降臨せし暴君
「来い・・・!一撃で仕留めてやる・・・!」
街の西に向けて走る。
シーサーペントは既に顔を出し、ビームを貯めていいた。
やがてビームが大地に突き刺さり、着弾点にエネルギーが集中する。
(爆発来ます!)
大爆発がナダルを襲う。地面に転がるも死ぬ気で立ち上がり西へ走った。
(ナダル!何するつもり!?もう1発来るよ!)
「着いた!よっしゃ行くぞ反対側!」
(はぁぁぁ!?)
街の東を目指し走る。シルフは呆れ果て何も言わなくなった。
街の中腹あたりで、シーサーペントはビームが当たらず苛立ちを見せ始める。ナダルとは別方向に口を向け、チャージを開始した。
「なんだ・・・?」
ビームが街の西端に叩きこまれ、そこから東端まで一気にビームを薙ぎ払った。
大爆発が6発、街を粉微塵に破壊する。
「がぁっ!?」
爆発の直撃によりナダルは建物ごと大きく吹き飛ぶ。全身を撃ち血反吐が口内に混みあがってくる。
「ゲホッ・・・ゲホッ・・・おえぇ・・・!」
(っぶなぁ・・・ナダル!?大丈夫!?)
内臓が掻き混ぜられたような感覚。吐気、疲労、激痛がナダルを襲う。
「まだ行ける・・・あと少しだ・・・」
震える足を無理やり動かし、ついに東端に辿り着く。シーサーペントはトドメと言わんばかりに青い光集中させる。
今までに無いほどの光量。エネルギーの密度が凄まじく高い事が1目で理解できる。
「・・・なあシルフ。あれって魔法か?」
(そうだけど。え?まさか)
「一か八かだ。足場にする」
シーサーペントの極太レーザーが放たれた瞬間跳躍し、レーザーの上を駆けた。
シーサーペントはそれを見て放出を止める。
「鎌鼬!」
レーザーが消える前に鎌鼬を生成。自分の鎌鼬に乗り、シーサーペントまでの更なる足場へと変換した。
「ガアアァァァァァァァ!!!」
シーサーペントはナダルに接近されきる前に海に潜る。
そんなシーサーペントを拒むように、水中でキラリと光る長い物が一気に海面へ浮き上がった。
「鉄鎖のシーサーペント一本釣りだぁぁ!」
(まさかこれ貼るために街を!?)
網のように折り重なった鉄鎖が空にシーサーペントを打ち上げる。
ナダルは高く跳躍し、釣られて暴れるシーサーペントの真上で剣を構えた。
剣が西日を反射し、きらりと光る。その光がシーサーペントに届いたとき、既にシーサーペントの首と胴体は分離していた。
「──疾風迅雷ッ!」
雷鳴が轟いた。
シーサーペントは一刀両断され、制御を失ったその巨体は暴力的に水へ落下する。落下の衝撃で発生した津波がエレイフルの瓦礫を洗い流し、まっさらな街と化した。
海に落ちたナダルは水中でぼんやり目を開ける。まともな判断力は残っておらず、痛みすら感じない。
冷たい水に抱かれ、眠りそうになったナダルを、1人の人間が引き上げていった。
*
「・・・うーん」
冷たい水では無く、暖かい布に包まれながら目を覚ます。木材の天井が目に入り、ここが室内だと理解する。
体を起こすと、海に落ちた影響か体が冷えきっており体が震えた。
「目が覚めました?今お夕食を作っておりますのでもう少しお待ちください」
エレイフルに辿り着く前に出会ったあのメイド服の女性料理している姿が目に入る。
元から着ていた服は干され、白い布が身を包んでいた。
背後でギィィと音がする、振り向くとユイレがこちらを見ていた。
「シルフ!起きたよ!」
「起きた!?良かったぁぁぁ!ナダルぅぅぅ!!!」
シルフとユイレが胸に飛び込んでくる。
その勢いは凄まじく、あばら骨が折れそうになった。まだ体は回復されていなかった。
ユイレの回復魔法を受けているとシルフが海に落ちた後のことを語る。海からメイド服の女性が引っ張りあげ、さらに保護も受けていたようだ。
「ありがとうございます。えっと」
「そういえば名前をお伝えしていませんでしたね。私、ラザリエと申します」
ラザリエは懐からミラル鉱石を1つ取り出す。
100万ゼラにもなる金払いのいい依頼、エレイフルへのミラル鉱石の運搬。その報酬の根源はラザリエの仕える公爵貴族の力だった。
「ここまでの運搬ありがとうございました。それで〜、その、追加でユンランからラジーネまでの護衛をお願いしたいのですが、よろしいでしょうか?報酬は50万ゼラでいかがでしょう」
報酬を聞いた瞬間二つ返事で了承する。ユンランからラジーネの往復ならば10日程であり、旅の規模と比べればそこまで日数に差は無いと言える。
その日はラザリエの作った食事を食べ、寝ていた布団に潜った。
「ん、そういやノームは?」
「そこ」
ナダルの隣で白目を向いてぶっ倒れているノームを発見する。完全に気絶し、人間ならしばらく目を覚ましそうにない状態だ。
シーサーペントとの戦いでナダルの使った鉄鎖、あの魔法でナダルにちょっとづつ魔力を譲った結果魔力が枯渇し、完全回復するまではこのままのようだ。
部屋の明かりが消え、ノームを撫でながら布団に潜り込む。少ししてウトウトし始めた頃、背中に暖かい感覚を覚えた。誰かが布団に潜り込み、背中に抱きついているようだ。
「ユイレか?どうした?」
「あのね、私ね、エレイフルにおっきい魚が見えて、ナダルが心配で、それでね」
早口で自分の心情を伝えようとするユイレ。ナダルはゆっくり反対を向き、ユイレを抱きしめる。
「ありがとう。心配してくれたんだな」
「うん!・・・それでね、そのね。怖かったけどラザリエさんと一緒に街まで行って、そしたらナダルが水の中にいてね」
ラザリエがナダルを助けられたのも、ノームを拾ったのも、全て彼女のおかげだった。
ナダルは全身全霊でユイレに感謝を伝え、全力褒めちぎる。
ユイレは赤くなり顔から蒸気を発する、褒められ慣れていない影響か照れの誤魔化しか、ナダルの背中に手を回しべしべしと叩いた。
「もう遅いしユイレも疲れたろ、今日はもう寝よう、な?」
「・・・うん」
胸元から寝息が聞こえ始める。頭を撫でながらナダルも目を瞑り、心に温かさを持ちながら夢の中へ意識を移していった。
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