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ねこねこ戦記〜猫たちの異世界狂想曲〜  作者: 志雄崎あおい
3章 アパルトマンの猫達
54/229

54話 超絶進化キングおっぱいスライム

「な、何?」

「わたしの部屋の方からだ」


 その音は同じ階の廊下の奥にあるわたしの部屋から聞こえてきたものだった。

 わたしは部屋を飛び出すと、自分の部屋へと駆け足で向かう。


「っ!?」

 そして中に入った時、わたしは思わず目を見張らずには居られなかった。


「何、これ……」


 部屋の中心にはわたしの背丈の倍はある巨大なおっぱいスライムが鎮座していた。

 わたしに遅れてやってきたショコラとチグリスの二人も思わず声を失う。


「あー!」


 その巨大おっぱいスライムの足元を見て、わたしは思わず声を上げた。


「ど、どうしたんですか?」


 ショコラがびっくりしてこちらを見るのに、わたしはおっぱいスライムの足元を指差すと、


「わたしのネコモッコリDXGOLD2000、おっぱいスライムに飲まれた! あれ高いんだよっ」


 巨大なおっぱいスライムの足元には、封の開けられたネコモッコリDXGOLD2000の茶色い空き瓶が散乱していた。

 それは、おっぱいスライムがネコモッコリDXGOLD2000を全部飲んでしまった事を示していた。


「ネコ……なに?」


 チグリスが首を傾げる。


「ネコモッコリDXGOLD2000だよ。超強力な精力増強剤なの」

「精力増強剤? 精力増強剤って、あ、アレの時に使うやつでしょ。何でそんなもの持ってきているの。まさか、ルナちゃん」


 顔を真っ赤にしてチグリスがわたしに詰め寄ってくる。わたしは慌てて手を振って否定する。


「ち、違うの。えっと、なんていうか話すと長いっていうか。とにかく、わたしが使うんじゃないからっ」


 ああ、チグリスがめっちゃ疑いの目を向けてくる。


「ねえ、ショコラも何か言ってよ」


 ショコラに助けを求めるが、彼女はそんな事はお構いなしに、巨大おっぱいスライムを見つめていた。


「おっぱいスライムが、ネコモッコリDXGOLD2000を飲んで、キングおっぱいスライムに進化した? もしかして、おっぱいスライム達が浮き足立っていたのはネコモッコリDXGOLD2000のせいだったの?」


 ショコラはブツブツと呟いた後、


「おっぱいスライムが、ネコモッコリDXGOLD2000を飲んで、キングおっぱいスライムに進化したんですよ、ルナさん。今まで仮定の存在に過ぎなかったキングおっぱいスライムが実在したなんて、学会の猫さん達に教えてあげなきゃ」


 そう言うと、ショコラは興奮気味にニャルラトフォンを取り出して、パシャパシャと写真を撮り始める。

 もう、ショコラそんなことしてる場合じゃないよ。そんな変態しかいなさそうな学会とかどうでもいいから。っていうかおっぱいスライムなのにキングとはこれいかに。


「これは……まずいわね」

「え?」


 チグリスはキングおっぱいスライムを見つめながら、眉を寄せ目を細めた。

 わたしとショコラは手を止めチグリスを見る。チグリスは流し目でこちらを見つめ、


「感じない? 甘いミルクの香りに混じって、微かに樹木〈トレント〉の香りがする」

「そういえば、部屋の中なのに森みたいな匂いがするかも」

「どうやら進化すると同時に、MTTBの眷属化したみたいね」

「眷属化?」

「MTTBは普通の魔物を眷属として、MTTB化させて自陣に引き入れてしまう事があるのよ。眷属化した魔物はやがて新種のMTTBに体を変異させて害を振りまくようになるわ」


 チグリスは唇に親指を当てる。


「でも、なぜ? よほど強力なMTTBじゃなければ眷族なんて生まないはず。それだと、眷属化できるくらい強力なMTTBが、この都会のど真ん中にいるという事になってしまうけど……」


 睫を伏せると考え込む。

 キングおっぱいスライムは更に一本瓶を吐き出すと、つぶらな瞳をこちらに向けた。

 どうやら、まだ、飲んでたらしい。

 最後の一本を飲み終わったキングおっぱいスライムは、どすんどすんと足音を轟かせながら、近づいてくる。


「ふふ、この子戦う気満々みたい。チグリス考えててもしょうがないよ。魔物なんて倒しちゃえば同じだって」

「何、その胃に入っちゃえば何食べても同じみたいな言い方。でも、そうね――」


 わたしが目の前のキングおっぱいスライムを見上げながら言うと、チグリスはジト目をわたしに向けた後、


「考えても分かるわけないものね。でも、相手は元スライムとはいえ今はMTTB。MTTBと戦う以上、慢心は捨てましょう」

「うん。わたしも本気でいく。ショコラも準備はいい?」

「は、はいっ」


 ショコラが上ずった声で返事をする。


「じゃあ、行くよ!」


 わたしはフライパンを構えなおすと、キングおっぱいスライムへと特攻をかける。


「おっらぁっ!!」


 キングおっぱいスライムの横腹まで駆け寄ると、掛け声と共に思いっきりフルスイングでフライパンの底を叩きつける。

 フライパンによる重たい衝撃に、キングおっぱいスライムの巨体が浮き上がり、後方へと飛んだ。着地と共にドスンという重たい音が部屋に響く。


 さすがに、フライパンで殴ったくらいじゃ破裂まではいかないか。

 元々おっぱいスライムの体は柔らかくてぷるんぷるんしている。その為、衝撃を吸収してしまうのだ。

 小さい時は、それでも打撃の衝撃が勝っていたが、キングおっぱいスライムくらいの巨体になるとおっぱいによる衝撃吸収能力の方が勝ってしまう。


「もう一回!」


 わたしがもう一撃加えようと、距離を詰めようとした時、

 キングおっぱいスライムが威嚇のために乳首から特濃ミルクを発射した。


「わわっ」


 わたしは足を止めると、反射的に回避する。いや、当たっても無害なミルクだって事はわかってるんだけど、なんか避けちゃうんだよね。


「うわぁ。こんな濃いミルク沢山出しちゃうんだ……」


 わたしは立ちこめる濃いミルクの匂いに頭をクラクラさせながら困惑する。

 キングおっぱいスライムを中心に、白くてドロドロしたミルクの水溜りが出来ていた。

 そして、そのミルクの濃さは普通のおっぱいスライムの比ではなかった。


 濃いミルクをいっぱい出したキングおっぱいスライムは満足そうに、賢者タイムを迎えている。

 チャンス。なんだけど、どうしてか頭がぼんやりして踏み込めない。


「ルナさん気をつけてください。このミルク多分ネコモッコリDXGOLD2000の成分が混ざって媚薬みたいになってます」


 ショコラが手をメガホンのようにして忠告を飛ばす。

 マジか、避けてよかった。

 ほっと胸を撫で下ろす。


「聖滅のイルミネイション!」


 チグリスが叫ぶと、煌びやかな幾重もの閃光がキングおっぱいスライムの体を包み込み、無数の傷を付けていく。

 しかし、それはすぐに塞がってしまう。


「このクラスの魔法でも、これしかダメージが入らないか……。思っていたよりもずっと強いのね」


 チグリスは独り言のように呟くと、次の魔法の発動準備に入る。

 とにかく攻撃し続けてればいつか倒れる。そういう判断だ。それには、わたしも同感だった。

 わたしはミルク溜まりに、一歩足を踏み入れる。


 やっぱりこのミルク匂いの中にいると、なんだか頭がぼんやりしてしまう。

 魔力切れによる疲労も相まって、気を抜いたら倒れてしまいそう。


「はわわ、はわわ」


 とキングおっぱいスライムが楽しそうに、そんなわたしの様子を眺めていた。

 なんかムカつく、雑魚〈スライム〉のくせにっ。

 わたしはキッと睨みつけると、もう一度フルスイングでキングおっぱいスライムを吹っ飛ばした。


「ルナさん。ちょっと来てください」


 わたしが何度かふっとばし、チグリスの魔法が何度か炸裂した時だった。

 ショコラがわたしに声を掛けた。


「ちょっと、待ってっ」


 わたしは、キングおっぱいスライムを壁際まで追いやると思いっきりふっとばす。

 フライパンによって撃ち出されたキングおっぱいスライムは壁に叩きつけられて、ずりずりと白いミルクを壁に垂れつけながらずり落ちた。よし、これでしばらくは再生に時間が掛かるはず。

 わたしは踵を返すと、急いで部屋の入り口付近に待機しているショコラとチグリスの元へと戻る。


「はぁはぁ、どうしたの?」


上がった息で訊ねると、ショコラはニャルラトフォンの画面を示しながら、


「あの、ちょっとおっぱいスライム学会のサイトを見てたんですけど」

「何かわかったの?」

「はい、おっぱいスライムの弱点がわかりました」


 ショコラがわたし達を交互に見て頷く。


「弱点があるの?」

「そうか、普通スライムの弱点なんて意識しないから、弱点があるかもというのは盲点だったわ」


 チグリスがポンと手を叩く。


「で、どこなの?」

「えっと……」


 ショコラは顔を赤らめると、両手の人差し指を付けたり離したりする。


「早く言って、あいつが起きてきちゃう」


 わたしがチラチラと壁際のキングおっぱいスライムを気にしながら急かす。

 ショコラは、思い切ったようにぐっと目を瞑ると、


「乳首ですっ」

「あぁ」


 ショコラの言葉を聞いて、わたしは赤くなって遠くを見るような目をする。


「そっかー、おっぱいスライムって乳首が弱いんだー」

「言われてみれば、納得の弱点ね」


 チグリスが腕を組んで頷く。なんでそんな冷静なの。わたしは取り繕うように人差し指を立てると、


「じ、じゃあ、乳首を集中的に攻撃しよう」

「つまり乳首責めね」

「そう、乳首責めっ」

「じゃあ、乳首責めしましょう」

「うん、乳首責めする」

「もう、乳首責め言いたいだけですよね……」


 わたしとチグリスが頷きあっているのを、ショコラが苦笑する。

 体を再生させたキングおっぱいスライムが怒りを現すように大きく跳ねた。

 その地響きによって、わたし達は再び緊張を取り戻す。


「とにかく、そろそろケリをつけてやる」


 わたしは、巨体を弾ませながら向かってくるキングおっぱいスライムを見据えると、駆け足で一気に距離を詰める。


 そして、思いっきり飛んだ。

 背丈の二倍以上ある巨大なスライムの更に上を取る。


「はぁっ!」


 わたしは思いっきりフライパンを振りかぶると、キングおっぱいスライムの頂点にあるピンク色の突起物に向かって振り下ろした。その時だった。


「っ!?」


 キングおっぱいスライムの乳首の先端から、白いミルクが勢いよく発射される。


「やばっ!」


 わたしは空中で無理やり体を捻ると、ギリギリでミルクの射線から体を逃がす。

 しかし、無理やりにかわした結果、バランスを崩し床に転がり落ちるように落下する。


「……っ」


 どうして、わたしが無意識に上からの攻撃を避けて戦っていたのか、皮肉にも今気づくことになった。

 上に飛び上がって乳首を攻撃しようにも、あのミルクのいい的になってしまうのだ。


 どうしよう……。

 キングおっぱいスライムが、はわわはわわと上機嫌につぶらな瞳を向ける。

 わたしは口を噤みながら、その目を見返した。


「ルナちゃん。私が隙を作るから、そのスキに!」

「チグリス?! わかった!」


 わたしが頷くと、チグリスがニャルラトフォンの画面に触れる。


「神々の裁判員裁判で神罰を下すわ。聖滅裁可のイルミネイションフェスティバル!」


 チグリスが宣言すると、キングおっぱいスライムの周囲が目も眩むほどの眩い光に包まれた。

 その聖なる神罰の光はキングおっぱいスライムの体を壊していくが、その様子さえも満足に見えない程に光の眩しさは常軌を逸したものだった。


「ルナちゃん!」


 声を掛けられて、わたしははっとする。そして、それと同時に彼女の意図も理解する。

 こちらから見えないって事は、向こうからも見えないって事。

 つまりは目くらまし。


「うん!」


 わたしは頷くと、光の中心へと高く飛んだ。


「こんのぉ!」


 そして落下と共にフライパンの底を、光の中へと叩き込む。

 どこに攻撃すればいいのかは、先ほどの攻撃で目算がついていた。

 そして、思ったとおりわたしの振り下ろしたフライパンはキングおっぱいスライムの中心の突起物を捉えた。


 わたしは力を込めてぐっと押し込む。

 しかし、負けじとキングおっぱいスライムも乳首からミルクを噴出させる。

 その母乳の水圧でフライパンを押し返そうとしているのだ。


「うっ……」


 もう少しなのに……。

 もう少しで倒せそうなのに、頭がクラクラして意識がふっと遠のく。

 フライパンがミルクの放流に押され、ふわりと押し返される。


 その時、わたしの体を暖かい光が包んだ。

 これは回復魔法の光。

 ショコラ?

 そうだよね。諦めちゃだめだよね。もっと気をしっかり持たなきゃっ!


「はぁああっ」


 掛け声と共に、一気に押し込む。

 ミルクの奔流など気にしない。フライパンを力任せに押し込む。


「――――っ?!」


 キングおっぱいスライムが声無き声を上げた。

 いや、それはキングおっぱいスライムの中の何かの断末魔だったのかもしれない。


「はわわ……、はわわ……」


 フライパンに押され、どんどんキングおっぱいスライムの体に乳首が陥没していく。

 そして、目に見えるほどキングおっぱいスライムの体が窪んだ時。

 バァンという部屋中を震わせる程の爆裂音と共に、キングおっぱいスライムの体は破裂した。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 部屋はどれくらいの広さなんだろ背丈以上にジャンプしても頭ぶつけないだなんて(ォィ [一言] >っていうかおっぱいスライムなのにキングとはこれいかに。 きっと相撲部男子のオパーイなんだよ…
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