27話 グレートキャットフォレストの戦い・後
突然、敵地のど真ん中に飛び込んできたわたしを中心に、動揺が波紋のように広がる。
防戦を決め込んでいた相手の方から突っ込んでくるとは全く想定していなかったのだろう。
戸惑いと躊躇から生まれる隙。
それを逃さずわたしは棒立ちとなっていた近場のMTTBを一体袈裟に斬る。
更に間髪入れずに別のもう一体にも斬撃を加える。
剣の華を咲かすかのように、白刃を煌かせて剣を振るえば、さらに三体の敵が地面へと崩れ落ちる。
まるで爪とぎをするための木を探すかのように、目に付いた相手を次々に斬っていった。
「――――!!!!!」
ここに来て事態を飲み込めたのか、俄かに動き始める。
でも、もう遅い。一度崩れた陣形はそう容易くは戻らない。
恐慌しながら鋭い爪を振るってくる。
その攻撃をわたしは最低限の動作で交わすと、逆にその手首を切り落とす。
そして、一歩踏み込むと回転しながら胴を薙いだ。
周囲を取り囲むように五体の人狼がこちらに殺気を向けていた。
先ほど薙いだMTTBは今まさに崩れ落ちようとしていたが、わたしはそのMTTBの体に剣を突き立てると取り囲む一体に向けてそのまま押しつける。
串団子のように、壁にしたMTTBの体から突き出た先端がもう一体に突き刺さった。
しかし、それだけではさすがに致命とはならない。
目の前の死骸を振り払おうと足掻くMTTBを尻目に、わたしは一旦刀の柄から手を離し、そのまま体を横にスライドさせる。
すると、今までわたしが立っていた場所を超速の爪が通り過ぎていった。
刀が体に埋まり動けなくなったと判断したわたしの背後を狙い柔軟な筋肉のような蔓のようなものをバネのように使い跳ね飛んできた固体がいたのだ。
しかし、その巨大な爪はわたしではなく、死骸を押しのけようとしていたMTTBの頭部を割られた胡桃のように無残にも粉々にした。
わたしは体を反転させると、右手で死骸の体に埋まったままの刀の柄を捉えると、引き抜きざまに飛び込んできたMTTBの腰を両断する。
「ふっ……!」
さらに秩序無く攻め込んでくる三体を処理すると、わたしは周囲に目を向け、リーダーを探す。
これまでの戦闘からリーダーが倒されると編隊が総崩れとなり相手はグダグダになるのは確認済みだ。
「いた!」
遠くに陣取る一際大きな、狼男の形をした木樹の異形。
今まで見てきた同種よりも遥かに巨大。もはや狼男というよりもゴツ過ぎて熊にみえる。
その姿は、この森に住み着いたMTTBウェアウルフ全体のリーダーであることを疑わせないものだった。
その前にはソレを守るように、数体のMTTBが立ちふさがっているが、そんな事は関係ない。
わたしは姿勢を低くすると、そのまま一直線に駆け出した。
途中、進路妨害してくるMTTBを一切足を止める事なく切り捨てる。
途中、爪が掠って肌が切れる事もあったが、それも気にしない。
わたしが怪我をすると、すぐに回復魔法〈ライトヒール〉の光によって回復が施されるからだ。
「はぁぁあああ!!!」
体をバネのようにして跳ねた。
剣を上段に構え、勢いのままに敵の頭に叩きつける。
手に掛かる尋常じゃない抵抗を無理やりに下へと押しつけ続け、巨体に縦一筋の大きな傷をつけるもまだ足りない。
MTTBの振り上げた爪がウネウネと気持ち悪く蠢きながらドリル状に変形する。
「――――!!!!!!」
声とも呼べないような咆哮。
突き出されるドリルが地面を抉り取る。
わたしは間一髪のところで回避すると、地面すれすれに虎伏し懐に潜り込むと、両の足をぶった切った。
グラリと相手の体勢が崩れる。
しかし、斬られた足の断面からはイソギンチャクのような触手が蠢き切断された部分を再び結合させようと絡み合いつつあった。
まだ、後一押し。
「いっけぇ!」
声を上げると共に、白刃を巨体の胸に突き立てる。
「リィィィ――――……」
ノイズとも取れるような末期〈まつご〉の声。
悲鳴を皮切りにボロボロと巨体が崩れ落ちていく。
そして、それは核となる結晶化マタタビを残して、塵となり風に消えた。
お読みいただき、ありがとうございます!
もし『面白い』『続きが気になる』 『応援したい』と思っていただけたらぜひ【評価】と【ブックマーク】をお願いします。
「広告」↓にあります【☆☆☆☆☆】を押していただけると評価ボイントが入ります。
ご評価をいただけると、とても励みになりますので、よろしくお願いします。




