どっかに良い案を落っこちてないかな?
広輔がずっとウーンウーン唸っている。
熱に浮かされてる訳でもなければトイレで力んでるってことでも無い。 例の件で良い案が全く浮かばないからである。
僕を置き去りにしてのお三人さんディナーの夜から、広輔立案で何策かは試してみてるのよね。
ご飯のおかずの好き嫌いでごねる案、
恵梨は何でも食べちゃうから失敗。
母さんを恋しがって夜に泣く案、
毎晩スマホに電話が掛かってくるし、元来恵梨は他所さんに泊まり慣れしてるってバレて失敗。
二人が喧嘩とかして仲良くしないで泣かしちゃう案、
父さんに『男たるものはうんたらかんたら』なるお説教とゲンコをくらって憐れ広輔は涙目になって失敗。
これに見て、恵梨に僕を追いかけ回させるって案はお蔵入りになったんで助かった。
広輔が腕組みして考え込んでる横で、|恵梨《》は児童向け雑誌に集中している。 なんの事ない、お気に入りのポンピーのマンガが載ってるからだ。
(僕だって同盟の一員として悩んでるんだよ? 少しは一緒になって考えてあげてもいいんじゃないの? ほらこうやって作戦を書き込む自由帳の上に乗っかって温めたりさ。えっ、邪魔だからどいてって? そう? なら退かないコトもないけど……次は恵梨の本に移動かな)
「ねえ恵梨。オレもう作戦思い付かないよ。どうしよう」
「それよりね。このお家のテレビはポンピー見れないの? 恵梨の家のは毎週やってたよ?」
「それってアニメだよね? チャンネル設定で民間局は映らなくしてあるし、トーサンはニュースしか観ないから」
「〇チャンだよ。火曜日の5時からするの」
「それは民間局だからダメだな」
「ええ〜見れないのぉ〜」
「……ポンピー絶対に見たいよね」
「見たい見たい!」
「見せないならトーサンは意地悪ってことになるな」
「オジサンの意地悪?」
「そう、その作戦でいこう!」
「どんなことするの?」
「ポンピー見れないと泣いちゃうゾ作戦! つまりね……」
作戦会議が始まった。 今度こそ上手くいくといいんだけどね。