残らなかった2人の跡をたどる
今まで来たことのない駅で電車を降りる。改札を抜けて、すぐ近くの商店街へと入った。道の途中で左へ曲がり、突き当たりを今度は右へ、最後にふたたび左へ進んで目的地のカフェに到着した。
中に入って席に座ると手早く注文を済ませる。すでに食べたいものは決まっていた。しばらくすると店員が注文の品を持って来て、またカウンターの方へ戻っていった。
「このインスタにあるチョコレートスフレ、おいしくて有名っちゃん!」
「へぇ、そうなんだ。確かにおいしそうやな」
「やろ!? ねぇ、今日ここ行こうよ」
「うーん、でもちょっと遠いなぁ。また今度じゃダメ?」
「えぇー!」
「ごめん。今度ちゃんと時間合わせるけん」
「もぉ、しょうがないなー」
結局、その今度が来ることはなかった。
目の前のスフレをすくってゆっくりと口の中に入れる。ふわふわの触感と口の中に広がるチョコの甘さがちょうど俺の好みで、何だかさらに悔しくなってしまう。
……こんなにおいしいなら、あの時ちゃんと一緒に行っておけばよかった。
そしたら俺たちはここでどんな会話をしていたんだろう。もしかしたらそれが糸口になって、せめてもう少し別れを先延ばしにできたのかもしれない。
口の中のスフレはあっという間に溶けてなくなった。
その時、ドアの開く音が聞こえた。新しいお客さんが入ってきたみたいだ。
「チョコレートスフレ1つください」
その声に心臓の鼓動がどっと早くなる。これはきっと、いや、間違いない。急いで振り返ると席に座る彼女と目が合った。
まだ、間に合うだろうか。俺たちはやり直せるだろうか。
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