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ダンジョンコアの闘争  作者: ライブイ
1章 ダンジョンコアに取り憑きました
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11話 黄昏の鉱脈

 セイ、ララ、スレイ、ライオスの四人は村から十日ほど歩くと、迷宮都市タリオンに到着した。


「それじゃあ、私たちはクランの本部に戻りますね」

「冒険者ギルドはあっちだ、迷子になるなよ」

「ええ。お世話になりました」

「スレイちゃん。またね~」


 スレイとライオスとは入り口で別れ、セイとララは二人で街の中心部へ進んでいく。

 迷宮都市タリオン。いまセイがいる国において王都に次ぐ大きさを誇り、この国で最も大きな迷宮がある都市だ。セイとララが先日までいた村とは比べ物にならないほど大きく、城壁が都市の周りを囲み、昼前なのもあるだろうが大通りは人混みで溢れている。

 特に人混みの中には様々な人種がいる。人族は当然として、エルフにドワーフ、巨人に獣人までいる。魔法と同じく空想上の存在を見れてセイは密かにテンションが上がっていた。


「それじゃあ早速ダンジョンにいきます?それとも冒険者ギルドに行きます?」

「いきなりダンジョンに行くのは危ないし、冒険者ギルドの方がいいと思うよ。換金もしたいしね」

「ですね。まずは冒険者ギルドに行きましょう。場所はあっちでしたっけ」

「ライオスさんはあっちって言っていたけど、どのくらい歩くんだろうね。まあ歩いていればそのうち着くでしょ」


 セイとララはのんびりと大通りを散策していく。ずっと田舎にいたララも露店に並ぶアクセサリーや探索道具に視線を迷わせ楽しそうだ。セイも現代日本でもっと大きな建物や賑やかな場所を知っているが、レンガ造りの街並みは絵本の中に飛び込んだようでそこにいるだけで楽しくなる。


 しばらく空気を楽しみたかったが、冒険者ギルドは意外と近かった。


「おっきいですね」

「まさかの一番でっかい建物だったね。三階建てで、かつ裏手にはもっと大きな建物が建ってるな。あれは何だろう」

「あれは訓練所だと思います。冒険者ギルドの大きな支部は単なる事務所以上のサービスがあるらしいので」

「へえ。それにしても随分と金があるんだな」

「冒険者ギルドは依頼を仲介する際の手数料が主な収入ですからね。当然大きなお金が動く依頼の方が冒険者ギルドの収入も大きいので、低級冒険者の数も大切ですが、居を構えている上級冒険者も影響が大きいらしいですよ。特にここはA級ダンジョンのわりに上層は安全な変わったダンジョンですからね」

「そうなんだ。随分と詳しいね」

「ほえ?い、いやあ。冒険者をやっていれば自然と入ってくる話なんですよ」


 建物に入ると多くの冒険者たちがいる。受付やその向こう側にいる職員たちに依頼の話をしている冒険者、全部で百人はいるだろうか。

 それに内装も豪華だ。椅子や机は素人であるセイの目にも高級なものだと分かり、触ってみると壊すことの困難さが伝わってくる。視線を上げると大きく開いた中抜けからは光が差し込み、二階と三階は内装だけでなく冒険者の質も高いことが伝わってくる。

 総じて言えば、金がある市の役所のようだ。


 受付に向かうと、栗毛の女性が応じてくれた。


「ようこそ冒険者ギルドへ。本日はどういったご用件でしょうか」

「はい、今日からこちらに拠点を構えるのでご挨拶に来ました。それから村の冒険者ギルドの出張所では買取りができなかったものを持ってきました」

「かしこまりました。では買取りは裏手の建物で行いますので、その後再びこちらにお願いいたします。それから……お二人はパーティーを組んでいらっしゃるのですか?」

「ん……ララ、組んでるってことでいいかな」

「いいですよ。そっちの方が便利ですし」

「かしこまりました。では登録しておきますね。今後は報酬の振込先としてパーティー用の銀行口座を開設しますね。他には緊急時の連絡先のご記入をお願いいたします。代筆は必要ですか」

「自分で書けますので大丈夫ですよ」


 視線を横に向けると、ララが目をそらしている。書けないのだろうか。

 もっともセイもこの世界の言語が日本語でなかったら書けなかったが。

 

「確かに受領いたしました。少々お時間をいただきますので、おかけになってお待ちください」


 何かを取りに行くのか、羊皮紙を持って受付の女性は奥へ消えていく。


「結構面倒だな」

「しょうがないんですよ、死んだときに遺産をどうするのとか、決めておかないと後がもめるらしくて」


 こそこそと話していると、セイよりも身長が頭一つ分高い大柄な男が近づいてきた。


「おい坊主たち、まさか冒険者か?田舎ならともかく、ここタリオンのダンジョンはA級ダンジョン、実力がないと無駄死にするだ……がはぁ!」

「あ、遅かった」

「え、だめだった?」

「まあ大丈夫ですよ。たぶん」


 男が言い終わる前に、セイの拳が男の腹部に突き刺さった。


「セイさん、ララさん、お待たせいたしました。お手続きは完了し……あら、マウロさん?こんなところでお昼寝ですか?」


 セイは一瞬不安になったが、帰って来た受付の女性もあまり気にしてなさそうなので、おそらくこのくらいのごたごたはいつもの事なのだろう。


「こちらはマウロさんといって、こう見えて優しい人ですので、冒険者として分からないことがあれば彼を頼るのがおすすめですよ。あっ、申し遅れました。私はケイティと申します」

「これはどうもご丁寧に。それでここのダンジョンについて知りたいのですが――」

「はい。ここタリオンのダンジョン、正式名称黄昏の鉱脈ですが――」





 黄昏の鉱脈。迷宮都市タリオンの中心部にあるA級ダンジョンであり、出現する魔物全てがゴーレムという異色のダンジョンだ。

 ゴーレムは無機物が瘴気に汚染され動き出した魔物であり、そのランクは元となった素材とその大きさによって決まる。例えば土が素材になった人並の大きさならばランク1のサンドゴーレム、泥が元となった人並の大きさならばランク2のマッドゴーレム。鉄や銅であればランクが上がり、ミスリルやアダマンタイト、ヒヒイロカネといった魔道金属であればその脅威はドラゴンにも匹敵する。最上級の素材であり神の鉄とも呼ばれるオリハルコンならばランク13、邪神とすらも戦える強さになるという。

 またドラゴンや悪魔の姿をしたドラゴンゴーレムやデーモンゴーレムなど、固体によっては魔術すら使う。


 黄昏の鉱脈はA級ダンジョンにしては上層部の魔物が弱いが、それでも最低でランク3。熊と同程度の脅威であり、調子に乗った駆け出し冒険者が容易く命を落とす程度には危険なダンジョンだ。

 加えてダンジョンの内部は魔物にとって住みやすい空間となる。つまり鉱物の塊であるゴーレムしか生息していないということは、ゴーレムには必要のない食料がなく、冒険者たちは食料の現地調達が出来ないということだ。食料は地上から持ち込むしかないので空間属性のマジックアイテムを持っていない限り食料が荷物の半分を占めてしまうという、魔物の強さ以前に挑むことが敷居の高いダンジョンである。


「まあそれはあくまで深部に潜る場合の注意点で、上層部に潜る分にはそんな心配はいらないですね」

「それにゴーレムは換金率が高いようだしな。重いから持ち帰るのは大変だけど」

「ええ。しかもまたどっかが戦争するらしくて買取り金額も上がってるんですよね。武器にするために鉄を買い集めてますし、また敵国に渡らせないためにさらに買取り金額を上げているみたいですね」

「へーその辺は見てなかったな」

「見ときましょうよ。大切ですよ、こういうこと」


 この日を境に、黄昏の鉱脈のゴーレムが妙に少なくなったという不可思議なうわさが流れた。





 その日の夜。ララが寝た後に使い魔のドッペルゲンガーを通してセイは自分のダンジョンを見ていた。なにやら異変があったとナビから報告があったのだ。


 場所は先日の神官戦士団が死んだ場所。まだ分解が終わっておらず、死体が少し残っていた。


(すごいな、まだ息がある)


 その中に一人、生き残りがいたのだ。

 その人物はアセル。最後に家族を守るために戦い見捨てられた少女だ。


 岩雪崩の直撃を受けたことで体の欠損が酷い。右腕は肘から先が完全に潰れ、腹部と頭部が衝撃で陥没している。両足も途中で逆の方向に拉げている。急所は無事だが地球であれば即死だろう。中身が露出しているのも痛々しい。

 しかし、この世界の住人にはステータスによる加護があるのだ。心臓や首といった急所を破壊されれば死ぬが、逆にそれ以外であればありえないほどの生命力を見せつけてくる。

 まだ地球での常識が残っており、この世界の人間を甘く見ていたセイにとって予想外の出来事だ。


(予想外だけど、まあ前向きに考えよう)


 しかし、セイにとって都合のいいことでもある。闇属性魔術、通称精神魔術とも呼ばれる精神に干渉するという地球でも極めて高度な、しかしこの世界ではなぜか使えるものは学が無くても使っている魔術をセイも習得したかったのだ。


 セイは闇属性魔術の実験台にするために、いったんアセルを保護することにした。

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― 新着の感想 ―
[一言] 前の話で違和感持ってこの話で確信したわ。ぜってー作者四度目は嫌な死属性魔術師見てるだろww
[気になる点] では登録しておきますね。今後は報酬の振込先としてパーティー用の銀行口座を解凍しますね。 とありますが たぶんこれ、解凍じゃなくて開設かな?
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