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強血

魔王城内は一部屋しかなく、広い部屋を薄紫色のガラスを通過した光で満ち、ある一種の美しさすら醸し出していた。

最奥、空の玉座がそこにはあり千年間君臨する者がいなかった事を知らしめた。


「魔王はどこだ?」


玉座の隅々まで調べあげるがどこにも姿が無い。そこで突っ立っていたリルが玉座に腰掛ける。足を組んで座るリルは部屋の雰囲気も合間り、どこか神々しさを放っていた。


「どうじゃ、似合うじゃろ」


「すごい、ぴったり」


「お前なあ、そこ多分魔王が座る場所だぞ」


ナダルが呆れ顔で地面に腰掛ける。何も無い魔王城の中、一刻一刻と時が流れた。

来たな、そう呟いたのはリルだ。威厳を感じさせるその一言の後、魔王城の扉が開いた。


「ここは神秘的だな、もっと禍々しいと思っていたが」


「雰囲気に騙されちゃダメね、気を引き締めて行きましょ」


「これが最後の一仕事ね、さっさとやり遂げるわよ」


「皆さん、奥に誰かいます。戦闘態勢を・・・あ??」


魔王城があるなら攻略しにくる者は勿論いるだろう。勇者パーティーがついに最終戦の地まで辿り着いたのだ。

勇者パーティーの動きが固まる、当たり前だ、かつての仲間がそこにいたのだから。


「ナダル様ぁ!?」


「サナぁ!!元気だったか!?」


サナが脇目も振らず走り出す。向かいから走ってくるナダルに向けて轟速で飛び膝蹴りを打ち込んだ。


「おごぉ!?」


そのまま後ろに吹き飛んだナダルに馬乗りになり、泣きながら頬を連続ビンタし始めた。


「バカバカバカバカ!元気だったかじゃないですよ!!今までどこ行ってたんですかぁ!」


「待て待て待て待て、痛いからやめろ!」


他の勇者パーティの全員も集まり、今まで何処に行っていたのかを語る。話を聞きながら自慢げにウンウンと頷いているリアンをアレスが呆れ顔で見ていた。

ナダルに抱きついたまま降りようとしないサナを降ろした時、リルが唐突に話し出した。


「よく来たのう勇者よ。ここは魔王城、そして余こそがお主ら人間が魔王と呼び恐れる存在、リルじゃ」


「魔王・・・?ナダル、君の仲間じゃないのか?」


「そうです。リル、変な事言うのはやめろよ」


「・・・リントヴルム、それが余の真名じゃ」


リルに真っ黒い尾や角が生え、トカゲのような目つきに変化する。その瞬間、ナダル達は今までリルに対して抱いていなかったモンスターの気配を感じ取った。


「リル、お前・・・!」


「騙していて悪かったのう。じゃが、余にお主らを攻撃する気は無い」


リルの変化が元に戻り再び人の姿となる。ナダルらの警戒態勢を見て微笑しながら玉座を降りた。


「我々もんすたあは異世界の生き物、強さを求めここまで進化してきたのじゃ。じゃが、我々は進化の限界に辿り着いてしまった、これ以上強くなる手段は無いと考えていたが・・・」


リルがモンスター形態と人形態を交互に変化させて歩きながらナダルに近づく、その場にいる人間全員が蛇に睨まれた蛙のように動くことができなかった。


「じゃが一つの世界線に生まれるか生まれないか、それほどの低確率で生まれる強血と呼ばれる血が我々の限界を突破できると研究の末判明した・・・それを求めて我々もんすたあは世界間を転移し、強血持ちの見つからなかった世界を滅ぼした」


「ふざけないでっ!」


突如として誰かが叫んだ。全員がその声の主に視線を向けた、リゼリアだ。


「そんな、そんな自分達のためだけの侵略行為で何億人犠牲になったと思ってるの。いいえ、あんた達モンスターが滅ぼした世界は四千を超えてるの、何億人なんてレベルじゃないわ」


「お主、その知識は・・・なるほど、転生者じゃな」


アレスが二人に割って入る。


「魔王、お前はこの世界を滅ぼす気か?」


「いいや、強血が見つからなかった世界を滅ぼすと言ったじゃろ。ナダル、お主がその強血じゃ」


「俺が・・・?」


リルが完全に人間形態になりナダルの手を取る。リルの今までの言動からは考えられない懇願をした。


「お願いじゃ!お主の血さえあれば我々はこの世界から姿を消す、じゃから、血を分けてくれ!」


「そんなの信じれる訳ないでしょ!?どうせ力の証明のためにこの世界も他の世界も滅ぼすに決まってるわ!」


「そんな事はしない、元の世界でまたゆっくり進化する」


言い争うリゼリアとリル。アレスはナダルの正面から肩を掴み、真剣に目を見つめて言った。


「魔王を、彼女を一番知っているのはナダルだ。僕達は君の判断に従おう、彼女の発言を信じるか信じないか、ナダル、君が決めてくれ」


「お、俺は・・・」


リアンとサナの方を見る。二人は頷いてナダルを見ていた。ユイレとラザリエも同様に、ナダルの判断を待っていた。


「俺は・・・リルを、信じたいです」


「よく、決めてくれた。リルさん、僕達は貴方を信じる事にした」


「我々もんすたあを信じてくれるか。本当に、本当に感謝する」


だがこの結果に満足しない者もいる。リルと言い争いをしていたリゼリアは、声を荒げて叫んだ。


「そんなの認められる訳ない・・・!アタシは神様に、アンタらモンスターを絶滅させるよう神託を授かってるの、アンタらを滅ぼす事がアタシの使命なのよ!」


長杖を取り出しナダルに向ける。戦闘意思の現れだ。


「ナダル、アンタに決闘を申し込む。アンタが勝ったらアタシは大人しく受け入れる。でも、アタシが勝ったら魔王は殺す」


「わかった。受けて立つ」


ナダルは剣を抜くと、地面に投げ捨てた。魔剣士としてではなく魔法使いとしてリゼリアに勝って始めて真の勝利と言えるだろう。ナダルはリアンに杖を譲り受け、二人は戦闘態勢を整えた。

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