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ダンジョンコアの闘争  作者: ライブイ
3章 豊穣の国
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閑話 5 普通の冒険者パーティーと、少し普通じゃない荷物持ち

今週は短いです。


短めの閑話を二つ投稿するつもりでしたが、書けませんでした。

これからも最低でも週に一度という目標で頑張っていきます。

 冒険者パーティー『五つの力』。それは二年前にパミル村を飛び出した若者たちが作ったパーティーの名前だ。


 剣士のリク。槍士のルーファス。盾を使う守護戦士のカチャ。弓使いのネビュラ。そして荷物持ちのベルナ。彼らは同じ村で生まれ育った少年少女であり、同じ日に村を出て、同じ日に冒険者になった。

 きっと死ぬのも同じだろう。そう思う程度には絆が深い仲だ……ったはずだ。


 今は違うが。


「なあ、やっぱり俺が言うよ。俺がリーダーなんだから」

「馬鹿を言うな!ベルナを連れ出したのは俺たち全員の総意だったはずだ。言うなら、全員で伝えたほうが……」

「ベルナだって自分が冒険者に向いていないって気が付いているわよ。だからそんなに気負わなくても大丈夫……なはずよ」

「私は言いたくない。ベルナったら最近は頑張っているみたいで、可哀想で伝えられないわ」


 リク、ルーファス、カチャ、ネビュラの四人は、ベルナを故郷に帰そうと相談してた。


 そもそも彼ら四人は現在十七歳。ベルナは十五歳だ。

 四人は成人年齢である十五歳の時に村を出た。この時まだ十三歳だったベルナが連れてくるつもりはなかったのだが、ある理由から連れ出すことにしたのだ。


 なぜなら、そのまま村に居れば、間違いなく村長の妾にされるはずだったのだ。


 この世界の農村は地球がそうだったように子供も労働力として扱っている。赤子は親に背負われながら畑で育ち、子供になると一人で作業をし、大人になると親や村長たちの話し相手で結婚相手が決められる。

 もちろん結婚してからも村に住むため潤滑な人間関係を保つために本人同士の好意も重要だし、都会に行けばまた事情が違うが、まあ基本的には結婚は個人ではなく家や村といったコミュニティの問題なのだ。


 初代勇者たちの神話も伝わっているため一対一の恋愛も憧れの対象だが、そのために魔物に襲われるかもしれないリスクを犯してまでして他の村に移住するのは危険すぎるのだ。

 魔物の影響もあり大半の人間は生まれた町や村から出ることはない。これは地球で言えば中世の離島に住む感覚に近いのだろうか。


 しかし、常識と理想は違うもの。

 村の広さも家の数も、畑で作れる野菜の量も有限だ。村を拡張するのも限度があるし、街ほどの規模にするのにも関門が沢山あるし、時間がかかる。

 そのため子供をたくさん作っても、長男などの上の子供たち以外は口減らしも兼ねて街に行くのが基本なのだ。


 商会や鍛冶屋で丁稚奉公をするもの、新しい開拓村に移る者‥‥‥そして、冒険者になる者たちが出てくる。


 四人もそんなありふれた経緯で冒険者になったが、困ったことに、四人が出てしまうと村の子供がベルナだけになってしまうことに気が付いた。

 子供を作るタイミングは村で決めるが、この決まりに絶対的な強制力はない。畑に種を植えれば芽が出るように、仲の良い恋人同士が性交渉をして、避妊に失敗して、もしくはそもそも知識が無くて、などのいろいろな要因が重なって子供が出来てしまうこともある。


 ベルナはそうして、九歳の父親と十二歳の母親の間に生まれた子供だった。


 そうした、いわば事故で生まれたベルナは村で浮いていた。嫌われているわけではないし、迷惑者として扱われているわけでもない。しかし一人だけ年齢が離れたているため、上の子供と一緒に扱えばついて行けず、下の子供と一緒に扱っても遠慮してしまう。扱いに困ってしまったのだ。


 そういった『扱いに困る』の一環が、結婚相手だ。

 普通は同じ年に生まれた相手と結婚させるのだが、ベルナにはいない。上の世代も下の世代も、『空き』が居ない。


 そういう時は、村で最もお金持ちの人が妻の一人に迎え入れることが一般的だ。


 この世界の結婚制度は基本的に一夫多妻制だ。法律で規定されているわけではないが、自然とそうなったのだ。村を出れば魔物と遭遇するかもしれないこの世界では、男女の人数比率が偏っているからといって人を行き来させることは危なすぎる。

 そのため裕福な人が複数の妻を娶ることは普通のことであり、文化なのだ。


 四人にとってもそれは本来は異論はないはずだったが、村にいる元冒険者のおじさんや、幼いころに村に来た冒険者に影響を受けたため『外の世界』や『自由な冒険者』への憧れが強かった。


 そんな彼らにとってベルナは村に囚われた鳥のように哀れに映り、周囲を説得し、まだ成人していなかったベルナも連れて、あの伝説の聖領ユグドラシルとの最前線の街チルクに上京したのだ。


 冒険者になり、二年でE級。ランク2という一般人では倒せない魔物を倒せる水準なので、ようやくまともな冒険者を名乗れるわけだ。

 ここから順調に強くなって、二十五歳ごろにはD級になれれば上出来だ。もし三十歳ごろにはC級に上がれれば、農民出身の中では上位の立身出世だろう。故郷に帰れば英雄の凱旋であり、帰らずに小さい貴族から声が掛かるかもしれない。

 まさに冒険者ドリーム、夢のある話だ。


「やっぱり、ベルナには戦いの才能がないんだ」

「そうね。あの子だけ、どの教官に教わっても何のスキルが伸びないなんてな」


 四人の間では、もう議論は終わっていた。連れ出した責任はある。しかし、一生面倒を見るほど大きな責任ではない。

 ベルナはもう十五歳。この世界では結婚適齢期だ。冒険者として成功出来そうにないのだから、いくらかの手切れ金と一緒に故郷に送り変えそう。そうだ。それがいい。


 そう考えていたが、最近は事情が変わった。

 それは今日、聖領ユグドラシルの上層でコボルトの群れと遭遇してしまった時の話だ。


「ベルナのやつ、あんな才能があったのか――っ」


「せいやぁっ!」


 剣士にしてリーダーのリクの目の前で、ランク2のコボルトが首を掴まれてぶん回され、そのまま首をへし折られて死亡した。

 よく見ると、その死体の首には糸が巻き付けられていた。


 【操糸術】。糸を操る武術だ。


「リクお兄ちゃん!ぼさっとしない!早くそのコボルトを倒して!」

「お、おう!」

「カチャお姉ちゃんはもっと前に出て!大きな盾は壁じゃないの!それで押しつぶす!早く!」

「え、ええ!」


「ルーファスお兄ちゃんはもっと距離を取って!詰められすぎ!槍の間合いが死んでるよ!」

「す、すまん」

「ネビュラお姉ちゃん!もっとも慎重に矢を撃って!当たらないなら居場所を教えるだけ!それと矢じりを潰さないようにして!矢もただじゃないんだよ!」

「や、やってみるわ!」


 指先から合計で十本の糸を操り、ある時は魔物を妨害し、ある時は喉や間接といった皮膚が薄い場所を切り裂く。

 そしてまたある時は糸を束ねて鞭にして【鞭術】を使い、またある時は近くの大木を引っこ抜きモーニングスターの様に魔物を圧殺する。


 仲間に命令を出すその姿は一端の戦場指揮官であり、「最近は頑張っているんだな」くらいにしか思っていなかった四人からしてみれば、気弱でおとなしかった妹が突然発狂したかのような困惑っぷりだ。


 そういう風に思われているなと自覚しつつも、ベルナの心中はセイから教わった戦闘訓令よりは楽だという強気な思いで荒れ狂っていた。


(先生!私につけてくれた訓練、どれだけ無茶だったんですか!)


 セイの教えは非常にためになる話が多かった。


『いいか?最初に心得として言っておくが、冒険に出るときは何においても生還を一番に考えるんだぞ』

『生還ですか?』

『そうだ。命あっての物種。死んだらそれで終わりだ。なんなら傷一つ負わないくらいを目標にしたほうがいい。回復魔術やポーションがあれば治せるが、魔力も資金も無限ではないし、俺の様に肉体改造で治るわけではない。

 大きな傷は負わないようにする。満点は無傷。分かったか?』

『うーん……そうですね。確かに傷薬は高いので、負傷はしないほうがいいですね。分かりました』


「う、うわっ!」

「リクお兄ちゃんっ、ずれて!」


 ベルナは束ねた糸を鞭のようにしならせて、さらに魔力を多く注ぎ込むことで強度を増して叩きつけることでコボルトをつまみ上げる。

 そして【闘気】の密度を瞬間的に上昇させ、能力値に任せてコボルトを他のコボルトに叩きるける。


 葉隠流というセイが開いた流派であり、本来は剣術だが、ベルナは適性のあった【操糸術】と【鞭術】に自己流で取り入れたものだ。


 葉隠流とはその名の通り葉っぱで隠れる程度の刹那の時間こそが本質であり、転じて急加速と急停止が基礎にして奥義。

 セイは文字通りの意味で急加速と急停止を多用するが、これは魔力や【闘気】に込める量の調整にも応用できる。


 ベルナはあまり体が強くないため【闘気】の量は少ないが、普段は全く使用せず、必要な時に瞬間的に引き出すことで能力値を一瞬だけ倍以上にすることに成功したのだ。


「きゃあああ!」

「ネビュラお姉ちゃん!今助けるよ!」


 ベルナは無属性物質魔術【魔糸生成】を再度発動し、指先から延びる糸の魔力を五倍に引き延ばした。

 魔糸は蛇のように間の魔物を避け、ネビュラに飛び掛かったコボルトの足に巻きつく。


「えいっ!」


 すぐ横にあった木に魔糸を巻き付けると、木に引っ張られてコボルトは地面にびたんっ!と叩きつけられる。

 その隙を逃さず頭部を砕くと、その際に飛び散った骨肉を浴びて正気に戻ったネビュラも復帰し矢を番える。


『お前は……というか、この世界の奴らはみんな高度な武術系スキルや魔術で戦おうとするが、まずそれを止めろ。対等な条件で戦おうとするな。相手の不利を作れ、自分の有利を集めろ。

 生還することが最優先、魔物を殺し魔石や素材を剥ぎ取るのは次点、自分が活躍したりかっこよく敵を倒すのは考慮するな。優先順位を間違えるなよ。俺と違ってお前は簡単に死ぬんだから』


 セイの言葉を思い出しながら、ベルナは鞭を糸に再構成する。

 勝利条件はパーティーの生還。自分は補佐に徹することが最適解


「【エンチャントバレット】、【糸縫い】!」


 土の硬さを付与され縫い針のようになった糸がランク3のコボルトソルジャーに迫る。その際に多くのランク2のコボルトを拐い、コバルトソルジャーに縫い付け拘束する。


「【連射】!」

「【二連槍】!」

「【シールドバッシュ】!」

「【一閃】!」


 四人の大技が決まり撃破、パーティーとして初のランク3の魔物の討伐に成功だ。


 その後も危ない場面はいくつもありつつも、重傷者は零で魔物の群れを全滅させることが出来た。


「うひょーすげえ!これって何匹いたんだ!?今日はいくらになるかな!」

「それよりさ、俺の槍捌きを見たか!?いやー今日のさえは今までで一番だったかもしれないなー!」

「ふっふっふっふ!それより、私の盾捌きの方がすごかった!見た?あのでっかいコボルト。私はあれをぶっ飛ばしたのよ?」

「私だって、ランク3はありそうな魔物が乱入してきそうだったから眉間を一発で当てて仕留めたのよ?気づいた?」


 べしん!という音と共に四人の頭が鞭で引っ叩かれる。


「お兄ちゃんたち。お姉ちゃんたち。魔境では騒がない」


 すごく痛いが、自分たちを見つめるその怖い目に何も言えず、四人は黙って口に手を当てた。


 ベルナの指示のもと装備を点検すると、剣の刃こぼれや油、矢の残量が少ないことが分かったため今日は引き上げとなった。


「「「「「かんぱーい!」」」」」


 夜には宴会だ。

 今日の儲けは今までで一番だった。これまでの半年分がこの一回で稼げたと言えばそのすごさが分かるだろう。

 

「やっぱり魔境は儲かるな。どの素材も『上』の評価がもらえるなんてな!」

「ばーか。そりゃ解体の時に傷つけたせいで下がった評価だぜ?もっと綺麗に解体できれば『特上』の評価がもらえるかもしれないな」

「それに、ランク3の魔物もこんなに報酬がもらえるのね。今日はご飯は贅沢した甲斐があるってものよ」

「また装備を買ったらすぐに潜りたいわね。私たちならいけるわ」


 『五つの力』の面々はかなり出来上がっていた。普段は飲めない高いお酒を飲み。普段は高くて買えない美食を食べ、普段は入れない店に入る。気分は絶頂、まさに王族気分だ。


「だめだよ。危なすぎる。やっぱり上層は危なすぎる。みんなが一人でランク3を倒せるくらいにならないと、安全とは言えない。先生……セイさんが言うように、私たちにはまだ早かったんだよ。

 私も皆をフォローしたけど、それでも間に合わないって思う場面はいくつもあったもん。もっと命を大事にしないと、もうこのお店も来れなくなっちゃうよ」


 しかしそこにベルナが口を挟んだ。

 言っていることは正しい。実際、今日の戦いで重傷者が居なかったのは奇跡だ。いくら彼らがE級に相応しい実力を持っており、ベルナがE級にいい意味で相応しくない実力を持っていると言っても、一歩間違えれば後遺症が残るレベルの重傷者が出てもおかしくなかった。

 E級冒険者はパーティーでランク3を倒せて平均的と言われている。E級に成りたての彼らでは非常に不安定だ。


 彼ら四人も酔った頭でもそれを理解しているのか、口をもみょらせて返答に困っている。

 ……もしベルナが対等な仲間で、酒を飲んでいるなら「気分いいときに余計なこといってんじゃねーよ」で終わる話なのだが、ベルナは酒は飲まない人だった。


「あー……そうだ。そういえば、セイさんって今どうしているんだろうな」

「そっ、そうだな。たしか一か月前に稽古つけてもらってたんだよな」

「私たちは挨拶もしなかったわね。……お礼の一つでも言っておいた方がいいかしら」

「そういえばこの装備もセイさんがくれたお金で買ったんだったわね」


「……実は私も知らないの」

「「「「え”?」」」」


「一か月前、もう十分強くなったっていって、どこかに行っちゃったの。冒険者ギルドで聞いても、話せないって………………ぅぅぅぅううう……ぐすっ」


 ぐずり始めたベルナを慌てて四人があやしていると、泣きつかれて眠るころには店も閉店時間になってしまった。

 四人は笑い合い、やはりまだ子供だなと妹も見る顔をしながら宿に帰っていった。








 平均的なE級冒険者たち



・名前:リク

・種族:人族

・年齢:17歳

・称号:無し

・ジョブ:見習い戦士

・レベル:80

・ジョブ履歴:無し


・能力値

生命力:350

魔力 :70

力  :80

敏捷 :70

体力 :80

知力 :30


・パッシブスキル

筋力強化:1Lv


・アクティブスキル

剣術:1Lv

農業:1Lv

解体:1Lv





・名前:ルーファス

・種族:人族

・年齢:17歳

・称号:無し

・ジョブ:見習い戦士

・レベル:80

・ジョブ履歴:無し


・能力値

生命力:350

魔力 :60

力  :90

敏捷 :60

体力 :90

知力 :30


・パッシブスキル

気配探知:1Lv


・アクティブスキル

槍術:1Lv

農業:1Lv

解体:1Lv





・名前:カチャ

・種族:人族

・年齢:17歳

・称号:無し

・ジョブ:見習い戦士

・レベル:80

・ジョブ履歴:無し


・能力値

生命力:450

魔力 :50

力  :100

敏捷 :50

体力 :100

知力 :30


・パッシブスキル

筋力強化:2Lv


・アクティブスキル

盾術:2Lv

棍術:1Lv





・名前:ネビュラ

・種族:人族

・年齢:17歳

・称号:無し

・ジョブ:見習い戦士

・レベル:80

・ジョブ履歴:無し


・能力値

生命力:250

魔力 :900

力  :90

敏捷 :90

体力 :50

知力 :30


・パッシブスキル

筋力強化:1Lv

俊敏強化:1Lv


・アクティブスキル

弓術:1Lv

農業:1Lv




 平均的ではないD級冒険者相当のE級冒険者。



・名前:ベルナ

・種族:人族

・年齢:15歳

・称号:無し

・ジョブ:戦士

・レベル:80

・ジョブ履歴:見習い戦士


・能力値

生命力:700

魔力 :350

力  :90

敏捷 :70

体力 :150

知力 :90


・パッシブスキル

気配探知:2Lv

気配遮断:2Lv

物理耐性:2Lv

状態異常耐性:2Lv

自己強化:導き:3Lv


・アクティブスキル

剣術:1Lv

操糸術:3Lv

鞭術:3Lv

無属性魔術:3Lv

魔力操作:3Lv

闘気:3Lv

限界突破:3Lv

家事:1Lv

料理:1Lv

裁縫:1Lv

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