26話 グレートキャットフォレストの戦い・前
こないだ私ねー。盛岡でわんこそば食べたんだよ。
食べても食べても、おそばが出てくるの。もういくら食べてもお椀におそばがよそられてきてね終わんないの、つってもルナにはわかんないかぁ。
いつか、飼い主さまから聞いた話をわたしは思い出していた。
飼い主さま、わたし分かったよ。これがわんこそばなんだね。
「はぁっ!」
一息で二体一気に切り捨てる。しかし、その屍を踏み越えて次のMTTBが襲い掛かってくるから、それも斬る。
さらに、その屍を踏み越えてくるやつも斬る。まさにおかわりエンドレス状態。
一体どれくらいの敵を斬り捨てたのか。もう数えるのもめんどくさいくらいだった。
斬っても、斬ってもきりがない。
主に敵と戦っているのは、わたしとミケの二人である。この二人を前衛として、後衛にはショコラとリィリィが待機している。
わたしは回転するように剣を横に薙ぎ、わたしを無視して左右の隙間から後ろに侵入しようとするMTTB二体を一気に切断する。
今の所、一体も後ろに通していないがいつまで耐えられるか分からない。
敵の行動にも、変化が生まれてきていた。
最初こそ前線に出でいるわたしとミケを殺そうと律儀に襲い掛かってきてくれたが、戦闘が長引くにしたがって次第にわたし達の事を無視して奥へ行こうとする個体が何体か現れるようになっていた。
おそらく、わたし達に敵わないと判断した固体が、先に奥にいる弱い二人を殺そうという思考に至ったのだろう。
もしくは、わたし達がそれを阻止するために大きく無駄に動くという事を学習されてしまったのかもしれない。
いずれにしても、ただ単純に向かってきてくれた頃よりも、イレギュラーな行動が増えて戦いづらい事この上ない。
今も、わたしの事を無視して脇を通り抜けようとする敵を袈裟に斬る。さらにその裏をかいて後ろから通り抜けようとするMTTBを振り向き様に斬る。
ミケの方をちらりと見ると、向こうも対応に苦慮しているようだった。
その時、MTTBが二体大きくジャンプする。
そして、その下からは三体のMTTBが突進してくる。
その中でわたしを攻撃しようという意志を持っているのは地上の一体のみ、その他はいずれもわたしを攻撃しようとしているのではなく通り過ぎようとしている。
やばっ!
いくらなんでも自分に向かってきているならともかく、スルーしようとしている相手を五体同時に相手には出来ない。
どんなに刀を早く振っても、一振りで生み出される斬撃は一つ。そんなの当たり前の事だ。なのに、その時、わたしの頭の中には不思議な考えが支配していた。
思いを込めて振ったら、一振りで斬撃が五つになったりしないかな?
それは一種確信に近い閃き。
すでに、敵はすぐそこまで迫っていた。
にも関わらず、わたしは刀を鞘に納める。その動作に疑問は無い。
そして、わたしを刺し殺そうと鋭い爪を突き出すMTTBに向けて鞘から刀を抜き放つと、目にもとまる事はない。鋭い斬撃を浴びせた。
「――――っ!!」
瞬きにも満たない一瞬の間に生み出される五つの斬撃。
抜刀によって斬られたわたしの目の前のMTTBはもちろんのこと、わたしの横そして上を通り過ぎようとしていたMTTBもまた、横一閃に切断され上半身と下半身が別々の物体となって倒れこむ。
背後からはボトボトと肉塊が地面に落ちる音が聞こえていた。
「はっ――――」
はぁはぁ。どっと疲れがやってきて、わたしは荒い息をつく。まるで、長い時間水中で息を止めていたかのようなそんな感じだった。
今の感覚は一体…――。
「おい!」
ミケの鋭い声に、わたしはハッと顔を上げる。気づけば、すぐそこまで敵の爪が迫っていた。わたしは慌てて切り上げてこれを処理した。
「はぁはぁ……」
危なかった。もう少しでやられる所だった。
「大丈夫か?」
声を荒げるミケに、わたしは平気である事を示すために頷きを返す。そんなわたしの様子に安堵したのか、ミケはふぅと息を吐き出すと、
「技を閃いたようだな」
「技を……閃く?」
ミケの言葉に、クエスチョンマークを浮かべながら流し目を向ける。
「使い魔〈サーヴァント〉の中には、戦闘中に技を閃く奴もいる。俺は経験ないからよく知らんけど」
知らんのかいっ。
「ま、ともかく悪いことじゃないよ。よかったな」
「そっか」
ミケの言葉は少なからず戸惑っていたわたしの心を落ち着かせてくれた。
おそらく表情から動揺を感じ取って声を掛けてくれたのだろう。
「ま、それはいいとして、周りを見てみろ」
ミケに促されて周りを見る。
「あれ?」
あれだけ居たMTTBもすでに、残り三十体ほどに減っていた。
まあ、それでも決して少ないわけではないのだが、先ほどまで数百体がひしめき合っていた事を思えば、思わず少なっ! と言ってしまえる程の数である。
それに呼応して、敵の行動パターンも更に変化していた。
わたし達から一定の距離をとり、周りを旋回するように動きながらこちらの出方を伺っている。それは、これまで戦ってきたMTTBウェアウルフ達の行動パターンだった。
こうなると、向こうから仕掛けてくることは中々ないだろう。
「もう守りは俺一人でいいから。ルナは攻撃に転じてくれ」
攻めてこないなら、こちらから攻める。ミケの言うことは最もなのは分かるんだけど、でも、ちょっと待ってまだ呼吸が……。
不意にぼぅっと体が淡い光に包まれた。
足湯に浸かっているぐらいの勢いで、体が軽くなる。
それは、ショコラの回復魔法だった。わたしはショコラを見やると、ショコラはぐっと頷く。わたしはグッジョブと親指を立てた。
いやーヒーラーがいるっていいね。これはみんながネコ科なのにパーティ〈群れ〉を組んで行動してるのも分かるわ。
わたしは一度大きく深呼吸し、呼吸を整えると、ミケを見た。
「いけるか?」
「うん、大丈夫」
「んじゃ、適当に引っ掻き回してきてくれ」
「皆殺しでいいの?」
「出来るならな」
「りょーかいっ!」
二回ぴょんぴょんと小さく跳ねると、弾丸のように勢いよく敵のど真ん中に飛び出した。
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