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ダンジョンコアの闘争  作者: ライブイ
3章 豊穣の国
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41話 ダンジョンコアを食べよう

聖領ユグドラシル。それはトトサワルモ地方に生きる者ならば誰もが知る肥沃な土地だ。


 聖領とは分類的には魔境に分類される。魔境、つまりは穢れた魔力に汚染された土地、魔物が活性化しこの世界の法則が捻じ曲がる恐ろしい土地。軽くしか汚染されていない土地ならば一般人でも必ず死ぬわけではないが、この世界で最も汚染されている魔王の大陸では水が空に向かって流れ草木は命を奪う力を得るという、まさにこの世界がいまだに魔王の被害から復興しきれていないことを表す忌むべきと治なのだ。

 しかし、汚染されていようともそれは活性化と同義であるのも事実であり、極稀にだが、魔境の恵みが魔境の外に届くことがあり、この土地は聖領と呼ばれる。


 その中でも聖領ユグドラシルは聖樹ユグドラシルを中心に広がった森の聖領であり、その外周部にある入り口の街チルクですら植物が極めて素早く成長し、最低でも他の土地の六倍で育つという。

 場所によってはその恵みは神の加護ともみなされるほど強く、一般的には年に一度収穫できる作物が三日で収穫できるほどだ。


「結構遠かったな」


 しかし結局は魔境なので、その内部には魔物が溢れ、ダンジョンも多数存在している。


「魔物にとって魔境は居心地がいい場所だし、食料もあるから人間の住処に行く理由はないけど……もし魔物が氾濫すればこの地方の人口が三割くらい減りそうだな」


 そんな誰に言うでもない推察を垂れ流しながらセイは魔境を蹂躙し、冒険者ギルドに記録されていたE級ダンジョン、『綿の小舟』にたどり着いた。


「こんなに弱いのか……」



 そしてその日のうちにダンジョンを攻略した。

 『綿の小舟』はE級ダンジョン、つまりはE級冒険者が六人いれば攻略できるダンジョンだ。出てくる魔物は精々ランク3。熊と同程度だ。

 おやつ感覚で熊を殺して内臓を食べるセイの敵ではない。


 散歩でもするように魔物を殺して面白そうなものを採取、採掘、宝箱の回収まで隅々までしても一日とかからなかったのだから、楽なものだ。


 そして、最深部にはセイのお目当てのものがあった。


「俺以外の、ダンジョンコアみーつけた」


 半透明で、歪みのない完全な球体。直径三センチ程度の大きさの神が作り上げた神工物。ダンジョンの心臓であり、ダンジョンが意思を持って成長する病床。

 魔物が体内に寄生させているか壁に埋まっているものであり、セイは【ダンジョンコア接続】というユニークスキルを有しているため簡単に取り出せるが、壁に埋まっている場合はセイ以外の者には長い時間をかけて抽出しなければ取り出せない貴重品だ。

 ダンジョンコアは極めて優秀な錬金術の素材でもあり、どんなに小さくても金貨……現在で言う百万トトの値段が付くお宝でもある。


「いただきます。ぱくっ」


 それをセイは飲み込んだ。


『生命力が五万上昇しました』

『魔力が五十万上昇しました』

『知力が五千上昇しました』

『【異形精神】、【神殺し】、【同族喰い】、【捕食:無機物】スキルを獲得しました』

『【同族喰い】スキルと【捕食:無機物】スキルが融合し、【万物同化】スキルに変化しました』


 すると脳内にアナウンスが流れ、生命力に魔力、能力値が上昇し、スキルを獲得した。


「おろ、生命力まで上がるのか。予想外だ」


 セイはステータスを確認すると、脳内アナウンス通りに変化しており、幻聴ではんく事実だと分かる。


 セイの種族のダンジョンコアだ。ダンジョンコアの高性能さゆえに人間そっくりになれるが、本質的に無機物であり神工物。神が作ったゴーレムに取り憑いているに等しい。

 そしてゴーレムであるならば、同じ材質のものを吸収できる。その仮説は正しかった。


「この『綿の小舟』に生息している魔物の情報もゲットできたし、大儲けだな。魔石をちまちま食べるよりこっちの方がいいや」


 セイは魔石を取り込むことでその魔物のデータを得ることが出来る。これはダンジョンマスターの基本的な能力だ。本来はダンジョンの周囲にいる魔物をダンジョン内部に召喚しデータを取るのだが、ダンジョンマスターにしてダンジョンコアでもあるはずなのに積極的に外に出ているセイにとっては関係の無い話。

 他のダンジョンコアなど自己強化・自ダンジョン増築のための素材でしかない。


「よーし、この調子で他のダンジョンコアも奪うか。攻略は出来ているけど、ダンジョンコアを摘出は出来ていないダンジョンがまだあったはずだ」


 そうしてセイは一か月ほど街に帰らず、ダンジョンを探し、ダンジョンコアを回収する日々を続けた。

 その結果E級ダンジョンを七つ、D級ダンジョンを三つ、C級ダンジョンを一つ、B級ダンジョン一つを攻略しダンジョンコアを回収できた。


「ふんふふーん!これだけ喰えば身長を五メートルくらいにしても密度が下がらないかもなー!」


 いざ実食の時。


 破壊するとどうなるのかなセイにも分からないので、全て丸のみである。これが一番苦しいかもしれない。


『生命力が四万上昇しました。生命力が一万上昇——————』

『魔力が五十万上昇しました。魔力が四十万上昇し――————』

『知力が五千上昇しました。知力が――――』

『【神殺し】、【万物同化】スキルのレベルが上昇しました』

『【ダンジョンコア接続】スキルのレベルが上がりました』


『【完全記憶能力】、【意思思考】スキルを獲得しました』

『ダンジョンコアランクが5に上昇しました』

『ダンジョンコアランクが6に上昇しました』

『魔物ランクが5に上昇しました』

『魔物ランクが6に上昇しました』


「これが最後、そして一番の大物!いっただきまー――——っ!がっっ、あ、——————」


 しかし順調だと思っていたところ、極めて大きな金属音が鳴り響いた。


 歯に当たったのである。


「あががっ!……あがががががっがががっっ!!!……だめだ、口に入らねぇ…………」


 そう、B級ダンジョンで獲得したB級ダンジョンのコアは直径がニ十センチもあり、セイの口に入らないのである。


「どうしよう…………いや、本当にどうしよう……………………………………」


 セイは魔石を体内に取り込むことで記録された情報を獲得していた。同じようにダンジョンコアも体内に取り込むことでその記録された情報と力を奪っていた。

 しかし、ダンジョンコアは内包する力が大きいほど物理的にも大きくなる。


 そしてセイは普通(?)の人間だ。

 直径ニ十センチの球体を丸のみすることなど、出来ない。


 セイは愚か者ではないためこの程度の事は考えればすぐに分かるはずだが、この世界に転生してからの問題だったダンジョンを運営するための魔力の問題が解決しそうで、テンションが上がってしまいうっかりしたのである。


 一応、原理的には体内に取り込めばいいので口ではなく耳の穴でもお尻の穴からでもいいのだが、口から入らないものが入る穴など無い。

 手詰まりである。


「どーすっかなっ……砕くのは、やめた方がいいよなぁ。感覚的に分かる。あー……もし俺がスライムならこんな心配はいらないのに……顎を大きく開ける訓練でもするか?それとも自分の腹を掻っ捌いて……」


 少し喜びつつ、また少し落ち込みつつ、セイは最後のダンジョンを出て街に戻っていった。





・名前:セイ

・種族:ダンジョンコア

・年齢:21歳

・称号:【暴竜】【悪魔】【遍歴の聖者】【神鉄の肉体を持つ男】

・魔物ランク:6

・ダンジョンコアランク:6

・ジョブ:裁縫士

・レベル:50

・ジョブ履歴:剣士、瞬剣士、魔術師、術式使い、指揮官、魔剣使い、魔戦士、超戦士、錬金術師


・能力値

生命力:105,669(47,005UP)(700,000UP)

魔力 :15,054,012(35,387UP)(15,000,000UP)

力  :20,838(6,946UP)

敏捷 :13,811(3,946UP)

体力 :37,246(8,595UP)

知力 :59,604(9,568UP)(45,000UP)


・パッシブスキル

戦闘時能力値増強:大

魔術力強化:中

魔力増大:5Lv

魔術耐性:3Lv

物理耐性:10Lv

超力:1Lv

気配探知:7Lv

気配遮断:7Lv

戦闘時敏捷強化:大

再生:8Lv

状態異常耐性:10Lv

暗視

従属強化:5Lv

全能力値増強:大

全属性耐性:5Lv

糸精製:5Lv

精力絶倫:3Lv



・アクティブスキル

剣術:9Lv

槍術:1Lv

弓術:1Lv

解体:1Lv

斧術:1Lv

杖術:1Lv

短剣術:1Lv

投擲術:1Lv

鎧術:1Lv

盾術:1Lv

指揮:1Lv

連携:1Lv

格闘術:4Lv

練闘気:10Lv

結界:6Lv

全属性魔術:8Lv

魔力掌握:1Lv

高速思考:8Lv

並列思考:8Lv

魔闘術:6Lv

限界突破:10Lv

魔剣限界突破:4Lv

霊体化:1Lv

錬金術:6Lv

裁縫:5Lv

鍛冶:3Lv

家事:3Lv

料理:3Lv


・ユニークスキル

ダンジョンコア接続:5Lv(1UP)

分解魔法

神鉄骨格

魂砕き:1Lv

完全記憶能力(NEW)

意思思考(NEW)

異形精神(NEW)

神殺し:2Lv(NEW)

万物同化:2Lv(NEW)





「ん、悲鳴か?」


 チルクの街に戻っている途中で、セイの耳に悲鳴が届いた。

 正確には魔物の怒号と咆哮、そして混乱しながら逃げる人間の声。


 おそらく魔物はゴブリンやコボルトといったランク1からランク3程度の雑魚だ。しかし魔物は魔境では生命力が活性化されるためランクを一つ高く考えろと教えていると聞く。

 そして人間の方は五人。声の高さからして十代……の半ばを過ぎたあたりだろうか。混乱と怒り、そして屈辱感は感じるが、絶望や恐怖は感じないので、致命傷は追っていないが、半数は敗走していて、もう半数は踏みとどまって抗戦しようとしている、といったところだろう。


「百パー死ぬってわけじゃないけど、まあ助けてあげるか」


 そう呟いて、セイは指先を空中で円を描くように回す。

 その動きはまるで見えない前髪を弄っているようだが、その効果は絶大。大気が渦を巻き、渦の中心から巨大な槍が射出される。


 風属性風圧魔術【槍雨】。高度な魔術だが、いまの上昇した【知力】なら問題なく処理でき、極めて上昇した魔力量なら誤差程度の魔力しか消費しない。


 その槍はロケットの様な勢いで進み、途中で分離。百程度の小さな槍となり雨の様に魔物に襲い掛かる。


「はっ……?えっ?えっ?」

「た、助かった……の?」


「ああ、助けた。無事か?」


 セイが助けたのは、予想通り五人の少年少女だった。

 装備を見れば傷だらけの皮の鎧に、年季の入った剣に槍、腰には何らかの薬品を詰めたポーチ。

 典型的なE級冒険者だ。


 剣士の男性が一人、槍を持った男性が一人、盾を持って女性が一人、弓を持った女性が一人。後ろにいる大荷物を持っている少女は荷物持ちだろうか。

 バランスの取れた良い編成だ。実力が不足していることを除けば優秀な冒険者パーティと言っていいだろう。


 セイが冒険者たちを観察しているように、冒険者たちもセイを観察していた。

 強すぎる魔物に襲われて死ぬと思っていたら、すごい魔術で助けてくれた人。顔立ちは自分たちと同い年くらいに見えるが、いまのすごい魔術が使えること、軽く動きやすそうな服装の上から分かる鍛え上げられた肉体。黒髪黒目というこの辺りでは見ない人種なので、遠くからの旅人だろうか。魔境という危険地帯に居ながら穏やかで優しそうな顔。


 冒険者か、騎士か、兵士か。それは分からないが、かなりの実力者だ。


「たっ、助かりました!」


 青年が頭を下げると、続けて他の人たちもお礼の言葉と共に頭を下げる。リーダーなのだろうか。


「どういたしまして。それより君たち、そんなのに負けるなんて、よくこの森に入れたね。ちゃんと帰れる?」


 セイの言葉に、リーダーらしき剣を持った青年がむっとした表情を浮かべたが、実力差を思い出したのか正直に答える。

 その顔は気まずそうだ。


「……俺たちは、E級冒険者に上がったばかりなんです。なので、今どのくらい通用するのか、上層に行って試してみようってことになって……」

「なるほど。で、通用しなかったと。まあ悪いことを言わないから、当分は外層で鍛えたほうがいいね。魔境の中と外とじゃ魔物の強さは大きく変わるから」

「はい……」


 きちんと反省している……いや、自責の念を抱いている様だ。もう危ないことはしないだろう。

 一応はセイも冒険者なので、先人っぽいことが出来ているだろうか。


「で、どうする?ちゃんと帰れる?無理なら送っていくよ」

「えっ、い、いいんですか!?」

「いいよ。善行は嫌いじゃない。ああ、さっきの魔物の魔石なら持って行っていいよ」

「「「「「ありがとうございます!」」」」」


 やはりお礼も善行も具体的なお金になるとまた一味違うのか、冒険者たちは元気よくお礼を言い先ほどの魔物の死体に駆けよっていく。

 浅ましいとは思わない。セイはいろいろは恵まれていて、好条件が揃っていたから急成長出来たが、本来冒険者というのはああいう風に育っていくのだから。





「そういうわけで、ダンジョンコアを十個くらい回収しました。地図に印をつけた奴だから、確認お願いします」

「はぁ?」


 チルクの街に戻ると、セイは早速冒険者ギルドにやってきた。目的はダンジョンに関する報告と素材の売却。だいたい順調だったが、やはりダンジョンに関する報告は常識外れだったのか、受付の職員が妙な顔をしている。


「え、ええと。『暴竜』さん。一か月も姿を見なかったので事件に巻き込まれたのかと思っていたのですが、ダンジョン、ですか?」

「ああ。確認が取れたら連絡せずに俺の口座に振り込んでおいてほしい。じゃ、報告はしたからもう行きますね」

「ちょっ!せめてダンジョンコアの実物を!買い取りますよ!」

「全部自分で使うから売るつもりはないですよ」


 なにか言っている職員を無視してギルドを出る。

 もうすぐ昼だ。屋台通りにでも行こう。


 そう考えて足を踏み出すと、見覚えのある女性が立ちふさがった。


「おや、この間の。元気そうですね」

「その節はどうも。ちょっと協力してほしいことがあるんだけど、いいよね」


 そう言い放ったのは、この街に来る時で出会った二人組の女性の片割れ。青い髪が特徴の魔術師、オデットだった。

ダンジョンマスターはレイドボス


チートタグは生きてます

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