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意思のある石

「重てぇぇ・・・!!」


 ミラル鉱石が大量に積まれた積荷は坂道を登るナダル達の足を引っ張った。

 平地ですら運ぶのが大変なほど重いため、坂道は地獄そのもの。坂の頂上へ辿り着いたのは太陽が真上に登った頃だった。


「ナダルー!道に石が刺さってる!」


「石ぃ・・・?面倒だな」


 現場を見やると、やや大きめの丸い石が地面からボコッと生えていた。

 想定漬物石ほどのサイズで、荷物を運ぶには邪魔だ。


「しゃーない、掘り起こして捨てるか」


 石を掴み、意外と簡単に引っ張り出せないかを試みる。するとスポッと引っ張り出され、石が全容を見せた。


「・・・」


 意外にも小さい石、シルフほどのサイズだろうか。そこまでならば普通の石だが、これは普通の石では無かった。

 石と目が合っている。その石はシルフに似た小さい女の子のような人型をしており、付いていた顔の目と目が合ったのだ。

 人型石はナダルに頭を掴まれたまま、ゆっくりと動き出した。


「アッ・・・ぅ・・・」


「石が喋っている」


 石はナダルの手を離れ、ボトッ!と音を立て地面に落下する。そのまま震えながら泣き始めた。


「私の精霊生はここで終わりなんです。人間に殺されて土属性も終わりを迎えるんです」


「ノームちゃん?」


 シルフがナダルの荷物から飛び出し、石に語りかける。石はシルフを見るや否やシルフに飛びつき、大泣きをし始めた。


「シルフちゃん。私はここで終わりです。人間に殺されるんです。後任は頼みます」


「大丈夫だよ。ボクの契約者だよ」


「・・・はぁ?」



 風を司る精霊がいるならば、土を司る精霊もいる。土精霊ノーム、それが石の正体であった。


「あんな所で何してたの?ノームちゃんの住処は北の砂漠でしょ?」


「土属性の衰退を顕著に感じ、悲しみに暮れる事900年。気づいたらあんな所にいました」


 泥を茶のように啜りながら一息着くノーム。シルフと並びちんまりと座るその様は人形のようだった。

 ノームはナダルに視線を向けじっと見つめる。ナダルがどうしたのか聞くとノームは語り始める。


「まさか見つかるとは思いませんでした。血をください」


「急すぎるし嫌だわ」


「では契約しましょう。そして魔法を使ってください。はい、契約しました」


 ノームははやく魔法を使えと言わんばかりにナダルを急かす。しかしナダルに土属性の知識はほとんど無い上に精霊との複数契約は不可能、それを伝えるとノームは無い胸を張った。


「大丈夫です。私たち四大精霊はそんな制約には囚われません。さあ、早く魔法を」


「そうは言ってもなぁ、土属性土属性・・・お、そうだ。地面から鎖が生えてくるやつ使ってみたいぞ」


 マーネイト前でリゼリアに使われた土属性魔法。あの鎖でミラル鉱石を一気に運んでしまおうとナダルは考えた。


「鉄鎖ですね。では魔力を渡しますので熱風と同じ魔力操作をお願いします」


 体内から血が減り、魔力に満ちる。風精霊の物とは違う魔力の質。重い液体を体外に染みださせるような感覚がナダルを支配する。


「鉄鎖」


 魔力を体外に放出した瞬間、地面から鎖が生え積荷に絡みつく。放出した魔力を操作できる事に気が付き、積荷を引っ張り上げた。

 それを見ていた3人が拍手を送る。


「すご〜い」


「最初からここまで扱うとは、やりますね」


「どうもどうも。いやしかし便利だな、血の消費が無ければ常用してたぞ」


 坂を登りきった彼らは全員で積荷に乗り込み、坂を駆け下がる。遠くには海とエレイフルの街並みが見えてきていた。

 積荷は勢いを増していき、ガタガタと音を立てる。中腹辺りで恐怖に押し潰されそうになったユイレが叫んだ。


「ねえナダル!これ大丈夫なの!?」


「知らん!」


「あー!!突っ込む突っ込む!!止めてぇぇぇぇ!!」


 積荷は坂下の林に突っ込み、ミラル鉱石と乗客をぶちまけて止まった。ユイレが目を開けると地面に突き刺さったノームと木に激突したシルフ、自分の下敷きになったナダルを見つけた。


「バカナダル!後先考えなさいよ!」


「すんません・・・」


 ミラル鉱石を積み直していると林の奥から人間の足音が聞こえてくる。振り向くとメイド服を着た糸目の女性がこちらを見ていた。


「あ、どうも。エレイフルのお方ですか?」


「いえ、私はラジーネ出身です。それとそのミラル鉱石。エレイフルに御用ですよね。実は今エレイフルには入れないのです」


 メイド服の女性がエレイフルの現状を語る。

 エレイフルは3日前モンスターに占領され、国民や商人は別の場所に避難しているようだった。

 一行はそのまま川の畔に案内される。そこでは大量の人間が所狭しと生活していた、一目では把握しきれない数が、エレイフルを追われ野外生活を余儀なくされていたのだ。


「冒険者の方々がエレイフルの解放に向かいましたが、一向に帰ってこないのです。私もラジーネへの帰還が遅れると困りますので、どうにかならないものかと・・・」


 ナダルは意を決する。1人の冒険者として、この現状は見捨てられなかった。

 積荷をユイレに託し、エレイフルへの荷物を整理する。メイド服の女性にユイレのお守りを頼み込むと快く了承してくれたため、安心してエレイフルへ歩を進めた。

ご読了ありがとうございます。

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