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土の国、ラジーネ

 深夜、どのくらい眠っていただろうか。ナダルは誰かに体を揺すられて目が覚ます。


「起きて・・・」


「ん・・・ユイレ?」


 身を起こして話を聞く。トイレに行きたいが、怖いし場所も分からないようだ。

 トイレは今いる部屋が4階の隅、角部屋であり、かなり離れた屋敷の奥まで進むか3階へ下る必要がある。


「3階行くか・・・近いし」


 部屋を出る前にリルのベッドを見る。誰もおらず、彼女もトイレに行ったのだろうかと考えながらナダルは部屋を出た。


「足元気をつけろよ」


「ん・・・」


 ユイレの手を握りながら暗い階段を下り、トイレに辿り着く。明かりが漏れておりメイドが一人、工具を持って作業をしていた。


「あらお客様。すみません、今トイレが修理中でして、4階のトイレを使っていただきたく・・・」


「あーすいません。教えて頂きありがとうございます。もう少し我慢できるか?」


「・・・いける」


 やや早足で階段を上がり長い廊下を歩く。ユイレの表情に苦痛が見え始めたため抱きかかえてナダルが走って行く事にした。


 しかし悲劇は起こるものであり、道中で2人のメイドに遭遇。走っていたためナダルは侵入者か何かだとと勘違いされてしまった。


「泥棒!」


「生きて帰しません!!」


 メイド達はハンドガンを取り出し発砲を開始。

 破裂音が屋敷内に響き渡り、住民が目を覚ましていく。


「待て待て待て!!!客です!客でーーす!!!」


 ナダルは飛んでくる銃弾を避けながら自身の無実を証明する。しかしメイドは聞く耳を持たず次々と発砲する。


「クソ!当たらないぞ!!」


「弾を避けてるっての!?ええい、撃て!!奴を止めろおおお!!」


「お主ら、やめるのじゃ」


 メイド達を地面に押し付け、リルが現れる。リルにボコボコにされた事でなんとかメイドは納まり、ナダルとユイレは一命を取り留めたのであった。


 一命は取り留めた、しかしこの中に、命と引き換えに尊厳を失った者がいた。そう、間に合わなかったのである。


「・・・ユイレ」


「うぅ・・・ひっぐ・・・うあああああん!!!!」



 ビッショビショの床と蜂の巣になった壁を修理しながら、ナダル達に発砲していたメイドが呟く。


「あー・・・てか、ヤバくね。あの人私達が撃った弾避けてたよね」


「ほんとそれ。射撃精度が売りだから警備員してたのに避けられちゃたまんないわよねえ」


 ブツブツと愚痴を垂れ流しながら、やがて日が登っていった・・・



 ナダル達は服を新調し、ピラミッドに向かっていた。水も食糧もしっかりと補充し、準備万端である。

 またラザリエの主人にラザリエを案内人として連れて行っていいと言われたため、再び4人で外へ繰り出したのである。


「内部は迷宮のようになっています。私は観光ルートのみ把握しておりますが、迷ったが最後死にますのではぐれないようご注意くださいませ」


歩いていたナダルの脳内にノームが語りかける。


(迷ったら最悪私の魔法で外壁ごとぶっ壊します)


「お、おう・・・」


 黄色い石の積まれたピラミッドに辿り着く。

内部はたいまつが付いていて明るく、何故かなんとなく涼しかった。

 ナダルにとってなんとなく懐かしい気がする、そんな場所だった。


「魔法か、冷却じゃな・・・そんな魔法は使ってないはずじゃが・・・」


「進みやすくていいや、行こうぜ」


 ラザリエに案内されながら、観光用ルートを歩く。特段モンスターがいる訳でもなく、最奥へと辿り着いた。

 最奥の部屋はラジーネの人間が改装してできたであろう部屋で、様々な物が飾ってあり博物館的な雰囲気を放っていた。


「・・・磁場発生装置は?」


「もっと奥じゃ。ここの扉から行けるのじゃ」


 リルが壁を触る。魔力が流れ、壁が開き道が現れた。


「ぬ・・・?直近で誰か来ているな」


「こ、こんな仕掛けが!?リルさん歴史的大発見ですよ!!!」


「知らんわ。行くぞ」


 廊下に足を踏み入れた瞬間、モンスターの気配をひしひしと感じ始める。どうやら、ここからが本当のスタート地点のようだ。


 階段を上がり、階段を下がり、分かれ道を左に行き、右に行く。


カチッ。


「ん?カチッ?」


 ナダルは謎のスイッチを踏んでしまう。その瞬間足元が無くなり、ナダルは落下して行った。


「おわぁー!?飛翔!!!」


 飛翔しようとシルフに血を捧げるが、魔力が流れてこない。血の受け取りを拒否されたのである。

魔法を使えなかったナダルはそのまま落下。数十m落ちた所で謎の物体の上に落下して跳ね返り、怪我もなく地に足をつけた。



「ナダルーー!!」


 落下して取り残された三人。慌てふためき、追いかけて飛び込もうとするユイレとそれを止めるラザリエ、冷静に穴の底を見るリルの三人に別れていた。


 やがて穴が塞がり、ナダルとの接触手段が絶たれる。さらに追い打ちをかけるように、進路の先から大量のモンスターが現れた。


「よし、下へ向かうぞ。奴を探すのじゃ」


「その前にモンスターいっぱいいるからなんとかしないと!?」


 リルが剣を、ラザリエが銃を構える。


「む、その武器は見たことないのぉ。銃とやらの別型か?」


「ええ。私、武器制作が趣味なので0から作りました」


 押し寄せる大軍に対して銃口を向け、発射した。フルオート式のその銃はモンスターを次々と蜂の巣にしていく、ラザリエの作ったこの世界で最初のアサルトライフルだった。


「美しい・・・美しいのぉ!!ははは!楽しくなってきた!!行くぞお主ら!!」


 リルが大群の中を突っ走り、先へ進む。ユイレとラザリエもリルを追いかけ、ピラミッドの深層へと向かった。



 暗い地下、謎の物体に跳ね返されたナダルは何も見えないまま床を這い、謎の物体を触っていた。やや硬くゴツゴツした肉のような感覚、しかし柔らかい部分もあり触るほどに謎が増えた。


「うーん。サラマンダー、火をくれ」


(はいはい)


 火によって謎の物体の正体が判明する。巨大な灰色の皮膚は脂肪と筋肉の鎧を形成している。ゾウのような見た目をした超巨大なモンスターがそこにはいた。


「なんだモンスターか・・・モッ!?!?」


 ナダルは一瞬で武器を構える。しかしその象は寝ているようだった。モンスターは眠らないため、おそらく魔力が枯渇し気絶しているのだろう。ナダルは安堵し周りを見渡した。


「あれ、あれが磁場発生装置だ!!」


 シルフが現れ、土台に置かれた石を指さす。魔力の塊でできているが、既に粉微塵に破壊されていた。


「んー?破壊済みか。まあラッキーって事でいいや、とりあえずユイレ達と合流しないとな」


 ゾウの脇を通り、その場の脱出を試みる。しかし運がかなり悪く、ゾウが目覚めてしまった。


「うぅぅ・・・はっ!?クソォ、負けたのじゃ・・・グリフォンに怒られてしまうのぉ・・・ん?人間か!!!!」


「久々に喋るモンスターか。相手するには骨が折れそうだ」


 剣を構え、ゾウと対面する。リルとまったく同じ口調のこのゾウは、ワーウルフやハーピィといった名前や特徴を知っているモンスターと違い見たことも聞いた事もないモンスターであった。


「ははは!!あの人間達には適わなかったけど1人だけなら勝てるぞ!!私と戦え!!」


 ゾウが起き上がる。普通のゾウよりかなり巨大かつ二足で立ち上がり、威圧感がかなり高いモンスターだった。

暗く視界が悪いその場所で、一対一の戦いが始まった。

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