23話 クエストの説明
グレートキャットフォレストはニャルハラ平原に跨る巨大な樹海である。
日の光を遮るほどに巨大な針葉樹林が立ち並び、その入り口は森に立ち入った者を飲み込むべく暗く口を開けている。
実際、森に立ち入った者で遭難者となったものも多いらしく、注意書きの看板も立てられている。
そんな森の入り口の前に、おそらくネコエルフ達の長であろう男性のネコエルフが立ち、クエストの詳細を説明していた。
長といってもおじいちゃんとかではなくて、見た目は普通の若い青年。しかし、ネコエルフというのは実際の年齢と見た目年齢が一致しない種族なのだとミケが教えてくれた。
「これから皆さんには、樹海に入ってもらい森に住み着いたMTTBを討伐してもらうことになるわけですが、現在樹海に居るMTTBはランクにしておよそB級。
ウェアウルフ型とでも呼びましょうか、狼男のような姿形をしているものです。
もちろんMTTBは姿を変幻させる名状し難き存在でもあるので、その限りではありませんが、ここでは便宜上MTTBウェアウルフと呼称し、その特徴についてご説明します」
そう言うと、ネコエルフの男は、その樹海に住み着いたというMTTBウェアウルフなる化け物の説明を始める。
彼の説明を要約すると、大体、足が速くて、爪なんかもすごくて、基本群れで行動しているよという内容だった。
また、MTTBの体は基本樹木である、幹や蔓の集合体であるその体は、姿を自在に変え、時には地中に根を張り思わぬところから攻撃してくる事もある。
この辺は、この世界に来たばかりの時に戦ったMTTBと一緒なのだが、今回のターゲットであるMTTBウェアウルフは、その手の奇怪な攻撃はあまりしてこないらしい。
基本的には群れで囲い込み、その優れた身体能力で相手を殲滅する。
その特殊性のなさがB級という評価の所以であり、身体能力のみをみればB級に収まる敵ではないので、そこは油断しないで取り組んでほしいという事だった。
「もっとも、今日集まってくださったのは、優秀な使い魔〈サーヴァント〉の方ばかりだと聞いておりますので、その辺の心配はしておりません。
存分に力を発揮していただければ、森にはびこるMTTBを一掃し、再び森に平穏を取り戻してもらえるものと確信しております。また、我々と致しましては、使い魔〈サーヴァント〉の皆さんにより一層のやる気を持って事にあたっていただく為に、一番多くMTTBを倒したパーティの皆さんには特別報酬を御用意しております」
おおお、と会場に歓声が上がる。
「集計は、こちらのネコエルフ野鳥の会の皆さんが公平を持って行いますので、皆さん安心してガンガン狩っちゃってください」
もう一度、会場がおおおと大きく轟く。
説明をするネコエルフが指し示す先には、首から双眼鏡をかけているネコエルフ野鳥の会の猫達が笑顔で手を振っている。
ここら辺は、事前に貰っていた情報と一緒だった。一番になったパーティには、特別な報奨が出るから競走になると、ヤマネコが言っていた通りだ。
それは、パーティ間の協力など一切ない事を現していた。つまり周りは全部敵。
本当の所、協力させるのと、競争させるのはどっちが効率いいのかは分からないけど、ネコエルフ達は後者を選んだわけだ。
そしてもちろん、わたし達も狙うのは一番であるのだから、わたし達もこの殺気だったギスギスとした空間を構築するにあたっての一助を為していたのだった。
「最後に、樹海は非常に危険な所です。不用意に歩き回れば遭難は免れません。
また、この入り組んだ木々の中でMTTBを探し出すのは非常に困難と考えました結果、索敵に長けた森に精通したネコエルフを皆様方のパーティに一人つける事に致しました。
もちろん戦闘の邪魔は致しません。守る必要もありません。嫌なら断ってもらっても結構。そこは自由です。それでは、御武運をお祈りしております」
そう締めくくると、ネコエルフの長ははけていった。
説明が終わると、パーティ達が各々の判断で森へと入っていく。
「ねぇ、わたし達も早く行かなきゃ。遅れちゃうよ」
半数以上のパーティがすでに森の中に入っていってしまったが、わたし達は未だ、その場に留まったままだった。
わたしは焦りながら、その様子を指差すがミケは腕を組んだまま動こうとしない。
「ねぇ、ねぇ」
わたしはミケの袖をぐいぐいと引っ張る。
「ちょっと待ってろよ。多分、もうすぐ来るだろ」
「来るって何が?」
「お前さぁ、話聞いてた?」
「うにゃ?」
わたしがキョトンとすると、ミケが青筋をピクピクと振るわせる。
「そういえば、ネコエルフの協力者を一人つけてくれると言ってましたね」
ああ、そういえばそんな事言ってたかも。話長いから、ぶっちゃけ途中から聞き流してんだよね。しょうがないよね。だって猫だもの。などと心の中で言い訳していると、その隣でショコラがフォローしてくれる。ショコラのフォローにミケは頷くと、
「樹海は普通にしていても方向感覚が狂うからな。ネコエルフの助けがあるなら、あった方が絶対にいい」
「でもさぁ……」
広場に残っているパーティはもうまばらだ。明らかにわたし達は出遅れていた。
アリエル達の姿ももうとっくの昔に森の中に消えてしまっている。これで焦るなっていう方が無理だと思う。
「ほとんどのパーティはネコエルフさんの助けは必要ないと思ってるんでしょうか?」
「ま、使い魔〈サーヴァント〉は基本自分本位な生き物だからな。お荷物が増えるくらいにしか思ってないんだろう。ネコエルフの長は守らなくていいと言っていたが、守らないわけにもいかないし。それに、樹海を普通の森だと思ってるんだろう」
「はー、ミケさんってなんか熟練の猛者って感じですよね」
ショコラが感心したように言う。
「おお、もっと褒めてもいいぞ」
「さすがミケさんです」
「もうひと声頼む」
「すっごいです。みんなと違う選択が出来るなんて、なかなか出来る事じゃないです!」
承認欲求の塊かよ。
「はぁ、早く来ないかなぁ」
ミケとショコラのやり取りを眺めながらそわそわしていると、
「お待たせアルー」
ぴょんぴょんと跳ねながら、小柄なネコエルフの女性が駆けてきた。
「どうもどうも、ネコエルフのリィリィアルね。リィリィって気軽に呼んでほしいアルー」
胸に手を当てながら言うと、リィリィと名乗ったネコエルフはえっへんといった風に無い胸を張った。この人が、わたし達について来てくれるネコエルフらしい。
これまであったネコエルフ達の印象から、勝手にネコエルフという種族は丁寧な性格をしている種族という印象を持っていたが、それは勘違いだったようで、リィリィの印象は身長の低さもあって、小動物のそれだった。
「リィリィね。よろしく。わたしルナ。じゃ、行こっか」
ちょっと素っ気ない気もするけど、ただでさえ遅れているのだ。ここで悠長に親睦会を開いているわけにもいかない。
わたし達は、それぞれ簡単な自己紹介をすると、先に森に入っていったパーティの後を追いかけるように、足早に森の中に入っていった。
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