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ねこねこ戦記〜猫たちの異世界狂想曲〜  作者: 志雄崎あおい
2章 グレートキャットフォレストの戦い
40/229

40話 夕暮れのネコバス

「うーん」


 悩んでしまう。


 っていうか、めんどくさくない奴って言ったよね。すっごいめんどくさいんですが……。


「よし、決めた」


 わたしはバス停一つ分くらい悩んでから、自分のニャルラトフォンを取り出してタップする。


「とりあえず、ねこがまんで呪い耐性を取ってみる」

「本当に、トラウマになってるんだな」

「そりゃ、トラウマにもなるよ」


 ミケが覗き込みながら言うのに、わたしは流し目を向ける。

 あんなよくわかんない攻撃は、もうくらいたくないもん。

 ホラー映画で、テレビから出てきた髪の長い女の人に為す術なく殺される人みたいになるのは絶対に嫌。


「ええっと」


 ニャルラトフォンの画面をあれこれと操作するが、どうやったら魔法の契約が出来るのかよくわからない。


「まずはサイトに行くんだよ。ちょっと貸してみ」


 わたしが手こずっていると、ミケが横から手を伸ばして、携帯を取り上げようとする。

 わたしはそれをひょいをかわした。


「いいよ、自分でやるから」

 なんか携帯電話ってあんまり他人に触られたくない心理が働く気がする。

 とはいえ、やっぱりやり方がよくわからない。

 機械なんて今までテレビのリモコンくらいしかまともに使った事ないからなぁ。

 知らぬ間に、テレビの音量をマックスにして飼い主さまを驚かせるのが地味に楽しい。


 そして、ニャルラトフォンと格闘すること数十分。


「だめだー」


 わたしは敗北した。


「わたしが奢り高ぶってました。教えてください。お願いします」


 頭を垂れると、ミケが「しょうがないなー」と嗜虐的な笑みを浮かべて体を乗り出す。

 わたしも体を乗り出すと、手に持ったニャルラトフォンをミケに見せる。


「ん……」


 ショコラがもぞもぞと身じろぎした。

 起こしてしまったかと一瞬思ったが、むにゃむにゃと口を動かしているだけで、まだ眠ったままだった。

 結果的にショコラの前でごちゃごちゃやる事になってしまっているので、起こさないように注意しないと。


「ほら、まずはサイトに行かないと」

「サイトに……」

「いや、さすがにサイトはわかるよな?」

「わ、わかるに決まってるでしょ。馬鹿にしないでよ」


 ミケ向けてくる可哀そうなものを見る目を跳ねのけて、わたしはニャルラトフォンの画面をタップする。


「まずはニャルラトネットワークにアクセスして」

「アクセスして……」

「ここにネットのアイコンがあるだろ」

「わ、わかってるわよ」

「とりあえず押せ」


 言われた通りにボタンを押す。

 ぱっと画面が切り替わり、また言うとおりにすると画面が切り替わる。

 わたしは指示を出すミケの顔を時折、覗き見ながら目の前に次々と現れるボタンを押していく。


「どうした?」

「え?」

「俺の顔になんかついてるのか?」


 いつの間にか、ミケを見つめている時間の方が長くなっていたらしい。

 わたしは慌てて視線を下に戻す。ああもう、なんだか落ち着かない。きっとネコバスの毛皮のクッションがふかふか過ぎるせいだ。


「ほら、次はそのボタン」

「う、うん」


 トントンとリズムよく液晶画面を叩いていく。


「できたー」


 レクチャーを受ける事数分。

 ついにわたしは魔法会社と契約して呪い耐性の魔法を使う事に成功した。


 耐性魔法だから何も見た目変わらない。

 でも、嬉しい。

 わたしが歓喜のあまり、ニャルラトフォンをわっしょいわっしょいしていると、


「な、簡単だろ?」

「え、いや?」

「じゃあ、次は基本的な攻撃魔法の会社とも契約してみよう」

「いや、もういいけど?」


 とりあえずやってみたかっただけなんで。それはもう終わったんで。


「何を言ってるんだ。これからだろ?」

「いや、もういいって~」


 ミケの手がぐいぐい迫ってくる。なんでそんな乗り気になってるの。

 わたしがニャルラトフォンをミケの手から逃がしていた時だった。



 プルルルルル――――。



 わたしのニャルラトフォンが突然鳴った。


「で、電話が来たんだけどっ」


 また、勧誘の電話か? そう思ってディスプレイを見るとそこにはニャッバーンさまの文字。


「ミケ、ニャッバーンさまからだ」


 神から電話がかかってきた。


「出ろよ」


 ミケに促されてわたしは着信のボタンを押すと、恐る恐る電話に出る。


『ハロー、ニャッバーン』

「はろー、にゃっばーん」


 え、何この挨拶。思わず釣られちゃったけど。


『ルナよ。達者にやっているようじゃな』

「ニャッバーンさま!」


 電話の主は確かにニャッバーンさまだった。


「ニャッバーンさまどうして?」

『ふむ、今回電話をしたのは他でもない。ルナの飼い主さまについてじゃ』

「!」

『安心するがよい。ルナの飼い主さまの猫アレルギー治っとったぞよ』


 飼い主さまの猫アレルギーの原因となっていた魔物。

 それをわたしが倒した事で飼い主さまの猫アレルギーはちゃんと治ったのだ。


「よかったぁ」

『うむ、お主の活躍のおかげぞよ。お主の飼い主さまとニャルハラの悪しき繋がりを断つ事が出来たのじゃ』


 わたしがほっと安堵していると、ほっほっほっと受話器越しにニャッバーンさまが笑う。


『儂が導くのもここまでじゃ。ここから先は好きにニャルハラを進み、好きに戦うがよい。使い魔〈サーヴァント〉とは元来そういうものじゃ。では、武運を祈っておるぞ』


 その言葉と共にニャッバーンさまとの電話は切れた。


「なんだって?」

「飼い主さまの猫アレルギー治ったって」

「そうか、よかったな」

「うんっ」


 本当によかった。ミケが訊いてくるのに、わたしは目を細めると頷く。


「次は、ネコソギシティ入り口~、ネコソギシティ入り口~」


 そうしている間にネコバスは目的のバス停まで来ていた。

 降りるべきバス停の名前を、車内アナウンスが告げる。


 今回は行きの時とは違って、降りる場所は終点ではないので、ネコバスに止まる事を告げなければならない。

 どうするのかというと、ネコバスの側面をこしょこしょとくすぐるのだ。


「慣れたやつがやるより、素人の方が喜ぶからな」


 意味深な笑みを浮かべるとミケがやってみろと促す。


「どんな風にくすぐったらいいの?」

「出来るだけ、やらしく」

「やっ、やら……しくって……」


 顔を赤くして上目で見つめると、ミケが続ける。


「最近のネコバスはどうも刺激になれちゃってるらしくて、よくバス停を通り越しちゃうんだよな。だから、出来るだけやらしい手つきで、しっかりと性感帯を刺激して感じさせてやるのがコツなんだ」


 なに、そのめんどくさいバス。


「ほら、早くしないとバス停通り過ぎるぞ?」

「わ、わかったわよ」


 感じさせればいいんだよね。感じさせれば。

 心の中で繰り返しながら、わたしは覚束ない手つきで柔らかい毛に覆われたネコバスの側面の壁にそっと触れると、毛を梳〈す〉くように、優しく掻いてあげた。


「きゃっ」


 すると、ネコバスの体がビクンと大きく跳ね上がり、車内が大きく揺れた。


「ふぁ……?」


 衝撃に驚いて、ショコラが寝起きの声を上げる。

 しばらくして、車内アナウンスが流れた。


「いい手つき~、いい手つきでございます~。車内揺れました事を謝罪申し上げます。次停まります」

「あ、着いたんですか。ショコラってばすっかり寝ちゃってたみたいで。ってどうかしたんですか?」

「え、いや、にゃはは。別になんでもないよ」

「? そうですか」


 わたしが手をヒラヒラと振っていると、ショコラは不思議そうな顔をしながら目を擦った。

 程なくしてネコバスが停まり、扉がにゅっと開く。


「さ、行こう」


 わたし達はそれぞれに荷物を持つと立ち上がる。

 ネコバスを降りるとすっかり空は夕暮れ模様になっていた。

とりあえず一巻分を投稿する事ができました。


皆様のおかげです。

お読みいただいた方、評価、感想、レビュー、誤字脱字報告ありがとうございます!


これからも物語は続いていきますのでよろしくお願いします。


もしよかったら、広告の下にある評価フォームから評価、ブックマークよろしくお願いします。

入れてもらえるとと、作者がめちゃくちゃ喜んではりきって書くようになります!



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― 新着の感想 ―
[良い点] こんにちわ。楽しく読ませていただいております! けなげで守ってあげたくなるショコラちゃん、どんどん強くなるルナちゃんの痛快な活躍を追っていたらあっという間に一巻分。この後も楽しみです!
[気になる点] そういえば。 ネコバス関係無いですけど、チヒロちゃんはア○タカとサンの子孫だってね(裏設定(ォィ [一言] あの2次元と3次元の壁突破しちゃう女性の呪術……まさかほとんど撲滅(残ってる…
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