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平穏の危機

やっと今週の仕事も終わる。


新しく入った桜井さんが結構優秀なので来週からは少しは楽ができそうだ。


今日は脱地獄を祝してビールとつまみを多めに買って帰ろう。


「それではお疲れさまでしたー」


デスクで誰に向かって言うわけでもなく帰る主張だけして更衣室へ向かう。


この会社のマナーの一つらしい、現代社会のマナーはよくわからないものが多い。


さて、今日は早く終わってスーパーに間に合うので買い込むぞ。


と意気込みながら会社の門をくぐろうとした時に携帯電話が鳴る。


うわ……課長かな……気がつかなかった事にしようかな……。


そう考えてながら携帯電話を確認してみたら知らない電話番号からかかってきていた。


間違い電話かな?無視するか……。


スーパーの閉店時間まであまり余裕がなかったので電話は無視してスーパーへ駆け足で向かう。


スーパーからの帰宅中にも携帯電話が鳴る、しかし両手がふさがっていて確認できない。


家に帰ってから着信履歴を確認すると会社を出る時にかかってきていた番号と同じであった。


少し気味が悪い……この携帯電話に課長以外から電話がかかってくる事なんて滅多に無いのであった。


折角の週末の宴会を邪魔されたくないので携帯電話の電源を落とす事にした。


気がつけば朝の8時、普段よりもハイペースに飲んで気がつかないうちに寝ていたのでかなり早く寝たと思われる、休みだというのにかなり早く起きてしまった。


もうひと眠りしようと布団へもぐり寝ようとしたら、ピンポーンと呼び鈴の音が鳴る。


いったい何事だこんな朝早く……家に来るような知り合いは居ないので無視するか……。


無視してそのまま寝ようとするがピンポーンピンポンピンポンピンポーンと激しく呼び鈴を鳴らされる。


何なんだいったい……しかたないので出る事にする。


少し不機嫌そうに。


「はいはい、なんですかこんな朝から」


と言いながら玄関を開けると桜井さんがそこに居た……。


なんで桜井さんが……、てかあれ???先週の……あぁ……どうりで見た事あるわけだ……。


そう、桜井さんは先週来た怪しい宗教団体の勧誘の人であった。


「桜井さんもしかしてまた宗教の勧誘ですか?」


「覚えていらしたのですね、会社で合った時に反応がなかったので気がついてないと思っていましたが」


何故か怒り気味で言われる。


「いや、今気がつきましたよその先週と同じ服を見て」


「そうですか、ところで何で昨日電話に出てくれなかったのでしょうか?」


「え……、携帯電話の番号私教えていませんよね?」


「本当に記憶がないんですね……私の事も忘れてしまったのですね……」


(どういう事だ……三島ゆうには両親も恋人も仲の良い知り合いも居ないはずだが……)


「すみません、数年前の事故以前の記憶はさっぱりで……どういった関係だったのでしょうか?」


返事がもらえない、かなり気まずい……。


「も、もしかして恋人とか……?」


反応がない……。


あまりこちらから話し過ぎてぼろが出るとまずいので困った……。


困っている雰囲気が伝わったのか桜井さんが話し出した。


「困っている表情は昔と似ているわね、私は高校の科学部の先輩よ」


「科学部ですか?」


「私のおかげでやりたい事が見つかった、一生先輩の事は忘れませんって言っていたのに忘れちゃって……」


「すみません……」


「まぁいいわ、今日来たのは先週の事を謝りに来ただけなので」


「先週のですか?」


「科学の事故で死にかけた貴方に科学と一緒に滅んでしまえばいいなんて言ってしまって……」


「あー、気にしてませんよ」


「私が気にするの!!!」


(なんか面倒くさそうな人だな……でも仕事辞められても困るので仲よくしないと……)


「というわけでこれ、お詫びの品……、記憶はなくても好きな食べ物はきっと変わっていないでしょ」


そう言って渡されたのはドーナツの詰め合わせであった。


「じゃ、私これで帰るから」


そう言って満足した顔で桜井さんは帰って行った。


なんとか本当の三島ゆうではないとばれずに済んだがドキドキしすぎて胃に穴が開くかと思った。


ビール飲んでもうひと眠りしよう……。



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