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ねこねこ戦記〜猫たちの異世界狂想曲〜  作者: 志雄崎あおい
4章 ネコソギシティの騒乱
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78話 緊急クエスト

 警告音が鳴っているのはミケのニャルラトフォンだけではない。

 そこかしこで、不協和音の輪唱が起こっていた。

 英雄ショップに併設された酒場であるここにいる客は全て使い魔〈サーヴァント〉である。


 その使い魔達のニャルラトフォンが一斉に声を上げたのだ。


 そして、このニャルラトフォンの警告音が鳴っているのはこの酒場にいる使い魔だけではないだろう。


 おそらく、ネコソギシティ全域で鳴っているはずだ。


「一体、どうしたんですか?」


 意識の世界〈ニャルラトネットワーク〉から戻ってきたヤマネコにミケが訊ねる。

 その声には、明らかな動揺と困惑の色があった。

 それはミケだけではなく、酒場にいる他の使い魔達も同じように動揺し、ざわざわとざわついている。

 その中には、こちらを……。正確には、ヤマネコの姿を伺っているものも居た。


 使い魔〈サーヴァント〉はその手のシステムに無頓着な猫が多いが、中にはこの警告音を発したのが、ここにいるヤマネコであるという事を知っている猫もいるらしい。

 大規模緊急クエスト。


 この警告音はその発行を知らせるものだ。

 喫緊に迫った危機に対応する為に、ヤマネコの権限で発行できる広域強制クエストである。


 何人の使い魔〈サーヴァント〉がその事を知っているかは兎も角、一応、緊急クエストが発行されたら他のクエストよりも優先して行わなければいけない事になっている。


 そして、その緊急クエストは今、ネコソギシティに居る全ての使い魔の元へと送られているはずだ。

 そして、その発行した張本人であるヤマネコは先程までの酔っ払った表情とは、うって変わり狼狽した顔付きになっていた。


「ニャ~。大変ニャ~。やばいニャ~」


 テーブルの上で仰向けになると、クネクネと身をよじりながら、うわ言のようにそう繰り返している。

 いや、媚売ってる場合か。


 やばいやばいと言うだけで、まったく相手にならない。

 どうやら質問に答えられるような状態じゃないらしい。


 そういえば、と思い出しミケはニャルラトフォンを取り出し操作する。


 よくよく考えたら、別にヤマネコに訊かなくてもどういう理由で緊急クエストが発行されたのかは、ニャルラトフォンに送られてきたものを読めば分かる。


 ミケはニャルラトフォンを操作すると、クエストの画面を表示させ、そこから送られてきた緊急クエストを開いた。

 そこにはこう書かれていた。




『ネコソギシティに大量出現したMTTBを倒せ。

 今、ネコソギシティ市街地において、MTTBが大量出現するという異常事態が起こっているニャ。そのクラスはおよそA級。腕に覚えがある使い魔〈サーヴァント〉はただちにネコソギシティ市街地へと赴き、これを討伐してもらいたいニャ。


 なお、クエスト報酬として一体討伐につき百万のボーナスが報奨金に上乗せされるニャ。

 にゃ、にゃんだって~。これはお得すぎる! すぐ戦わなきゃ!

 とにかく手当たり次第に狩って狩って狩りまくってほしいニャ。

 諸君らの迅速な行動に期待するニャ。

 頑張るニャ~。


 ※ なお、クエストボーナスにおきましては通常の討伐報奨と同じ扱いになります。

   パーティでの撃破の際におきましては通常の報奨金比率分配方式が適用されます。

   本クエストにおける、クエスト受注報告および完了報告は無用です』




 書かれている内容を見て、ミケは目を見張る。


「え、マジか?」


 思わずミケは口に出して呟いていた。

 全く以って突然にして、あまりに現実離れした内容にいまいちピンとこない。

 エイプリルフールの嘘クエストなんじゃないか? というような感じだ。

 もちろん、今はエイプリルフールではないし、緊急クエストでふざけるような事もしないだろう。


 文面通りに受け取るなら、ネコソギシティにMTTBが大量出現して暴れているらしい。

 しかもA級。A級と言えば熟練の使い魔〈サーヴァント〉達がパーティを組んで討伐するレベルの強力なMTTBである。


 ネコソギシティの周辺でこのレベルのMTTBは滅多に見る事はない。だからこそ、この街はこんなに栄えているのだし、猫乙女〈ニャルキリー〉に導かれたばかりの新米の使い魔が最初に降り立つ地でもあるのだ。


 そんな場所に、A級のMTTBが大量発生というのは、にわかに信じられないのも無理ない話。

 はっきり言ってまったく実感が湧かない。


 この酒場は地下にあるという事もあって、外の音が入ってこない為、より一層その思いが強くなる。


 酒場にいる他の猫達もそう思っているのか、先程ニャルラトフォンから鳴り響いた、けたたましい不協和音が収まった酒場では特別緊迫するという事もなく、むしろまったりとした空気が戻りつつあった。


「って、なんで誰も外に出ようともしないニャ。街の一大事ニャっ」


 仰向けクネクネ状態から座りなおしたヤマネコが、ぷんぷんと顔を紅潮させながら腹を立てた。


「まあまあ。落ち着いて」


 ミケは、そんな彼を宥めるように顎の下を優しく撫でてやる。


「あ、顎の下は。ふにゃぁ」


 トロンとした目で、ヤマネコはミケの顔を擦り付ける。

 顎の下から首にかけてはもっとも有名な猫の喜ぶポイントだろう。使い古されているがやはりよく効くようだ。


 ヤマネコはしばらく顎下の摩擦によって起こる快楽を貪っていたが、はっ、と目を見開きパッとミケの手から離れた。


「って違うニャ。本当にヤバイんニャって~」


 フルフルとヤマネコが体を震わせている。

 ミケは、ふむと顎に手を当てると、ドンと一度大きく壁を叩く音がした。

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― 新着の感想 ―
[一言] それがリアルだから、ってね(゜Д゜;)
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