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きぃふぅ委員長眞島  作者: F香川
2/2

委員長!それ土!土!!

学校を休んだのは何日ぶりだろうか。日もすっかり暮れた頃、友人が宿題のプリントやノートを渡しに来た。

要点だけを小奇麗に纏めているノートとは違い勉強嫌いな友人が渡してくれたそれは教師が板書した物を書き写すだけ書き写した不器用なモノだった。学校では変わり者だと良く言われるがそれを面白がってくれる友人はいるし、毒にも薬にもならない戯れ言を言い合ってる内は他人の目を気にすることもない。それはとても心地良いし何よりも楽しい。学校が俺は少しだけ好きだった。

宿題を雑に済ませ窓の外を見ると植木鉢に備えられた観葉植物がベランダに差し込む月明かりを寂しそうに受け止めている。

友人が家の玄関で高田の体操服が盗まれたという話を楽しそうにしていた事を思い出した。

お前にもあの場に居てほしかったなーという友人の言葉は素直に嬉しかった。少しだけ晴れやかな気分を落ち着ける為に窓の外に出てタバコを吹かしていると、内側から声が聞こえる。


ヒバリ:委員長、タバコはお身体に障りますよ?


居候が何を。と思ったが言わないでおいた。このお節介の名はヒバリ。世界を救う為にきぃふぅ委員長とかいう厄介な責務を俺に押し付けてきたいわゆる疫病神だ。

こんな奴に指図されてはいつもなら目の前が真っ白になる程キレている所だが今日は虫の居所が良かったので見逃してやった。月の明るさを確認する様にもう一つ煙を吸い込み、空を仰いだ。


ヒバリ:あー!もう無理!ゲホッ!ゲホッッ!!オエッ!ゲホゲホゲッッ!!!


キチゲ100%ッッッッ!!!!


ましま:貴様貴様貴様貴様ッッ!!!4&3*#^$&383*^#^3^ッ!!#92^3%89593937$8##**$^$%@%@&$*$*ッッ!(#*$_:#*=;*#*@:_:2ッッ!!(*#*@^2(#984&$&!#9ッ!!!分かったかッ!フンッ!!!


ヒバリ:ヒ、ヒィッ!


ただ咳き込んだ事に怒ったのではない。俺の身を案じている素振りでタバコを辞めさせようとするその心中に企む汚い魂胆を叱ったのだ。今はその思いの丈をありったけ叩き込んだ。感情任せではない叱咤は教育という道を正しく突き抜けたはずだ。バカではないヒバリには俺の思いが痛いほど伝わっている事だろう。しかし、少々叱り過ぎてしまったのも反省だ。鞭の後に飴が必要なように叱った後には愛が必要なのだ。


ましま:#^^&=##@"%^&。@@!==%&*_#"?@#^*(=#=)*`。


ヒバリ:え?は、はい・・・


ヒバリは教育を重く受け止めたようで顔を何度も縦に振りしっかりと頷いた。(と思う。)上下関係を築いたつもりは無かったが、ヒバリは少しだけ怯えているようにも見えた。

学校の教員は上から叱りつける簡単な職業だと思っていたが、今一人の生徒を持った俺には少しだけ教師の苦労というものが理解できた気がする。

あれから2.3質問をして分かったことはとにかく俺は俺の思う様に行動すればいいという事だった。風紀の乱れを感じた時にきぃふぅ委員長なら何をするか分かるらしい。何を言っているか分からないがそういう事だ。

山積みになった灰皿を空にし、コンビニに行く事にした。切れたタバコを補填する作業は一日の終わりを意味している。

慣れた手付きでリビングに置いてある母親の財布から4枚の札を抜き取り、漆黒を基調としたプーマの財布に詰め込む。

玄関から外に出るとまだ少し肌寒く感じ、季節のメリハリの無さと春の訪れに喜びを感じていた今朝の自分に少しだけ辟易した。

家からコンビニまでは徒歩5分で到着するが外に出るには薄手だったので少し後悔した。

そういえばヒバリの声は俺にしか聞こえないのだろうか。こういった漫画はいくつか読んだことはあるが、学校生活で支障をきたすことがあれば問題だ。ヒバリに聞いてみると、聞こえてないと思います。と帰ってくる。


眞嶋:と思います・・・?


ヒバリ:おそらくは。私は委員長の体の中から直接話しかけているので問題はありません。


それは脳に直接語りかけているということなのだろうか。自分の体のことぐらい自分が一番知っていたい。少しだけ語気を強めてヒバリを問いただした。


ヒバリ:いえ、なんと言えばいいのでしょうか・・・物凄く小さい私が委員長の体内にいるという現状ですので・・・骨伝導ですかね・・・


骨伝導だと。精神的な何かで喋りかけているのかと思っていた。マジで嫌になってきたな。


眞嶋:ちなみに今はどこに?


ヒバリ:肋骨の三段目にぶら下がってますよー


こいつ!人の肋骨で何をっ!・・・ふぅ、落ち着け。先程キチゲを開放したばかりなのが功を奏したようだ。現在のキチゲは64%か。ブチギレそうになるのを我慢してでも聞きたいことがまだ一つある。


眞嶋:・・・骨伝導ということは声量によってはお前の声は人の耳にも入るということじゃないのか。


ヒバリ:まあ、鼻の穴とかからちっちゃくきこえてるかもですな。


ですなじゃッッッ!キチゲ100%ッッッ!!!


キチゲを開放しようとする束の間、どこからか女性の甲高い悲鳴が聞こえてきた。


ヒバリ:女性の悲鳴・・・風紀の乱れかもしれません!


眞嶋:ヒョ?


俺たちは叫び声の方向に向かい足を運んだ。元来ミーハーである俺はスマホのカメラを起動しつつ走った。

しかし、風紀の乱れとは何なんだ。バケモノじみた見た目でもしていてひと目で悪者とわかってしまうようなものなのか。不審者を風紀を乱すものと捉えるならばそれはそれで怖くないか。肝心なことを教えてくれないヒバリと、こうなってしまった現状を呪う。

閑散とした夜の住宅街を走り抜け目的地だったコンビニを通り過ぎると、ちょっとした町工場が立ち並ぶ道路へと続いている。人の気配と比例するように暗闇は増して行き、ヤマノ製鋼と書かれた看板だけがライトに照らされてヂカヂカと薄暗く光っていた。


ヒバリ:いませんね。どこかへ行ってしまったのでしょうか。


到着した頃には、俺のゴシップ魂もすっかりと冷え切っていて、もはや女性には人柱になってもらうしかないとまで考えていた。一度そう思うと、こんな不気味な夜道を女性が一人で歩いているのはおかしいだとか、冷蔵庫のプリンが腐りかけなんだとか帰るきっかけを必死に探した。

ヒバリもそれは同じようで、合致した二人はそそくさとその場をあとにした。

ヒバリとあれは仕方なかった等と誰に向かってしているのか分からないような弁明をしながら歩いていると、徐々にコンビニの明かりが見えてきた。人の気配がしてきたことによってようやく俺たちはガチガチにすくみあがった肩の力を抜く。駐車場に目を向けると若いカップルが揉めているようだったが、久しぶりに走って疲れたのでひとまずは炭酸をぐうっと飲んで喉を潤したかった。

否が応でも目に入ってくるカップルを視界に入れると、男は薄手のグレーのTシャツに黒のワイドパンツを履いていて、くるくるに当てたパーマがばっちりと決まっていた。先程の町工場で量産されたかと疑いたくなるほどに、典型的な大学生のような見た目をしている。

こちらに背を向けていてよく見えないが、男よりも数センチ小柄な女は震えた声で剣幕を立てていた。まだ〇〇(聞き取れなかった)のこと好きなんでしょ。とか聞こえて来る。ドラマみたいで少し面白そうだなと思った。

親以外の年上の計り知れなさになぜか恐怖を抱いていた俺は義眼のようなうつろな目でコンビニを目指しながら、神経を注ぎぴーんと張った耳で話を聞いていると、あんたの携帯見ていい?という女の声が聞こえてきた。

顔は向けない、向けてはならない。できるだけ歩調を緩めていると、勝手にしやあ。と自信ありありと男が携帯を渡したようだった。

ブツブツと会話する二人に聞き耳を立てていると、目の前が突然ぱっと明るくなったので手術台にでも乗せられたかと一瞬思ったが、あまりにも二人の話にのめり込んでいて気づかなかったがどうやらいつのまにかコンビニに入店していたようだ。急な明かりに少しちびる。

普段なら立ち読みにふけるであろう雑誌コーナーを素通りし、ギチギチに整列しているドリンクコーナーからコーラを1本だけ手に取った。そういえばヒバリは何かを口にすることはあるのだろうか。既に超常的なこいつは飢えに苛まれる事はなさそうだが俺の体内で飢え死にされるのも考えものだった。


眞嶋:ヒバリ。お前ってお腹空いたりするのか?


ヒバリ:いえ、私達のいた世界ではお腹が空いたりしますけど、こちらに来てからは大丈夫です。


そういうものなのだろうか。しかし霊的な何かなら納得できたが実態のあるこいつが生命維持に必要なエネルギーが不要というのはどうしてもしっくり来なかった。本当に大丈夫か尋ねるとヒバリは俺の人間的な一面に感嘆の声を上げた。

どちらかというと自分の身の心配をしていたのだがヒバリは気遣いがよっぽど嬉しかったのか声を弾ませて話を続けた。


ヒバリ:ご心配に預かり光栄です・・・ですが本当に安心してください。私は委員長から栄養を少しだけ分けてもらっているのでこの通り元気もりもりなんです!


こいつ寄生虫じゃねえかッッッ!!!や、やばい!キ、キチゲがもう・・・!97%に・・・店での開放はまずい。早く店の外に・・・

俺は口を抑えながら店の出入り口に向かい走った。

しどろもどろ走っているうちにいくつかの商品を床に落としてしまったが気にしている余裕はない。

ヒバリも何やらこちらに声をかけているようだったが貴様の声を聞くと今すぐにでも発狂してしまいそうだ。黙ってろという意を伝えるために胸を一つ叩いたが痛みは無く、やはりもう限界が近かった。

コーラを1本持って走り去ろうとする俺は大胆な万引きにでも見えることだろう。出入り口の役割である自動ドアは歩いている人間向けに設計されているようで緊急事態中の俺にはとてつもなく長い時間に感じられた。

悠久とも瞬間とも言える時間を過ごし自動ドアが満を持して開くと目の前には衝撃な光景が広がっていた。


女:8人目でもいいの。大好き。


二人は先程までのいさかいの一切を忘れ深い深いキスをした。


キチゲ100%ッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!


眞嶋:きぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!


大気は震え、静寂の闇を裂く。コンビニのガラスはたった今この世の終わりを告げられたかのように音を立てて崩れ落ちた。

焼夷弾のような破裂音に驚いた眼前のカップルは口を離し、音の在り処を探している。コンビニから出てきた中学生のものとは誰も思わなかっただろう。足元にはガラス片と地面に叩きつけられたコーラが泡を吹いて寂しそうに横たわっていた。


ヒバリ:キチゲ100%。『敵』ノ補足ヲ完了シマシタ。対象ヲ無力化シテクダサイ。


機械的なヒバリの声が聞こえる。俺が奴らを『敵』と見なしたからヒバリはこのようになったのか。しかし、頭がやけに冴える。キチゲ100%状態で未だこんなに冷静だったことがあるだろうか。これもヒバリときぃふぅ委員長のなせる技なのか。

愛を育む馬鹿なカップルにスタスタと歩み寄る。脳内では昨晩にロードショーでみたエヴァンゲリオンのBGMが流れている。


男:何だお前。


一通り混乱しきった二人は少し落ち着きを取り戻したようだ。肌年齢からなのか、それともポケットから伸びたゴムをぐるぐる巻にしたウォレットチェーンを見てなのか、年下と確信したようで男は威圧的にこちらを牽制した。

息を深く吸いビキビキと首に力を込めた。男の耳に口を近づけると不気味そうに眉を潜めたが、女の手前か引くことはしなかった。


眞嶋:きぃ!ふぅ!(爆音)


右!左!と俺が亜音速で首を動かし両耳に言い放つと、パンッ!と音を立てた両耳から大量の血を吹き出し男は気を失い倒れ込んだ。ついでに隣りにいた女も耳から血を流して倒れている。


ヒバリ:対象ノ無力化ガ完了シマシタ。只今ノスコア、C。粛清モードヲ解除シマス。


ふっと全身の力が抜ける。これが一連の流れか。と思うのと同時に、足元にドロリと流れる赤黒い血に身の毛がよだつ。一応男の胸のあたりを触り生きていることを確認し、矢継ぎ早に走り出した。頭の中はひどく混濁していて、そういえばタバコが切れたから外に出たんだった。みたいなことしか考えることができずに走っていると自宅に到着した。

電柱の街灯に当てられた自宅を見ると少し安心した。玄関を開け二階の自室に駆け込みベッドに腰を掛けると、そのまま仰向けに倒れ込んだ。

窓から差し込む月明りを見て、まだ少し回っていない頭で先程の自宅を照らす街灯を思い出す。ああ、これって街灯の明かりだったのかな。と確認するまもなく俺は眠りについた。

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