復興と対策
朝日に照らされて、少年は目を覚ます。胸元の少女と白目を向いた精霊を起こさぬようゆっくりと起き上がった。
隣の部屋から精霊が飛んでくる。
「おはよ〜。すっかり顔色も良くなってる、すごい回復力だねぇ」
「おはようさん、そういえば昨晩聞き忘れたんだけどここ何処だ?」
シーサーペントのレーザービームによりエレイフルの街は粉微塵に粉砕され、存在しない。
ナダルがシルフに連れられ外に出ると、街があった場所に大量のプレハブ小屋が立ち並んでいた。一晩過ごした部屋もプレハブだ。
既に復興のための建築は始まっており、基礎ができている場所もある程だ。
シルフと周辺を散歩しているとナダルは視線を感じる、そのまま歩いていると謎の老人がナダルを発見し小走りで近寄ってくる。
「救世主よ!お目覚めになられたのですじゃね!」
「えっと、どちら様でしょうか」
「なぁに、しがない一般市民ですじゃよ」
老人はナダルを住民の集会所へ案内した。集会所は簡素の一言に尽きる。しかし熱気は簡素とは言えず、人と建築材料が行き来し、今後の復興計画が大量に張り出されていた。
老人が改まった姿勢でナダルを見やると、礼をしながら一つ、問題が発生しておりナダルにそれを解決して欲しいと話した。
エレイフルの水源はネルロハ中央の巨大な湖であり、ユンランのあるリッカ山を通じた巨大な川が流れている。
その川の水がとあるモンスターに塞き止められており、シーサーペントを初めとしたモンスターはそれを原因として大量発生していたようだ。
「エレイフルの冒険者は・・・残念ながら全滅しましたじゃ。また次シーサーペントでも現れたら今度こそ終わりですじゃ。救世主様、どうかこの国をお救いくだされ・・・」
「分かりました、今依頼を受け持ってるのでそのついでにできないか依頼主さんと相談してみます」
「ありがとうございますですじゃ。報酬は今のエレイフルの財産では支払えませんが、次訪れた時までには用意しましょうぞ」
ナダルは老人と分かれ、ラザリエを探す。簡易加工場で謎の金属物体を手入れしているラザリエを見つけ、話しかける。
「おはようございます、ナダルさん。もうお身体の方は大丈夫なのですか?」
「はい、お陰様ですっかり良くなりました。ところでこちらで何を?」
「銃のお手入れです、お教えしますのでやってみますか?」
「ジュウ・・・あぁ、あのなんか金属飛ばすやつですか」
銃はラジーネ発祥の武器だ。ラジーネ外での流通数がかなり少なく機構の再現も難しい、何より魔法の存在が銃需要を減らしているためそこまで数がない。銃所持者の9.8割はラジーネの人間だと思っていいだろう。
ナダルは銃の手入れを教わりながらラザリエに寄り道の許可を得る、しかしラザリエは数日エレイフルに滞在する予定のようで、その間に水の塞き止めを解決する事になった。
シルフがナダルの手入れを見ながら思い出すように口を開いた。
「銃かぁ、だいたい900年前にできたんだっけ。いい思い出無いなぁ」
「何歳だよお前・・・」
「8648歳」
「息をするように嘘をつくな」
嘘じゃないやいと騒ぎ立てるシルフを宥めながら手入れを終えた銃をラザリエに返し席を立つ。プレハブ小屋に帰り荷物を纏めた。
ノームをバッグにぶち込み、起きていたユイレに次の目的地に着いてくるか問う。
「ここで待ってる。絶対帰ってきてね」
「分かった。じゃ、行ってくる」
*
エレイフルより北、リッカ山麓の川の様子を見る。巨大すぎる岩が川の水を塞き止めていた。
「なんじゃこりゃ、とりあえず壊すか?」
「ちょっと待って、あそこに何かいる」
川に僅かに流れている水。それに縋るように白い着物を着た水色の何かが干からびて倒れていた。
「ウンディーネちゃんだ、何してるの?」
「し、シルフ・・・?と人間はん・・・すんまへん。ちょいお水を飲ませてくれませんか・・・?」
ウンディーネと呼ばれた何かに水を飲ませる。水色の何かは髪であり、覚醒したように水気を含みツヤと潤いを発揮し始めた。
「助けてくれておおきにどした。改めまして、ウンディーネと申します。今後ともよろしうお願いします」
「こっちはナダル。ボクとノームの契約者さんだよ」
「あらあ、この人が・・・」
ウンディーネはじっくりナダルを見やる。ちょっとして頷き、巨大岩の方を向いた。
「ちょい離れていてくださいな。湧水」
魔法によって岩が粉砕され、塞き止められていた水が流れ出した。水は勢いを増しながら川を下って行く、少しすればエレイフルに流れ始めるだろう。
あとやるべき事は塞き止めた原因の解決である。
「ヴァンパイアのヤツめ。流水がかなんからって塞き止めたんや。絶対許はんぞ」
ウンディーネの話を聞き塞き止めた原因はヴァンパイアだと判明した。ナダル達はウンディーネを連れヴァンパイアの住む極夜の森へ向かう。
川より西、常に夜のように暗い森でヴァンパイアの他にゾンビ、スパルトイといったモンスターが生息している。
全員太陽光が弱点という共通点もあるが、真っ暗闇であり効果は期待できない。
「最近人化術と人語を得たヤツは増えましてな。ヴァンパイアもそのうちの一種どす。まあ特段驚異でもないけど面倒なんよ。ほんでね、ナダルはん。うちに協力してくれる?」
「任せてくれ。ヴァンパイアは昔何匹か倒した事あるしな」
「あんらぁ、頼もしいどすねえ。あ、契約はもう済ませましたんで、ナダルはんには水魔法みな叩き込んだります」
道中で水魔法の1から100までを全て叩き込まれながら、一行は極夜の森へと歩を進めた。




