メイドと幼女、二人旅
「そうだリル、そっち側の様子はどうだった?」
「ぬ?海底神殿か?そうじゃのお」
二手に分断した後、二人が遭遇したのは焼け焦げたモンスターの死体だった。普通ならば火属性魔法の使い手がやったのだろうと考えられるるが、水中における火属性魔法は酸素が無い事から即消化されてしまうため焼け焦げた死体は異常と言える。
「正直アタシでも水中での魔法行使は不可能だね」
そんな通常ではありえない魔法を使った者がいる可能性がある、という事にやや怯えながら二人がさらに進むと怯えきったマーメイドに遭遇した。そのマーメイドは二人を見るやビクッと怯え、恐怖を排除しようと襲いかかってきた。
「む・・・」
銃を構えたラザリエを制止しリルは突撃してきたマーメイドの首根っこを掴む。そのままヘッドロックを仕掛けて拘束すると思い切り締め上げた。
「ここで何があった。貴様、答えれるだろ」
「がっぁ!こ、答えるから離せ!」
リルがやや緩めてマーメイドは話し始める。ここに来たのは二人の人間のようだ。
「紫色の人間と金色の人間だ、両方女で・・・そうだ、金色の方は普通だった」
マーメイドは紫色の人間を思い出して顔色が悪くなり、明らかに怯えた表情で息が荒くなっていた。
「む、紫色のはダメだ・・・人間だけど・・人間じゃない」
「ふむ、そこの焼死体はその紫色のせいか」
「人間だけど人間ではないとは一体?」
ラザリエの言葉にマーメイドは恐怖が極度に達したのか叫んで暴れ始める。リルがヘッドロックを強めて落ち着くまで待ち、話せるレベルまで落ち着いた。
「紫色のは魔法使いで、ひ、火属性魔法を・・・一人で風属性と合成してた・・・」
「魔法合成を一人で?となると考えうるはナダルと同じ四大精霊と契約してるか首飾りの持ち主か・・・あるいは・・・いや、しかし・・・」
「話しただろ!はやく解放しろ!」
「情報提供感謝します」
暴れるマーメイドにラザリエが感謝して立ち去ろうとする。しかしリルは解放せず締め付けを強めた。
「うむ。用済みじゃ、死ね」
ゴキっと首の骨が折れる音がする。マーメイドは一瞬だけ断末魔を上げると目から光が消えていき絶命した。その様子を見たラザリエは青ざめる。
「リルさん!?何をしているんですか!」
「何って殺しただけじゃが?」
「殺したって・・・多少なりとも協力してくれたのなら慈悲って物があるでしょう!?」
「無いわそんなもの、それともわざわざ逃がして後ろから刺されたいか?」
言葉が詰まる。人間とモンスターは相容れない存在であり危険排除は普通だ。ラザリエはモンスターに対してそこまで嫌悪感は無いため、自分が異常で冒険者はこれが普通なのだろうかと考えた。
「相手が誰であれ危害を加えそうなら殺す、という事ですか?」
「端的に言えばの。お主も覚悟しろ、戦場では時に味方だった者を殺さねばならぬ事もあるとな」
「・・・分かりました、私の認識が甘かったようです。敵は容赦なく撃ち殺しましょう」
ラザリエの目つきが代わる。覚悟を持った目はリルの心にゾクリとした高揚感を齎した。
先に進むとだだっ広い部屋に出る。部屋の真ん中に輝く磁場発生装置があり、部屋には死体が散乱していた。
しかし中には生きているモンスターもおり、そいつらは二人を見て襲いかかってきたのだ。
「ちと多くて面倒じゃの」
「先程止めてしまった詫びです、私が全て処理します」
ラザリエはアサルトライフルではなくスナイパーライフルを取り出し、1匹づつ正確に撃ち殺していく。外れる弾は一発もなく、迅速に敵を殲滅した。
「射撃上手いのお」
「あのお屋敷の中でもナンバー2ですから」
「いい事じゃ。しかし油断するな」
リルが一瞬でラザリエと距離を詰める。そのまま剣を抜いて振るった。
唐突な出来事にラザリエは目を閉じてしまう。しかし剣はラザリエに当たらなかった。
「ガ・・・ギャ・・・」
ラザリエの真後ろにはケルピーがいた。リルはケルピーに剣を突き刺して一刀両断するとラザリエをお姫様抱っこする。
「よし、怪我はないか」
「あ、ありがとう、ございます・・・」
自分を助けてくれた目の前の幼女が、ラザリエには王子様に見えた。リルの腕の中、自分のが大きいはずなのに全身を包まれているかのような安心感を覚える。
「む、顔が赤いぞ?どうした?」
「いえ!なんでもありません!ささ、はやく磁場発生装置を破壊しましょう!」
その場から逃げるように磁場発生装置に近づく。やはり破壊されており、効力は失っていた。
「金色と紫色が破壊しているのかのぅ。あとはユンランのリッカ山の装置のみじゃな」
「そうすれば魔王城にたどり着きますね!魔王城に行って、また平和を取り戻しましょう!」
「・・・ああ、そうじゃな」
引き返した二人はナダル達と合流する。そして今海鮮丼を食べているのだ。
「リアンさんとリゼリアか・・・遅く旅するんじゃなかったのか?まあいいや、リッカ山か魔王城で会えそうだ」
「そろそろ行くとするかのう。会計は任せるぞ」
ナダルは伝票を見て驚愕した。四人で三十杯近く食べていたのである。
「こんな食ってねえだろ・・・」
「ごめんナダル、食べた」
「ユイレェェェェ!!!うん、どんどん食え。成長期だしな!」
料金を支払ってエレイフルを出る。ナダルの財布はやや寒くなっていた。




