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湯けむり精霊秘話

 ギルドが静寂に包まれている。目の前にいる銀髪の少女と睨み合いが続き、少女がその睨み合いを破った。


「おお、すまんのお。名前を名乗るんじゃったな。余の名はリル。魔剣士じゃ!」


「違うそうじゃない。そんな急にパーティに入れなんて言われても困るぞ?」


 リルは不満げな表情を浮かべながらポテトを貪り食い始める。明らかにイライラしている様子だ。


「フン、お主の都合なんぞ知ったこっちゃないわ。余の目的は魔王城、お主も同じじゃろ」


「それはそうなんだが」


 ナダルが食い下がると、リルがナダルのパーティに入ると言い出した。扱い的にはナダルは単独行動のため新しいパーティが結成となった。


「よーし、まずはお主の事を教えるのじゃ」


 ナダルがリルと話していると、ユイレとラザリエが温泉から上がってくる。リルが警戒しながらナダルの後ろに周り、ユイレ達と話し始めた。

 やや打ち解けあったあたりでナダルが温泉に入れるようになったため、温泉に入る。


 まだガラガラの湯船に浸かっていると精霊達が出現した。


「面倒なのに絡まれちゃったねえ。頑張れ〜」


「本当だぜ、勘弁して欲しいわ・・・」


「私達も関わることになりますから他人事ではいられませんよ」


「ウチあれ苦手やわ・・・」


「はっはっは!まあこれも縁だ。アタシ共々仲良くしてくれ」


「へいへい。ん?」


 聞き慣れない声が聞こえる。目の前の精霊の数を数えながら名前を呼ぶ。シルフ、ノーム、ウンディーネ、シルフ、ノーム、ウンディーネと何回か繰り返した所で、一人多い事が分かった。


「サラマンダーちゃんだ〜!」


「久しぶりだなシルフ。元気だったか?」


 シルフの1.2倍ほどの身長をした赤髪で褐色の精霊が目の前にふよふよと浮かんでいた。

火精霊サラマンダー、リルの契約精霊でナダルと話すために着いてきたようだ。


「よし、契約しよう。四大精霊はこれで最後だね」


「急だなあ。てかこれで四属性操れるのか、四大精霊は複数契約可能なんて言ってたけど、普通の精霊と何がちがうんだ?」


「通常精霊は必要最低限の能力しか持ってないんだよ、本来ならボク達が普通の精霊、通常精霊は劣化精霊なんだ」


「おーん・・・?」


 納得したようなしてないような返事をすると人が入ってくる。シルフ達が姿を消したため、ナダルも温泉を上がる事にした。

 酒場に戻ると、リルがユイレの肩に手を回しながらりんごジュースが入ったジョッキをガブ飲みしていた、その姿はさながら仕事終わりに部下と酒を飲むおっさんである。


「がはははは!!旨いのお!旨いのお!!む、来たかナダルよ、ちこう寄れ!」


「助けてナダル・・・」


 ラザリエが困り笑顔でリルを止めようとしているが、まったく歯がたっていない。大暴れするリルの姿が、ナダルには今という時を全力で楽しんでいるように見えた。


 やがてギルドを出た時には日が落ちてきていたため、今日の宿屋を探し部屋を取った。

ユイレがリルとの同室を拒否したため、リルはナダルと同室になった。


「おお!これがべっどとやらか!ふかふかじゃのう!」


「あんま暴れるなよ」


 部屋には机を挟んでベッドが2つ。廊下側のベッドをリルが占領したため窓側のベッドに腰をかけた。

 リルが興味津々に部屋中を探索しているのを見ながら歯を磨き、明日の支度をする。


「・・・ん?」


 荷物に見覚えのある石が入っている。ノームだった。


「私の特等席です。誰にも渡しません」


「おお、ノームじゃ!」


 リルがノームの頭を掴みながら振り回した。解放されたノームは目を回し、地面にぶっ倒れる。


「相変わらず弱々しいのお。さて、サラマンダーから詳しい話は聞いておる。お主が四大精霊全員と契約している人間じゃな」


 リルが真剣な面持ちになり、ナダルも釣られて真剣な面持ちになる。四大精霊の力は他の精霊より明らかにずば抜けている、その一人と契約するリルは、四人と契約するナダルの異常性はよく理解していた。


「そやつらの血の消費は激しい、持っておるんじゃろ、逢魔の首飾り」


「持ってない」


 リルの真剣な表情が驚愕に替わる。少し動揺したようだが、直ぐに真剣な面持ちに戻り続けて話し始めた。


「逢魔の首飾りの効力は複数契約および代償の無償化。ジルフォードとかいう化け物の開発したいわゆるちいとあいてむの1つじゃが・・・本当に持っとらんのか?」


「複数契約、代償の無償化・・?ああああ!!!」


 マーネイトにいたのである。四属性の魔法を無制限にぶちかまして来る化け物、リゼリアが。

 それに気付いたナダルの内に、怒りの感情が湧き上がってきた。


「あんの野郎古代の遺物なんぞ使いやがって・・・本来なら俺が手に入れるはずだったのに・・・」


「他人が持ってるようじゃな。まあ死んどらんならそれでええわい」


 リルは溜息を付きながらベッドに寝転がる。数秒の沈黙の後に跳ね起きると、ナダルに顔を近づけて楽しそうに叫んだ。


「お主に話してやろうぞ!千年前の化け物、勇者の話!」


 そのセリフに対し地面に倒れているノーム以外の精霊達が反応し、姿を表す。その光景にナダルは覚悟した、今晩はとんでもなく長くなるな、と。

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