勝負を挑むときは手を取り合って
「クレーンゲームは1回で取ろうとしちゃダメだ。たいてい無駄に金を失うことになる。だから最初から複数回に分けて、少しずつ落としにかかるのがいいんだ」
ぬいぐるみに向けてクレーンを動かしながら言うと、彼女はうんとうなずいて口を開く。
「だけど、もう10回以上やっとるやん……」
ボタンから指を離すとクレーンの爪が静かに下りていく。それはぬいぐるみの片足をつかんでやや持ち上げると、すぐに重さに耐えきれなくなってまた落としてしまった。
「ほらぁ、もう無理だって!」
「でもこのぬいぐるみが欲しいんやろ」
「別にもういいよ。それに見てて思ったけどあなたにクレーンゲームの才能ないよ」
「しゃあしい。時には誰かのために勝率を度外視して戦うことも必要なんだ」
「それが今なん!? 絶対もっと他に大事な場面あるって!」
それでも俺はかたくなにゲームの続行を主張する。最初は彼女のために始めたが、今ではもう俺のプライドを懸けた戦いになっていた。
すると、彼女は大きなため息をついて財布から1000円札を取り出す。
「もう、それならこれ使って。やるなら私も一蓮托生よ。大体、私だってぬいぐるみの1つも持ち上げられないような、こんなふざけた機械にやられっぱなしじゃ嫌やもん」
その言葉に胸が一気に熱くなる。
「ありがとう。俺、絶対勝つけん」
「当然よ。こんな機械に負けるもんですか」
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