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ダンジョンコアの闘争  作者: ライブイ
4章 染みわたる意志
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閑話 13 賭博の国と似ている女性

今週も閑話です


本来は本編の内容ですが、よくよく考えれば出てくるのが分割体なので閑話にしました。

そして次週も閑話です。一話に収まらなかった。


予定通りに進まないよぅ……

 戦乱が続くトトサワルモ地方の一角にギャラルホルンという賭博国家が存在する。

 セイがこの世界に転生したラキア国の隣にあるチヨウ国。そのさらに一つ隣にある国だ。国内に三つのB級ダンジョンと一つのA級魔境を抱えるために冒険者を多数抱え、国家も冒険者を支援することで発展した経緯のため冒険者を象徴するように乱雑な武力とガサツな雰囲気を漂わせる特徴を持つ国でもある。


 通常の迷宮都市や迷宮国家はダンジョンや魔境からとれる資源を国家の名産とするが、残念なことにギャラルホルンにあるダンジョンも魔境も、ゴブリンやオークといった亜人系の魔物ばかりで旨味ある素材ではなかった。筋肉の筋を弓の弦にしたり、臓器を錬金術の材料にしたりは出来るが、危険度のわりには合わない。


 国家を運営する者たちは考えた。どうすれば我が国は大きくなるのだろうか。どうすれば周辺国家より上の財力や軍事力を持てるだろうか。


「次が本日最後の試合だ。剣の扉より現れたのはC級冒険者……暴竜のセイーーー!!!!!」


 そうして出来上がったのがこの国のもう一つの特徴。人間同士の闘技場である。

 冒険者は何があっても自己責任の自由業である。騎士や兵士のように安定した仕事と収入がない代わりに、どこで何をしていてもいい。当然、死ぬ危険がある闘技場に出場することだって出来るのだ。

 そんな話を聞いたセイも面白そうだとやってきたのだ。


(しっかし、こいつらがいるとは予想外だったな。元気そうで何よりだ)


「何へらへらしてるんだでめぇ!」

「やっぱり、私たちを追ってきたの!?」

「陰湿な人族め、俺たちはもう自由になったんだ!邪魔はさせない!」


「誤解だ。俺はお前たちを追ってきたのではない。遊びに来ただけだ」


「信じられるか!」

「じゃあ何か!?俺たちはこの国に来るのに一年以上もかかったのに、同じ国に偶然遊びに来たってのか!?」

「そうだ」

「ふざけたことを抜かしてんじゃねぇぞ!」


「おーとぉ!?セイ選手はどうやら、新進気鋭の獣人たち、『獣王の牙』の闘士たちと因縁があるようだ!これは盛り上がりそうだ~~!!」


 わーわーと盛り上がる観客を他所に、セイは物思いにふける。対面に居る十人の獣人たちには覚えがある。

 二年前にセイは奴隷にされていた獣人たちを拾い自治区を作った。その際にセイに反感を抱いて出ていった二十人の獣人たちだ。


 差別とは片方がもう片方にするものだが、差別感情は双方共が抱いてしまうもの。百年以上にもわたって人族に差別され続けた獣人たちは五十人全員がセイに首を垂れたわけではなく、二十人近くが出ていったのだった。

 その中には数少ない男性の獣人もいた。すぐに他の自治区も作って解決してとはいえ、三十人の女性の中で男性が自分だけというのは居心地が悪いので残って欲しかったから残念だった。そのためよく覚えている。


「お前の噂はこの街にも届いているぞ……!『八大災禍』とかいう組織に加わり、世界征服に乗り出したそうじゃない!」

「その先兵は獣人らしいな!やはりお前もあの奴隷商人たちとなにも変わらない!」

「残った彼女たちは首輪を付けられ家畜になったのね。さっさと逃げて正解だったわ」


「いろいろと間違っているんだけど……ん-……まーいっか」


 セイは情報の間違いを訂正しようかと思い口を開きかけたが、まあいいかと何も喋らず剣を構えた。

 拾った義理もあって心配していたが、今では独立して元気にやっているようなので無理やり手を貸してあげる理由もない。


 死ぬこともあるこの闘技場で、この試合は無傷で生還させてあげることを餞別にした。





「儲けた儲けた。今日はどの賭博で遊ぼうかな」


 本日の試合に全部勝利して一枚の金貨を五百枚にしたセイは、一夜で全部溶かそうと思い別の賭博場に来ていた。

 賭博国家の名を持つこの国の賭博は闘技場だけではない。カードにすごろく、レースにくじ引き、魔物蟲毒に泥船に剣抜にルーレットなどなどとこの世界のおよそ全ての賭け事で遊ぶことが出来る。


 セイが遊びに来たのは比較的グレーな店。他の国ではまず間違いなく違法である危険で非倫理的な遊びもあるが、今日はそこまで不健全な気分ではなかったのだ。


「ん、なんだあれ」


 セイの目に留まったのは、ゲームをしている一団。正確にはその中にいる場違いにも修道女の格好をした一人の女性だった。

 遊んでいるのは地球で言えばトランプのポーカーだろうか。勇者が広めたという十二種類各四枚のカードで役と呼ばれる組み合わせを作り、一番強い役を作ったものの勝ち。そういうゲームだ。


 しかし


(あのカード、流し込まれた魔力の属性で数字が変わるマジックアイテムだな。イカサマじゃん)


 女性は気が付いていないのだろう。というか魔術にそれなり以上に覚えがある者でなければ気が付かないのだろう。

 不正が行われるのは、実はこの国では実質的に合法のようなものだ。取り締まる法は無く、見抜けなければ見抜けないものが悪い。そういう暗黙の了解がある。

 あの女性にどのような事情があるのかは知らないが、席に積まれた金貨二百枚くらいの価値がありそうなコインが全て没収されるのは間違いないだろう。泣いている。可哀想に。


「あ……あぁ……ぁぁぁぁ――」

「つーわけだ。残念だったなヴィクティちゃん。これで金は全部なくなったわけだ」

「また頑張って貯めるといい。ま、とはいっても借金の期限は今日までだけどな。いやー残念だった。けどおとなしく全員奴隷ってことでいいよね」

「ぃ、いや!わ、私だけでなんとか――」

「またまたーそんな無茶を言わないでくれよ。孤児院の全員含めて奴隷になるって契約だよね。ダメだよ。約束を破っちゃ」


「邪魔するよ」

「あん?今忙し――うわっ!?暴竜!?」

「なんであんたがこんなとこに!?」

「遊びに来たんだよ。そこのお姉さん。ちょっと顔見せて。あと手も」

「へ?え?」


 セイはヴィクティと呼ばれる女性の顔を覗き込む。距離が近く、もう少し近づければ鼻が触れ合ってしまいそうだ。しかしセイは恥じることなく何かを確かめるようにじっと真剣に見つける。


「あの……」


 女性が何か言いたそうにしているのを無視して、次は手を取り何かを確かめるように見て、触れる。


「綺麗だな」

「へっ!?い、いや、私なんて全然!傷だらけで、罅もあって綺麗だなんて……」

「綺麗な手だよ。よっほど家事をしていないとこうはならない。冒険者や騎士とは違うけど、戦士の傷だ。美しい」

「そっ、それは……ありがとうございます?」

「おっさん。借金っていくら?俺が払うよ」


「暴竜さん。そのっ、そういったことは俺たちも困るんですが……」

「知らん。お前は確か……サイモン組のターペンだな。何か言われれば俺の名前をジョゼに言え」

「……ボスの名前を出されりゃ、降参です。分かりやした。ではこの女の借金、金貨千枚いただきましょう」

「分かっ――——————……いや払えるけどさ、何をすればそんな借金できるんだよ。貴族の年収くらいあるぞ」

「違うんです……先代の院長が、その……」


 あまりの金額に呆れながら、セイは今日稼いだ分と予備の財布から支払い、ヴィクティを連れて彼女の運営している教会に向かった。





「……助けていただき、ありがとうございました」

「ん?ああ。いいよいいよ。頑張っている人は好きからね。君、栄養も睡眠時間も足りてなさそうなのにあんなとこに入ってまでお金を稼ごうとしてたのって、君以外の誰かのためでしょ?」

「は、はい。私が運営している教会は孤児院も運営しているですが……先代の院長が作った借金のせいで、みんな奴隷にされてしまいそうだったんです……改めて、本当にありがとうございます。お金は何年かかっても必ず返します」

「気にしないでいいよ。というのは無理だろうけど、ま、気負わないでくれ。頑張っている人は好きだし、綺麗な人ならもっと好きだ」

「あう……」


 ヴィクティは恥ずかしがるように、顔を俯かせる。

 可愛らしいものだ。白い肌が羞恥で紅く染まり、銀色の髪と美しさを引き立て合っている。セイの周囲にはあまりいない戦士より家庭人という言葉が似合いそうな女性だ。


 本当に


「本当に、ララそっくりだ……」

「へ?」


 万感の思いを込めて、言葉がセイの口から漏れ出す。

 違うはずだ。ララは金髪で、ヴィクティは銀髪。青い衣装と白い衣装。強い意志と怯えて震える姿。野に吹く風の明るさと月明りの様な美しさ。何もかもが違う。

 しかし、不思議なことに、セイは「ララに似ている」という思いを抱いていた。


「ララ、というのは?」

「ああ、すまん、口に出ていたのか。ララはずっと前に死んだ相棒の名前で、君にどこか似ている気がするんだ」

「そっ、そうですか……そうですか…………」


 ヴィクティはどこか残念なような、納得したような、セイにはいまいち分からない声色で返事をする。


「あっ!教会が見えてきましたね。私が寝泊まりしているのは隣の小屋です。よろしければ泊っていきませんか?夕飯もぜひ」

「いやお礼にしてもそれはさすがに――」

「子供たちも私と同じ気持ちで、お礼を言いたがると思うんです。私を心配してよく訪ねて来る人たちも。……もちろん、大した小屋ではありませんが」

「……む、むぅ……では、お世話になろう」

「はい!」


 セイはヴィクティに連れられて、小屋に入っていった。

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