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ダンジョンコアの闘争  作者: ライブイ
2章 戦場生活
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19話 規則

 平野での戦いはセイ達側、つまりラキア国側の勝利に終わった。

 通常の戦争であれば指揮官たちが兵を減らしあいながら指揮官を討つのだが、今回はセイがさっさとチヨウ国側の本陣を襲撃し、指揮官と側近及び伝達兵や兵糧の管理者といった重要人物を皆殺しにしたことで軍が成立しなくなり、チヨウ国側は大敗と認識したらしい。


 大敗を喫したことでチヨウ国は今まで主張していた国境線から大きく下った場所にある山間部に陣を張った。土属性魔術による堀や盛り土を作り移動経路に簡易的な要塞の建築、水属性魔術を使った沼地による移動経路の制限、他にも生命属性魔術で植物を成長させ作った障害物や罠など、予備兵力や魔術師団まで追加で投入し一夜城ならぬ一夜要塞を形成していた。


 この戦争がどっちから始めたのかは知らないが、少なくともチヨウ国は一度の敗戦で終わりにするつもりは無いようだ。

 それも当然だ。戦場はここだけではなく、山を挟んだ向こう側ではスレイたちが参加している本隊ともいうべき主戦力同士が戦っているらしい。こちらの副戦場というべき戦場も無視できるものでは無いが、本隊が負けるまでは撤退しながらも継続するだろう。


 しかし副戦場だからこそ、お互いに決め手に欠いているのも事実だ。個人の力の差が激しいこの世界であっても、熊の素手で倒せるほど強かろうとも人間なので不慮の一撃で死んでしまう。こちらの戦場はとびぬけた個人が少なく、惰性のように通常の兵士たちで数を減らしあっている。

 決め手となる戦力を投入出来ないわけではないが、お互いにここで決めてしまうべきか、そうすると本戦場で押し負けないやしないかと図り合っているらしい。


「ようはまだまだ兵士らしく戦ってろということであってますか?」

「まあそうだ。分かってくれる奴がいて嬉しいよ」

「隊長、俺たちは良く分からなかったのでもう説明は大丈夫です」

「結局今まで通りなんですからその説明いらないんじゃないですか?」

「お前たちがこれからどうなるのか知りたいって聞いてきたんだろうが!」

「頭が痛くなってきたんでもういいです!」


「隊長、俺はまだ聞けるので、もっと話してください。捕虜の交換とかあったんですか?」

「セイ……ううぅ、お前だけだよ俺の話を聞いてくれるのは……せっかく集めたのにだれも分かってくれなくて……なんでうちの隊は頭が良くない奴が多いんだよ……」

「それはうちの隊がというか、頭がいい奴は商人とか裁縫士とかの生産的な職に就くので、必然的に頭が良くない奴しか兵士にならないんじゃないですかね」


 そんな中、セイ達一般兵は小隊に分かれて移動していた。

 車など無いこの世界では移動は基本的に徒歩だ。一部の階級のものは馬車や馬を使っているらしいが、隊長であるトレフェンでも徒歩なので、セイ達には縁のない話だ。

 セイとしては徒歩は嫌いじゃないので、散歩気分で不満はないが。


(しかし景色もいいなー。軍の行進もなかなか見れるものじゃないし)


 周囲を見渡せば少し距離を開けて他の分隊もいる。十人の分隊がいくつも集まっているさまは非常に珍しいものだ。物自体が無いわけではないが、街に居ればまず見ることは無い。失礼なことだが、セイにとっては物珍しい観光資源でも見つけたような気分だ。

 そのため、セイは視界を共有した使い魔を上空に飛ばしていた。使い魔の作成は魔術師の基本技能の一つであり、特に鳥や蝶といった飛行可能な生物を模した使い魔を飛ばして敵陣を偵察することも出来る。

 そういった有用な使い方をせず、というか出来るということも明かさず一般兵をやっているセイは非常に奇妙な存在であるが、セイ本人は満足げに兵士生活を送っていた。


「あれっ?なあセイ、あれはなんだか分かるか?」

「うん?」


 隣を歩いていた兵士に声を掛けられ意識を肉体に戻す。兵士が数百メートル離れた森の方を指さしており、そこには複数の人影が見える。


「兵士、じゃないな。装備が違う」

「だよな……もしかして敵の特殊部隊!?」

「違うと思うよ。それにしては警戒が薄いし、質が低い。兵士並みだ。傭兵かな」

「兵士並みって俺たちと……お前以外の俺たちと同じくらいだろう?それを質が低いって……」

「しかし何だろうな。まあ大方俺たちに知らせる必要が無い部隊だろう。

 ん?よく見るとなんか連れてるな」


 闘気で目を強化すると、その姿がはっきりしてくる。

 彼らは傭兵な様な装備だが、紐に繋がれた人を連れていた。


「たぶん、奴隷かな」

「あー。じゃああいつらはその辺の村人を持っていく係なのか」


 この世界の戦争は侵略戦争が基本であり、侵略された領土にいた民間人は降伏するか奴隷にされるかだ。

 敵国に攻め込み宝石などのお宝を見つけた場合、そのお宝を宝石商など鑑定してもらったり現金に変えたりすることで利益になる。奴隷も同じであり、首輪をつけただけでは意味がなく、奴隷商に引き渡して金にしなければならない。

 しかしこの作業は生きた人間を運ぶのが面倒なところだ。そのため傭兵などを使ってやらせる場合もあると聞いた頃がある。


「ふーん。じゃあほっといていいか」

「そうだな。一応隊長に報告しておいて」

「え“、俺が?」

「お前が見つけたんだからな。俺は一応会話を盗み聞きしてみるよ」

「へーい……面倒くさいなぁ」


 セイは使い魔を傭兵たちに飛ばし聴覚も共有する。共有する五感を増やすと肉体の感覚が鈍くなり敵襲があれば即座に対応できなくなる欠点があるが、今回は気にしなくていいだろう。


「……うげ」

「セイ、傭兵を見かけたって聞いてきたが、その様子だと何かあったのか」

「……はい、会話からして、あれ、違法な奴隷商です。それもチヨウ国の」


 セイの報告に隊長の目が険しくなる。

 この戦場に居る兵士は分かりやすいが、傭兵たちは個人の裁量に任された装備をしてるため見た目ではどの国のものか判断できない。そのためここまで入り込まれたのだろう。


「チヨウ国側のということは、自国の国民を商品にしようとしているのか。自国の兵士たちが命を懸けているというのに、薄汚いことだ」

「じゃ殺してきますね」

「む、いや待て、その必要はない」


 飛び出していこうとするセイを引き留め、隊長は言い聞かせるように説明する。


「不快な奴らだが、こちらに襲い掛かってこないなら見逃していいんだ。お前ひとりでやれるとしても、その力は敵兵との戦いに使ってほしい。いちいちああいう輩を相手にする必要なない」


 隊長の言い分は非常に適格だ。自分たちは兵士であり、敵兵を殺すもの。違法な奴隷商を取り締まるのは職務範囲外なので放置で良い。非常に正しい。

 しかし、セイは別に快不快で動いているわけではない。


「そうじゃなくて、あの奴隷たちって俺たちのものですよね。で、民間人でも食料庫や兵糧を奪っていく輩は処分しろと規則にありますから。見逃さないほうがいいですよ」

「…………それはそうだが、真面目なこった。セイ、お前は帰ったら学者にでもなったほうがいいぞ」

「考えときます。じゃ行ってきますので取り返した奴隷の引き取り先の隊を探しておいてください」

「おう、そっちは任せぞ」


 多少寄り道しつつも、セイ達は次の戦場に到達した。

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