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ダンジョンコアの闘争  作者: ライブイ
2章 戦場生活
27/119

25話 返らずの森

最後を少し加筆しました。話の繋がりにはあまり影響しません。

 返らずの森。そう名付けられた森がラキア国とチヨウ国との国境線状に突如現れてから、一年がたった。返らずの森は旧チヨウ国領である副都ライランの東部に現れ、チヨウ国の王都へと通じる街道を潰し、副都ライラン奪還を叫ぶチヨウ国からの敵意と猛攻を飲み込んだ、森の形をした鉄壁の城塞。 

 あの悪魔のごとき男、『暴竜』のセイが防衛隊長に就任したと聞き、果敢に攻め込んだ冒険者、傭兵、義勇兵、秘密部隊、その数は総計五千にも及び、その全てを生かしたまま返さなかった恐るべき森だ。


 そんな森の中腹。そこでは軽装の二人の男が青ざめた顔で喘ぎながら走っていた。

 二人はチヨウ国の秘密部隊の一つ、『羽』に所属する構成員だ。いまだ生還者が居ないこの森には情報収集のために潜入しており、元は五人いたが、既に他の面々はやられてる。


 翼の中でも上位の実力者で構成された五人は全員がユニークスキルを持っており、秘密部隊の中でも最上位に位置する『翼』のメンバーに昇格した前任者に続くとも言われていた。しかし、その実力を発揮する前に、三人は死んだ。

 そう、例えばいま足元に空いた落とし穴に落ちて――。


「……ひっ!」

「あぶねぇ!」


 一人が落ちそうになるのを、もう一人が蹴り飛ばして助ける。


「た、たすかったよ」

「なにも助かってねえよ……――っ!しゃがめ!」


 もう一人の方、『予視』という最大で三十秒先の未来を見るユニークスキルを持った男の言葉に従い二人でしゃがむと、胴があったあたりに横なぎの大太刀の様な葉っぱが通り抜けた。


「いくぞ、急げ!」


 二人が走り出すと、もともと頭があった位置を矢が通り抜ける。


「俺が残って足止めを……」

「無駄だ!とにかく逃げるんだ!」


 一人目の男も弱いわけではない。いや、むしろ通常の戦闘でも極めて強く、気配を薄くするスキルに大きな補正がかかる『夜神の祝福』を持つ彼ならば、自分なぞ気が付くこともなく首を刎ねられるだろう。

 しかし、今日ばかりは事情が違う。『予視』を持つ男の目には、その相棒が血塗れになる姿が今でも映っている。


 未来を見て現在の行動を変え、それによって未来も変える。最適な未来になる様に調整し、生き延びる。今までそうして生きてきた。

 しかし、どうやっても延命になるだけで、死ぬ未来が消えることが無い。


 少なくとも、ここに居たら死ぬ。どこへかは分からないが、逃げるしかない。

 そう思って走っていると、視界が暗転する。

 三十秒後に、自分は死んでいる。それを示す暗闇だ。


「大地を撫でる風よ……」


 魔術を使い速さを上げようとする。しかし暗転が戻らないため、これでも未来は変わらないと判断し違う魔術を次々と唱えようとする。


「ぴょっ……」


 奇妙なことに高い声が響く。『予視』を使っていないほうの目を動かすと、相棒が首を刎ねられて死んでいた。


 驚き一瞬立ち止まると、視界の暗闇がなくなる。しかし一瞬で再び暗闇に戻る。


「大地を拒み……自由な空へ……!」


 また呪文を唱えるが、一向に暗闇は消えない。どちらへ逃げれば助かるのか。それだけを考えて、足を動かしていると、突然足元が消えた。

 体勢を崩し体が投げ出される。


「ぐぇっ……」


 そして蔦が男の首を締め上げる。急速な浮遊感。必死に蔦をほどこうとするが、異常なほど丈夫な蔦はびくともしない。

 全身に痛みが走る。意識がもうろうとするなかで、それが槍で刺されたと気が付くと、ついには完全に意識が消え去った。





 別の場所では、また違った一団が森の中で襲われていた。


「この臆病者どもが!姿をみせろ!」

「ラキアの兵士どもめ、そんなに俺たちが怖いか!」


 こちらは全身に金属の鎧と剣を持った二十人ほどの兵団だ。チヨウ国から陽動役割を教えられないまま送り込まれた彼らは死力を尽くしてラキア国の兵を殺そうとしている。

 事前に調べた情報によれば、返らずの森の中心、通称返らずの砦に勤める兵士は全員が元は荒くれ者の馬鹿。まっすぐ向かっていく剣を振り下ろすしか能のない様な奴らだ。あの悪魔が鍛えたとしても、一年程度がそうそう変わらない。


 そのはずだが、兵士になって一年も経たない元農民であるはずの彼らは、たった五人で自分たちを追い詰めている。


 全身に迷彩効果のある防具を着込んだセイの部下たちが、チヨウ国の兵団を取り囲んでいた。


『撃て。続いてニを補充、四を投擲』

『五秒後に四が投擲される、その後十七を切断』

『十秒待機、その後八を起動……いま』


 返らずの砦の兵士たちは、まるで【念話】の魔術を全員が高水準で習得しているのかもしれない。そんな推測をこの兵団の参謀がしていた。そしてその推測はあながち外れてはいなかった。

 彼らは一秒の遅れも無く命令を伝達され、完璧なタイミングで連携する。


 魔術により強力な磁力を帯びた矢を放ち、続いて吸い込むと短時間の間だが体が即座に痺れて動けなくなる毒を帯びた短剣を投擲する。

 その後即座に別の兵士があらかじめ張っておいた罠を起動させ、槍のように鋭い竹を発射する。

 そして最後にまた別の兵士が特殊な火属性魔術が込められたマジックアイテムを起動させ、効果を見届けることなく急いで全員がその場を離れる。


「な、なにが……かはっ――」


 兵団たちは呼吸が苦しくなる。毒か。そう思うが厳密には違う。

 最後に投げ込まれたのは過剰に酸素を消費する火属性の魔術だ。一時的に酸素が消費されつくされた空間で呼吸は出来ず、兵団はなすすべもなく死んでいく。


「う……お、おおおおおおっ!【飛斬】!」

「――なっ!」


 しかし、兵団の隊長だけは違った。最後の力を振り絞り、剣を持ち上げ油断した敵兵に切りかかる。十年以上兵士をしている兵士が繰り出す飛ぶ斬撃は正確に飛んで行く。


「あ、あぶねぇ……」

「なん、だと……ぐっ!無念っ……」


 しかし、何故かその斬撃は途中で大木に阻まれ消滅する。隊長はそれを見届ける間もなく、油断していなかった砦の兵士たち四人に竹の槍で貫かれ死亡した。





「以上、お疲れ様でした。第一班は失敗こそありませんが、物資を大量に消費したため八十点、第二班は過程こそ十分ですが最後の失態を考慮し三十点、ですね」


 二か所の戦闘が終わると、遠く離れた、返らずの砦と呼ばれる場所の執務室で、女性が採点をしていた。まだ女性よりも少女と呼称されるほうが似合う、鋭い顔立ちの女性であり、この砦の副官、軍師ルヴェアだ。


 壁に映された映像を見ながら、戦闘痕と兵士たちの疲労具合を観察する。一言で勝利と言っても、快勝や辛勝などは様々。正確な評価のためは情報を集める必要があり、なにより反省点を見つけることにもつながる。


「ふむ。本日の課題である『直接戦闘の禁止』はまあまあ。私の指示出しは七十点ですかね。隊長、お疲れ様です。もう結構ですよ」

「あいよー」


 ルヴェアの言葉を受けて、セイは表示していたモニターを切る。光属性魔術の一種であり、使い魔の目を通してみた景色を壁に映しだす魔術だ。


「いやー部下が優秀だと俺は楽が出来ていいな。俺は役立たずだし、この分だとルヴェアが隊長にと昇格の話が出る日も近いんじゃないか?」

「はぁ……また御冗談を。隊長が役立たずなどと思っている人はいませんよ。というか、この情報網も物資も、全て隊長が用意しているものでしょう」

「はっはっは、もちろん冗談だよ。部下に言ってそういう言葉が返ってくるかを試す練習だ」


 セイはこの一年、主に魔術を使った支援に徹していたが、その支援が尋常な者ではなかった。

 通常、この世界では指示は口頭で伝えるものが一般的だ。電話もなく識字率も低いために言葉でしか意思の疎通が出来ないものが多い。そのため陣地のなかで支持を伝え、あとは現場判断が主になる。

 しかしセイはその並外れた魔力と【高速思考】、【並列思考】を駆使して、二百の声帯付きの鳥型の使い魔をラジコンのように使役に、その目に映る光景を執務室の壁に映すことで、執務室でルヴェアが考えた策をリアルタイムで兵士たちに伝えるという異常な情報網を実現させた。

 使い魔の半数は上空に待機させ、敵兵の動きと地形を把握。もう半数の使い魔は兵士たちに着けて指示を出し、いざとなれば使い魔を経由してセイが攻撃魔術も回復魔術も発動できるため、この一年で死傷者は一人もいないという圧倒的な功績を叩きだしていた。


「まあ物資に関しては、ちゃんと本部が送ってくれれば俺が何かする必要は無いんだけどな」

「……そうですね」

「なんとかならない?」

「難しいです。交渉にも応じてくれません。領主殿は余程私たちに失敗してほしいのでしょうかね」

「どうかねぇ。その時は領主を殺すけど」

「……その時は、私が何とかするので、手荒なことは控えていただきたいですね」

「はーい」

「はぁ、こういうとこさえなくなってくれれば……」


 セイは緑が品種改良して作った林檎様な果物を口に運びながら、ため息を吐くルヴェアを眺めていた。


《【悪魔】の称号を獲得しました》


「ん?」


 何かを獲得したが、良く分からないので無視した。




 この世界の兵士の平均的なステータス


・名前:歩兵

・種族:人族

・年齢:十代~二十代

・ジョブ:歩兵

・レベル:0~20

・ジョブ履歴:見習い兵士


・パッシブスキル

能力値増強:指揮下:2Lv

金属鎧装備時能力値強化:小


・アクティブスキル

武術系スキル:2Lv~3Lv

武術系スキル:2Lv~3Lv

連携:3Lv

鎧術:2Lv


 歩兵:兵士の中でも見習い以上。戦場で最も数が多い。ここでは食い詰めた一般人が武器を持っただけの存在ではなく、しっかり指導を受けた者のステータスを示す。

 なお、セイも書類上はここに分類されていた。





 セイの部下の兵士の平均的なステータス


・名前:セイの部下

・種族:人族

・年齢:十代~二十代

・ジョブ:工兵

・レベル:30~60

・ジョブ履歴:見習い兵士、兵士


・パッシブスキル

能力値増強:指揮下:2Lv

能力値増強:森:5Lv

非金属鎧装備時能力値強化:小


・アクティブスキル

生産系スキル:3Lv

武術系スキル:1Lv~2Lv

連携:5Lv

罠:5Lv


 農村や漁村生まれ。不良よりたちが悪いが、アウトローというほど秩序から離れてはいない、基本嫌われていたヤンキーたち。戦争が起こり家族から追放か兵士になるかを迫られ追い出されるように兵士になったやつら。そんな奴らがまとめて戦場の新しい最前線に送られたのは時間稼ぎの肉壁としてだったが、セイがうまく使っているため生き延びている。

 この世界では珍しい工兵。森に潜み敵兵を誘い込んでからじわじわと殺す恐るべき兵士。セイが独自の理論で育てたため【罠】や【能力値増強:森】といった極めて珍しいスキルを獲得している上に、【連携】スキルも高い。その変わり個人の武力は低い。

 最初に参加した乱戦では多くの同期が死んだが、セイが隊長になってから一年たったにも関わらず死者が出ていないことから、隊長のセイも軍師のルヴェアも尊敬している。





 ルヴェアのステータス


・名前:ルヴェア・ラザイヤ

・種族:人族

・年齢:19歳

・ジョブ:軍師

・レベル:90

・ジョブ履歴:見習い兵士、兵士、指揮官、司令官


・パッシブスキル

従属強化:6Lv

物理耐性付与:従属:6Lv

魔術耐性付与:従属:6Lv

再生付与:従属:6Lv


・アクティブスキル

高速思考:8Lv

並列思考:8Lv


 ラキア国北部にあるラザイヤ伯爵家の長女。さらに北にある亜人の領地と接しているため対亜人たちと戦いの最前線にある武門の家柄でもあり、一家全員が武闘派という異色の貴族。ルヴェアも騎士か魔術師になるつもりだったが才能がなく、代わりに指揮官の才能があったため軍師として生きることを選び、一人で王都の学園へ。

 学園では盤上戦争や実際に部下を動かす演習で最高成績を収め、そのまま軍の指令員になりエリートコースを歩む……が、初めての戦場で偉そうな人にうっかり喧嘩を売ってしまい、セイがぼろ負けさせてしまったので出世街道から転がり落ちてしまった。

 いまではセイから部下を預かり(押し付けられ)指揮を任されている。セイが苦手だったが、話してみると結構子供っぽい一面や、頭は悪くずぼらだが、注意すれば素直に治そうとしてくれる面など好意的に思える面が多く、もうわだかまりはない。山奥に一年も一緒にいるので今では良好な隊長と副官の関係を築けていると自負している。





・名前:セイ

・種族:ダンジョンコア

・年齢:18歳

・称号:【暴竜】【悪魔】

・魔物ランク:4

・ダンジョンコアランク:4

・ジョブ:魔剣使い

・レベル:20

・ジョブ履歴:剣士、瞬剣士、魔術師、術式使い、指揮官


・能力値

生命力:7594(5544UP)

魔力 :25320(20540UP)

力  :862(602UP)

敏捷 :860(316UP)

体力 :1108(799UP)

知力 :1842(1002UP)


・パッシブスキル

剣装備時能力値増強:中(UP)

魔術力強化:中(UP)

魔力増大:3Lv(NEW)

魔術耐性:3Lv(2UP)

物理耐性:5Lv(4UP)

怪力:8Lv(7UP)

気配探知:3Lv(2UP)

気配遮断:3Lv(NEW)

剣装備時敏捷強化:中

軽装備時敏捷強化:中

再生:1Lv(NEW)

状態異常耐性:1Lv(NEW)

暗視(NEW)

従属強化:5Lv(NEW)


・アクティブスキル

剣術:7Lv(1UP)

闘気:6Lv(1UP)

結界:6Lv(1UP)

全属性魔術:8Lv(1UP)

魔力操作:9Lv(2UP)

高速思考:8Lv(4UP)

並列思考:8Lv(4UP)

鎧術:1Lv(NEW)

盾術:1Lv(NEW)

格闘術:1Lv(NEW)

指揮:1Lv(NEW)

連携:1Lv(NEW)

魔闘術:6Lv(NEW)

限界突破:4Lv(NEW)

魔剣限界突破:4Lv(NEW)


・ユニークスキル

ダンジョンコア接続:3Lv


 最近ようやく魔物の体と人間の魂が馴染んできたため能力値が高まってきている。【暗視】や【再生】などの人族ではまず習得出来ないスキルも習得しているため、もしもステータスを見られたら人間ではなく魔人か亜人だと確信されるだろう。

 基本雑だが真面目でもあるため、隊長になってからは隊長らしく振舞おうと【指揮】や【連携】の練習をしている。ルヴェアも協力してくれているため環境も整っている。

 しかし特に実らなかった。個人戦が一番強い。

 半年で一端諦めて、数百の使い魔を同時に操作しルヴェアの言葉を伝達するという力技を試したところうまくいってしまったので、部下への命令は完全にルヴェアに投げている。

 

 なお、術式魔術は世界の法則を利用しているため、ステータスには表示されない。





セイの従魔


・名前:緑

・ランク:8

・種族:森蛇

・レベル:10

・年齢:1歳


・パッシブスキル

魔術耐性:2Lv(1UP)

物理耐性:2Lv(1UP)

怪力:3Lv(2UP)

暗視(NEW)

能力値増強:森:2Lv(NEW)


・アクティブスキル

格闘術:1Lv(NEW)

闘気:1Lv(NEW)


・ユニークスキル

緑化


 セイの従魔。実は魂にララの魂の残骸を使っている。その場にいるだけで周囲を緑地化させるユニークスキルを有している変位種であり、最近はセイのまねをして武術を覚えようとしている可愛い蛇。

 緑の力で森を広げ、その森では木の実も野菜も豊富に取れる。その力は最低でも年に六毛作、最高記録で十六毛作まで出来たという聖領ユグドラシルの恵みに匹敵する。愛嬌があり兵士からも人気。下手をすればセイよりも人気がある。

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[一言] え、ララさんこんな事になった?! ハッピーエンドのキーワードに狂気を感じる
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