46話 プリンを食べよう
「大丈夫、ルナちゃん?」
わたしの背中を擦りながら、チグリスが心配そうに言った。
魔法に浮かれていたわたしは、突然倒れてしまったのだ。
脱力しながら、机につっぷする。
「ごめんなさい。こうなる前に回復するつもりだったんだけど」
「もう、だめだー。わたし死んじゃうんだー。三途の川で寒中水泳とかしちゃうんだー」
「大げさな奴だな。ただの魔力切れだろ」
「なったことあるの?」
ジトっとミケを睨みつける。
「いやないけど」
ないんじゃん。
「まあ、一時的なものだから。しばらくは乗り物酔いと貧血と二日酔いが同時に来たみたいで辛いかも知れないけど、すぐに治るわ」
チグリスは苦笑しながら、指を三本たてる。
「うぅ……」
「どうぞ、アイスマタタビ茶です。魔力回復の効能があると言われていますよ」
「ありがと……」
ナイルが氷が入った冷えたグラスをテーブルに置く。
っていうか、乗り物酔いと貧血と二日酔いが同時にきたら普通死ぬって。ああ、早く治ってほしい。
ぐでーと机に頬をつけたまま、チビチビとグラスに注がれたマタタビ茶に口をつける。
「あの、テーブルに零れてるけど……」
「……」
チグリスが眉を八の字にして苦笑してるけど、だるいので無視する。
「あ、そうだ。プリン持ってきてあげましょうか?」
「え、プリン!」
チグリスの言葉に、わたしはガバッと体を起こす。
「あ、いたた……」
が、頭痛が痛かったので、すぐにダウン。酒場で酔いつぶれるアザラシ状態に逆戻りする。
「ちょっと待ってて」
そう言い残すと、チグリスはバーカウンターの奥にある冷蔵庫へと駆けていった。
「お待たせ」
程なくして、チグリスがお皿を持って戻ってきた。
「ぶっ!」
ミケが口からコーヒーを吹く音が聞こえた。
「?」
え、何? 何か噴き出すような事があったの? チグリスが持ってきたのってプリンでしょ。
わたしは気だるさを押し殺して、上体を起こすとチグリスが皿に載せてきたものを見る。
「は……?」
思わず目を白黒させる。
チグリスの持ってきたものは確かにプリンだった。
プリンだったのだが、その色は白みがかった薄い橙色で先端にはピンクに色に染められた突起がついていた。
つまりこれはおっぱいプリンというやつだったのだ。
「えっと、どうしたのチグリスそれ……」
「どうしたのって、プリン持ってきてあげるって言ったじゃない」
いや、確かに言ってたけど、これは……。
「だって、それ形がおっ……ぃだよ?」
駄目だ、恥ずかしくて思わず声が小さくなってしまう。
わたしはそれを注視できずに、赤くなって俯きながら上目を向ける。
「そうよ。かわいいでしょ? 今、私自家製でおっぱいプリンを作るのがマイブームなの」
「そ、そうなんだ」
そんな溢れんばかりの笑顔で、そう言われてしまったら、わたしはもう何も言い返せなかった。っていうかどんなマイブームだよ。しかも微妙に形がリアルなのがヤバイよ。
「ぜひ、ルナちゃんにわたしのおっぱいプリン食べてほしいな」
「え、えっと……」
「嫌なの? ルナちゃんはおっぱい嫌いなの?」
さっきとは打って変わって今度は今にも泣きそうな顔になった。
え、泣くの? わたしの返答次第では泣く感じですか。
「嫌いじゃないっ。嫌いじゃないから」
わたしが慌てて取り繕うと、チグリスは「よかったぁ」と顔を綻ばせた。
わたしはほっと胸を撫で下ろす。
「さあどうぞ。召し上がれ」
そう言うと、チグリスはわたしの前におっぱいプリンが載ったお皿を置く。
力が加わる度に、おっぱいプリンの乳房がぷるんぷるんと震える。
「じ、じゃあ……」
わたしはおもむろにスプーンを手に取ると、ツンと乳首の部分をつついてみる。
「あんっ」
つんつん。
「あっ……」
プリンをつつく度に、横から色っぽいが聞こえてくる。
わたしは目を細めると、チグリスを見た。
「あのさ、食べにくいから。プリンつつく度に喘ぐのやめてもらっていいかな?」
「あ、ごめんなさい。ルナちゃんはフルボイスの方がいいのかなって思って」
「フルボイスとかいらないから!」
はっ、思いっきり突っ込んでしまった。
「ふふっ」
「そこ、笑わない!」
すかさずミケに視線の牽制球を投げる。
ついでにナイルとユーフラテスにも、と思ったがユーフラテスはどこかに行ってしまったらしく姿はなかった。あれ、いつ居なくなったんだろう。まあ、居ない方がわたしとしてはありがたいけど。
ミケとナイルに圧力をかけると、わたしは改めて目の前のおっぱいプリンに対峙する。
ごくり。
そして、プリンの乳房をスプーンで救い上げると、口の中に入れた。
「あ、おいしい」
口の中に甘いミルクの味が広がる。見た目はともかく、味はとってもおいしいミルクプリンだった。
「ほんとっ」
「うん、おいしいよ。チグリスの……おっぱいプリン」
「そう、よかったわ」
わたしが言うと、チグリスが嬉しそうにはにかんだ。
「じゃあ、今度は乳首も食べてみて」
「う、うん」
今度はプリンの乳首をスプーンで掬うと、口に運ぶ。
「ね、乳首おいしい?」
「おいしい。ちょっと味違うんだね」
なんだろう。普通にプリンの味の感想を言ってるだけなのに、なんか恥ずかしい。
しかし、味は美味しかったのですぐに完食してしまった。
「ありがとう、チグリス。ちょっと元気出てきたかも」
「どういたしまして、次はショコラちゃんに食べてもらわなきゃ」
チグリスは食べ終わったお皿を回収すると、上機嫌にバーカウンターの奥へと戻っていった。
ショコラ頑張って、わたしは頑張ったよ。
わたしは、心の中で今ここに居ない仲間の身を案じた。
というか。
ショコラ遅いなぁ。何やってるんだろう?
わたしは伸びをすると、二階に上がる階段へと目を向けた。
段々と不穏な内容になってきましたね。
色々な意味で




