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水の国、エレイフル

 街は静寂に包まれている。折り重なる石材の橋、最下層に流れていたはずの水は無く、存在する水はモンスターの遺体と人の遺体から流れる薄汚れた血のみだった。

 高所から流れ落ちている水は赤く、街の美しさを亡きものにしている。


 水の国エレイフル、改め水上都市エレイフルに辿り着いた。


「あっちこっちからモンスターの気配がする。こりゃ骨が折れそうだな」


「マーメイドの死体だ〜。あ、あっちはセイレーン」


 少し歩くと冒険者の死体を溶かしているスライムと遭遇する。腐臭の少ない原因はスライムが死体を消しているからのようだ。


「スライムは放置でいっか、死んでいった人は可哀想だけど、死体処理して貰おう」


 さらに進むと、曲がり角の先から上半身は人間、下半身は魚のモンスター、マーメイドがにゅっと現れる。ナダルを見つけた瞬間、殺意をむき出しにして襲いかかって来た。


「グルガアアア!!」


「鎌鼬」


 マーメイドは近付く間もなく真っ二つにされ絶命する。戦いを終えたナダルが先へ進もうとすると、脇道から触手が飛び出しナダルの魔法の杖を掠め取った。


「んな!?待て!!」


 触手は目的を達成したのか、即脇道へ引っ込み姿を隠す。脇道を覗くが行き止まりであり、触手も杖も見当たる事は無かった。


「今のは鎌鼬の魔力に反応したみたいだね。どうする?武器が無いけど戻る?」


「そうだな・・・いや待てよ?武器ならある」


 荷物から狼王ワーウルフの使っていた剣を取り出す。一般的な剣よりも遥かに優れた性能をしていたため、予備の武器として持っていた物だ。

 剣を装備したナダルは、強い気配のする方へ向かう。気配に近付くにつれ冒険者の遺体が増えていった。

 腐臭に紛れて磯臭い匂いが漂う。道の奥にユラユラと揺れる影があった。


「人?冒険者か!」


 頭から血を流し肩を押さえながら冒険者がゆっくり歩いてくる。魔法使いの青年で、モノクルを付け足を引き摺っていた。


「・・・ぁ、ああ!助け」


 冒険者が助けを求めようとした時、触手が冒険者を貫いた。


 一瞬の出来事。


 その一瞬がスローモーションのように目の前を流れる。


「っ・・・!!っ・・・嫌・・・だ」


 ぐしゃり、と嫌な音。触手は冒険者の体をすり潰し、冒険者はその命を散らす。冒険者は常に死と隣り合わせだと、ナダルに再び思い起こさせた。


「ヤバい。狼王なんかよりずっとヤバい」


「クラーケンですね。近くにいます」


 ソレはすぐに目の前に現れた。

 重苦しい、巨大な足を引きずる巨大なイカ。

 ぬらぬらした胴体は太陽光を反射させながら虹色に光る。漆黒の目はギョロギョロと周囲を視姦し、ナダルを補足していた。


 海の暴れん坊クラーケン。その触手の先端に冒険者の死体を刺しながら、楽しげに、そして狂気的に触手を振るった。


「鉄鎖!!」


 鎖が触手と絡み動きを止める。迅速に距離を詰め、触手を2本切断した。

 シルフの冷静な声が頭に響く。


(無駄。再生能力が高いから一撃で葬り去らないと)


「ギィィ」


 数秒で触手が復活し、ナダルを貫こうと飛びついてくる。

 一撃一撃が速い。迎撃しようと剣を振るが数発逃し掠めてしまう。


(血がもったいないです。はやく仕留めてください)


「うるせえ!やってやるよ!」


 真正面から飛んできた一撃をしゃがんで回避し、弧を描く起動で走りクラーケンの後ろに回る。クラーケンはナダルがいた方へ進みながら冒険者の死体をぶん投げた。


「すまない!」


 死体を切り裂き起動を変える。その間に方向転換を済ませたクラーケンが再び触手を飛ばして来た。

 これを迎撃しクラーケンの頭部に剣を叩き込む。しかし避けられ、クラーケンは後ろに距離を取り始めた。


「起爆ッ!」


 クラーケンの足元が爆発を起こす。

一瞬の隙を見せたクラーケンに特攻し、胴体を縦に真っ二つに切り裂いた。


 真っ二つにされたクラーケンの体がビクビクと痙攣する。そのうち動かなくなるだろう。

 戦いの終わりと同時にシルフとノームが現れ、ナダルの肩に座る。


「お疲れ様〜。さっきの爆発なんだったの?」


「土属性魔法の地雷です。ナダルが触手を避けてしゃがんだ時に血を捧げられました」


「土属性にも慣れなきゃな、とりあえず先急ごう、まだもう1匹ヤバい気配がする」


 道なりに先へ進む、道中大量に落ちている、破壊された武器の中に、ボキボキに折られたナダルの魔法の杖が混じっていた。この有様ではもう使い物にはならないだろう。


「アレスさんに買ってもらった思い出の杖だったのに・・・」


「アレスとは現代の勇者ですか?アレス・ジルフォードですか?」


「お?よく知ってるな?そうだぞ、アレス・ジルフォード。勇者にして世界最強の魔剣士だ!」


 それを聞いた途端、シルフがこの世のものとは思えないような絶叫をする。


「ジルフォードってあの化け物じゃん!え!?何!?子孫!?」


「おう、勇者の直系子孫だぞ」


 苗字を持っているのは貴族のみでありナダルやサナは持っていない。


「やはり奴の子孫ですか。貴方の太刀筋があの化け物と似ていたのです。貴方自身もしくは師にあたる者が奴の血を引いてるかと考えましたが後者のようですね」


 その後、シルフとノームに千年前の勇者がいかに化け物だったかを散々に聞かされる。

ほぼ聞き流しながら巨大な気配のする海沿い歩いていると、突然地鳴りが起きた。


「来たか、元凶!」


 水面に渦、怪物の呻き声が低く響き渡る。

 ヒレが海を切り裂き、渦を更に大きくする。流れに乗ったソレは飛び上がり、巨体で空を覆い隠していく。


「シーサーペント・・・!」


 120mはあろう巨体は大量の蒼い鱗に覆われ陽光を乱反射する。龍に似るその顔は、縄張りへの侵入者に対する怒りを示していた。


「ガァァァァッッッ!!!!」


 シーサーペントは咆哮し、再び水中へ飛び込む。飛沫が飛び、雨のようにナダルを襲った。


「デカすぎる!!無理だこれ!!」


 一旦退避を選択し、エレイフルの上部へ駆け上がる。

 道中で襲ってくるマーメイドにセイレーン、ケルピーを処理しながらシーサーペントと距離を取る。


 だいぶ上がった所で、シーサーペントの方を向いた。

 離れても見える巨体はまさに圧巻の一言。水面から顔を出してナダルの方を向き、じっと狙いを定めている。


 そのままカパッと口を開くと、青い光が集約しだした。


「あ、あれはダメなやつだ、あれはダメなやつだ」


(落ちついてナダル。大丈夫。あれはビームを撃ち込んでその場で大爆発を起こすシーサーペントのジャブみたいなもんだよ)


「大丈夫じゃねえよおおお!!えっと、えっと」


 シーサーペントの口から極太のビームが放たれ、ナダルのいる場所へ直撃する。

 建物は粉微塵に破壊され、付近にいたモンスターは蒸発。最後にビームのエネルギーは逃げ場を失い、その場で大爆発を巻き起こした。


 爆発の勢いが消失していく。そこに生物の気配は何も無く、ただ自然の姿に帰した建物の破片だけが存在するしていた。


「ガルルル・・・」


 シーサーペントは周囲を見渡す。動くものは無く、敵の殲滅を確認し海の中へ引き返して行った。


「・・・っぶねぇ〜!食らったら死ぬわあんなん」


 ナダルがゆっくりと落下してくる。咄嗟の判断で久々の補助魔法により飛翔し、爆発から逃げていた。


「い、一旦休もう、そろそろ血が足りなくなってくる」


 爆発範囲外にあった家まで行き、床に倒れ込んだ。シーザーペントを思い起こし、どうすれば勝てるのかを考察する。あの爆発への対抗手段を得なければナダルに勝ち目は無いのだ。


「血さえ万全ならなぁ・・・」


「ボク達の血液要求量は超多いからね、熟練度にもよるけどユイレくらいの体格なら鎌鼬一発で要求量が致死量を超えて死ぬと思うよ」


 対抗手段をいくつか考え、血の回復を図って一度眠る。数刻後、目を覚ますと外の日はやや西へ傾いていた。

 家を出て海を向く。渦潮が再び水面に浮かび、主の怒りを示す。

 対シーサーペント、第二ラウンドが幕を開けた。

ご読了ありがとうございます。

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