね」


リゼリアはナダルにバフをかけ前線へ突撃して行った。リゼリアは時間稼ぎではなく、相手を殺すつもりで戦闘する。アンフェスバエナも負けじと応戦した。

ナダルの周囲に風が吹き水が発生し火が上がり岩が浮遊する。通常魔法とは違う神々しいエネルギーがその場に満ち溢れた


「ぼ・・・僕達も時間を稼ごう・・・大丈夫だ、まだ、動ける」


アレスとサナは毒に犯されながらも立ち上がる。しかし凄まじい苦痛を強靭すぎる精神力で耐えているだけなためあまり長時間持つものではない。


「無茶しないでください!サナもだ!」


「ふっ・・・平和のためなら、このくらい、乗り越えてみせるさ!」


「同意です・・・心頭滅却すれば火もまた涼し・・・行きます!」


ナダルはユイレに止められ魔法に再び集中した。背後から立ち上がったリアンが肩に触れる。


「私も・・・ちょっとでも役に立たなきゃね・・・魔法威力、限界以上に引き上げてあげるから・・・」


ナダルにどんどんと力が入ってくる。ここでついにナダルの魔法は完成し高密度のエネルギーの塊が生成される。


「決めてやるのじゃ!ドレインライフゥ!」


「最後の1発です・・・発射!」


弾とドレインライフの直撃によりアンフェスバエナはバランスを崩す。ナダルはユイレに背中を押されながら飛び上がり、アンフェスバエナの真上から魔法を叩き込んだ。


「森羅万象ォ!」


「ギャアアアアアア!!!!」


アンフェスバエナの体の内側、数多の魔法が体内で入り乱れ、アンフェスバエナは爆発四散した。破裂した身体の破片は花火のように光り消滅していく。

消える前の肉の塊に紛れハーバーが降ってくる。落下したハーバーをリゼリアが抱き上げた。


「司教様!しっかりしてください!」


「この声は・・・リゼリア、か?」


民を守るために魔法やモンスターを研究していたハーバーにとってアンフェスバエナの発見は防衛手段の確立と同時に破滅への一歩であった。ボロボロになったハーバーの身体は徐々に力を失っていく


「すまなかった・・・勇者殿達に手を上げ、あまつさえお前にまで手を出すとは・・・」


「まだ、まだやり直せます!司教様なら大丈夫です!怪我も回復魔法を使えば・・・」


回復させようとしたリゼリアをハーバーが止める。ハーバーはリゼリアを止めながら語り始めた。


「よい、余にはもう、この世界に生きる権利は無いのだ。リゼリアよ、お前には民から支持もあり、余の政治学の全ても教えた。マーネイトを、民を導いてくれるだろう・・・こんな形ですまぬが、お前を、新たな王に任命する・・・。マーネイトを、余が愛したあの土地を・・・頼んだぞ」


ハーバーはそのまま事切れる。リゼリアはナダル達に背中を向けたまま、静かに座り込んでいた。

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