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大海の覇者

神殿内部は薄暗く居心地が悪い。おまけに禍々しいモンスターの気配がそこかしこから漂い居心地をさらに悪化させていた。

気配の正体を探る為四人は奥へと進む。目標は気配と磁場発生装置の二つだ。


「入って早々だけどもう出たいな」


「仕方ないじゃろ。嫌なら早く見つけて引き上げるのじゃ」


「へいへい」


神殿の奥へ奥へと進む。数は少ないが普通のモンスターの気配もするため、見つからないよう隠れながら進んでいった。

多少の戦闘もありある程度水中戦に慣れた所で一行は分岐点にやってきた。効率を重視した結果、二手に別れて探索する事が決まりナダルはユイレを連れて右ルートを進む。


「とりあえずユイレもいるしモンスターの気配が少ない方でいいな」


「急ご。私もうお腹すいちゃった」


先に進むと、マーメイドと鉢合わせしてしまう。ナダルは急いで剣を抜きマーメイドの様子を伺った。


「来るなら来い、返り討ちにしてやる・・・!」


「シャルルルル・・・」


マーメイドは襲ってこない。モンスターは非常に好戦的なため襲ってこない事はかなり珍しい、ナダルは警戒しつつマーメイドに近づいた。マーメイドは後退りし、逃げるような体制を取る。


(なんだ?何考えてるんだ?)


マーメイドは数秒ナダルを見つめた後、一瞬にして奥のほうまで泳いで行ってしまう。その背中には、火傷跡があった。

余計な戦闘を避けられたため運がいいと思いつつ、帰りに戦闘する事も面倒なためナダルはマーメイドを追いかけた。

マーメイドは泳ぎが早くナダルでは追いつけそうもない、見失って少し彷徨うとボコボコにへこんだ金属扉を見つける。


「なんだこれ」


「入るの?」


「一応な。さて、ヘビが出るかジャがでるか!」


「ナダル、それ蛇しか出てない」


金属扉を開くと中は以外にもかなり広大で明るかった。水色の光に照らされたその部屋は清らかさを容易に想像できるほどの美しさを誇る。ただ唯一、部屋の真ん中に佇むシーサーペントよりも巨大な海蛇の死体とそこから溢れ出る血液が清らかなその部屋を赤く染め上げていた。


「なんじゃこりゃ!蛇が出たな!」


「シーサーペント?じゃないね」


その時、海蛇の目が動き出しその死体は活動を再開した。海蛇は生きていたのである。


「ユイレ!下がってろ!」


「気をつけてね!」


ギョロギョロと動く海蛇の瞳がナダルらを捉える。暗い瞳は敵を視認すると脳に情報を送り、肉体を動かし始める。圧倒的威圧感が部屋を覆った。

ナダルは目の前の海蛇がグリフォンやベヒモスに引けを取らない存在だと確信する。大海の覇者リヴァイアサン、それが目の前の存在の名だ、と。


「人・・・タイミング間違えた・・・」


リヴァイアサンはボソボソと呟きながらシーサーペントのように口にエネルギーを溜める。あのビームを喰らえば間違いなく死に至るため、どうにかして防ぐことができないか思考を巡らせた。


「機敏に動けりゃな!威風!」


先制攻撃を放つ。しかし水中という特殊環境のせいか射程が縮んでおり、リヴァイアサンに少し掠っただけであった。

リヴァイアサンは怯む事無くエネルギーを溜め続け、ビームを一度で五発放った。


「風清弊絶!」


上級魔法でなんとか全て相殺する。爆風で後方に飛ばされたものの、なんとか致命傷を避けた。しかしリヴァイアサンは既に次弾の発射準備をしている。


「一々上級魔法使ってたら血が足りねえぞ」


「強化系魔法は無いの!?」


「補助魔法はリアンさん頼りだったからな・・・ウンディーネ!使えないか!?」


(消費量1.2倍)


「構わない!」


(まいど、明鏡止水)


身体がふっと軽くなり、動きに弾みが現れる。地上よりも機敏に動けるようになり、ナダルの顔に余裕の表情が現れる。


「よし・・・来い!」


「水月鏡花ッ!」


リヴァイアサンの水魔法を回避し、飛行するように周回からリヴァイアサンを切りつける。まともなダメージを与えているようには見えないが、少しづつ肉は削れて行った。


「ウザい・・・ウザいウザいウザいウザい!!!どっかいけ!」


リヴァイアサンの尻尾薙ぎ払いが飛んでくる。しかし明鏡止水の強化を受けたナダルにはまったく歯が立たず、これを回避する。


「疾風迅雷!!」


リヴァイアサンの体が四方八方から切り刻まれる。徐々に動きが弱くなり、目から光が消えていく。


「人風情が・・・調子乗んなああ!!魔法消去!!」


明鏡止水の効果が消え、ナダルの身体能力は強制的に元に戻る。そこにすかさず巨大な尻尾が薙ぎ払われ、ナダルに直撃する。


「キャハハ!死んだ!」


「ナダル!!」


「死んでねえよ!!鉄鎖!」


一撃で尻尾を切断し、ナダルは刀身にリヴァイアサンの魔法と同じエネルギーを貯める。鉄鎖が逃げようとするリヴァイアサンを捕え、一気に距離を縮めた。


「水月鏡花!!」


「がああああ!!??」


リヴァイアサンをビームが貫き、肉体を破壊する。怪我に怪我を重ねたリヴァイアサンはついぞ動きを止め、床へと倒れた。


「はぁ・・・はぁ・・・勝った!やったぜユイレ!」


「うん!やったね!・・・でも、なんで尻尾を避けれたの?というか、水中にいられるのって魔法のおかげでしょ?魔法解除なんてされたら水圧と窒息で死んじゃうよ」


「これ身体が魔法に適応してはるなぁ・・・常に補助魔法を受けているに等しいどすわ」


「ウンディーネの強力な魔法受けて血が覚醒したのかな。まあいいか、リル達を探しに行こう」


サラマンダーの言葉通りリルとラザリエを探す。二人の行先には破壊済みの磁場発生装置があり、引き返してきたようだ。四人は即地上へ上がると、海鮮丼を鬼の如く勢いで貪りエレイフルの食糧事情は少し悪化したのだった。

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